
宮本監督が、能登でのボランティア活動に参加、想像を超える被害と復興の遅れを目の当たりにしたのをきっかけに生まれた映画『生きがい IKIGAI』。能登の方々のたくさんの力を借りて撮影を敢行、ドキュメンタリー「能登の声 The Voice of NOTO」を併映とし、北陸能登復興支援映画として6月20日より石川県で先行公開中。
<6/19北陸復興支援映画「生きがい/ 能登の声」イベント上映会>in輪島
登壇者:鹿賀丈史、常盤貴子、宮本亞門監督
先行公開を翌日に控える6月19日(木)に、被災地・輪島の日本航空高校石川にて<北陸能登復興支援映画「生きがい/ 能登の声」イベント上映会>が実施され、映画『生きがい IKIGAI』に出演する鹿賀丈史、常盤貴子、監督を務めた宮本亞門が登壇し、能登への思いを語った!
能登の観客、そして実際に撮影に力添えをいただいた能登の方々を前にキャスト、監督が登壇すると、割れんばかりの拍手が湧き起こった。
主役を務めた鹿賀は「僕は金沢出身で、今回能登の震災を経て宮本監督から『映画を撮らないか』という話をいただいて、去年12月に撮影をしました。今日初めて皆さんの前で上映をするのですが、監督の思いが詰まった、非常にクオリティの高い作品になっています」と振り返る。

震災後、度々ボランティアに足を運び、能登を“第2の故郷”と呼ぶ常盤は「震災後の3月に初めて能登入りして、その時に珠洲市の避難所で、皆で一緒に高校野球を応援していたことが昨日のように思い出されます。高校野球で見ていた憧れの高校に来ることができて嬉しいです。本当に皆さんは希望の光でした。私の方が御礼を言いたいと思います、ありがとうございました」と会場である日本航空高校石川の皆さんを前にしみじみと振り返りつつ、「この映画は宮本監督が能登でのボランティアを元に作られ、能登を想って作ってくださった映画なので、私はどんなことがあっても参加したいと思って参加させていただきました」と力強く語った。

宮本監督は「5年くらい前に旅行で能登に来て、景色が綺麗で海が綺麗で山が綺麗で……あまりにも好きで! そこから元旦の震災を知り、心配になり何かできないかと思って結果的に映画を作ることになりました。今能登にいる皆さんとお話ができていることが夢のようです。僕は舞台の演出家なので、30年映画を撮っていなかったんです! そんなことを越えてでも、何とか能登の皆さん、全国の皆さんにこの映画を観てほしいという想いで作りました。鹿賀さんと常盤さんの熱い想いで出来た映画でもありますので、皆さん楽しみにご覧ください」と感謝を込めた。

この作品が作られた経緯を聞かれると、監督は「8月にボランティアでこちらに来たとき、ある方にこう言われました。『亞門さん、ボランティアはやらなくていい! あなたみたいな人は、この状況を伝えることをしてほしい』。僕は『僕は舞台の演出家なんで、出来ません』と言って東京に帰りました。そのあとどんどん胸が苦しくなってきたんです。何が自分にできるんだろう? この現状をどうにか伝える方法はないのか? そう考えながらテレビのニュースを見ていると、もう心配で心配で。その時にハッキリ『やっぱり映画は作れない、被災地に行って映画を作るなんて、迷惑なことをしてはいけないのではないか』と思ったんです。そして珠洲市や輪島にいる何人かに電話をして、『大丈夫ですか? もう僕も映画を作るなんてことは考えないようにします』と伝えたんです。すると、怒られました。『何言ってるの!? 私たちは前に進もうとしている。あなたも進みなさい』と。そこからたった2ヵ月くらいで映画を作りました。鹿賀さんは映画の説明をする前に『僕はもう出ることに決めたから』と言っていただき、常盤さんも『能登のためなら』とすぐに返事をしてくださって。皆さんの熱い気持ちが濃縮したショートフィルムになっています」と、能登の方、そして二人の想いに鼓舞してもらったという経緯を振り返る。
鹿賀は「亞門さんとは何度も舞台でお仕事をしていて、“能登の方に力を与えたい、今の能登を全国に伝えたい”という想いで映画を作るとおっしゃるので、僕は内容も聞かずやる、とお答えしました。災害にあって、水害の後に倒壊した家屋の前で撮影をしました。倒壊した家屋を実際に目の当たりにすると、テレビで見るのとは全然違いまして、その家に住んでいた人の苦しみであるとか、悲しみなどの想いが伝わってきて、僕もこの役を演じる上で嘘のない芝居をしたいと思いました」と覚悟の伝わるコメント。
常盤は「亞門さんは憧れの演出家で、ミュージカルのイメージがあるので、私の仕事の範囲では演出をしていただける立場にないので、そんな機会が訪れるのであればぜひとも参加したい!という思いがまずありました。亞門さんが撮られる映画はどういうふうになられるんだろう、と楽しみな気持ちで実際に現場に行くと、亞門監督は映像の世界の常識を飛び越えてこられる演出をされる方で、こんな素敵な方が撮られる映画は温かくなるだろうなとすごく期待をしました。実際に映画を観て、とても能登への気持ちが込められた温かいものになっていて、嬉しくなりました」と本作への参加に喜びを覗かせた。
能登で被害に遭われた観客を前に、鹿賀は「能登で地震があった後、なかなかインフラの整備が遅れているように思えて、僕は東京にいながら『どうしてだろう、なんでもっと早く県や国が動いてくれないんだろう』と思っていました。そんな中で次は水害が起きて、住んでいらっしゃる方はどんなに苦しい思いをされているんだろう、という想いがありました。そういった方々がこの映画を観て、少しでも先に向かって、この映画のタイトルにもある『生きがい』を持って能登を復活させていただければと思いますし、本日いらっしゃっている高校生の皆様も少しでも力になってもらえると、本当の復興に繋がるのではないかという思いがあります」と復興への想いを込める。
常盤は「震災を扱った映画なので、もしかしたら直視することが難しい方もいらっしゃるかもしれません。そういう方はご無理なさらないでください。ただ、映画というものには記憶装置という役割がありまして、今はまだ観られないかもしれないですが、今しか撮れない感情や景色を封じ込めておくことができるのが映画でもあると思うので、この後何十年も経って、震災のことを忘れられるようになる頃には、この映画はとっても貴重な資料になるかもしれません。私はこの映画は能登の方の魂を描いた映画だと思っています。併映されるドキュメンタリー「能登の声 The Voice of NOTO」で実際の能登の方の声を聞くことによって、その魂とは何だったんだ、ということの答えが見えてくるのかもしれないと思っています」と本作の重要性を語った。
宮本監督は「実はこの映画に出てくるセリフは、僕はほとんど書いていません。実際に聞いた言葉です。ボランティアセンターの方、ボランティアをやってきた方、テレビでのニュースでのコメント、能登に訪れた時に歩いていたおじいちゃんの言葉……いろいろな人の言葉を紡いだ映画なんです。人は急にいつでもいなくなるんです。それでも今生きていることはすごいことで、大切なことです。生きている限り、1回の人生を思う存分楽しんでほしい、そういう思いを込めてこの映画を作らせていただきました」と映画に込められたメッセージを呼びかけた。
当日は、この会場にお越しいただいている日本航空高等学校石川の皆様から「今、能登に必要なもの」「未来の能登に必要なもの」を事前に募集。これからの能登に必要なものとして「元気と明るさ」「テーマパークがほしい」という意見が出ると、宮本監督は「“この場所だからこそ出来たもの”が良いですよね。この能登だからこそ出来るもの。キリコ祭りなど、人がエネルギーを出せるものってすごいと思うんです。例えば、高校生が作る新しいお祭りとか……『能登ならではのものを作っちゃおう!』なんてことをやってもらえると、僕たちは嬉しいかな。震災はあったけども、日本はこの自然と共に生きてきたので、これを乗り越えて次に繋げられたら嬉しいですね」と、観客と共にこれからの能登を見つめた。
最後に鹿賀は「『生きがい』というタイトルの映画です。人が生きている上で一番大事なこと、それは『生きがい』ですね。若い皆さんも一人ひとり生きがいを大事にして生きていただけたら嬉しいと思います」と締めくくり、能登への熱く真摯な想いが語られたイベントとなった。
<6/20先行公開記念舞台挨拶>in金沢市
登壇者:鹿賀丈史、常盤貴子、宮本亞門監督
ついに先行公開を迎えた6月20日(金)には、公開記念舞台挨拶がユナイテッド・シネマ金沢、イオンシネマ金沢、イオンシネマ白山、シネマサンシャインかほくの4ヵ所で実施された!
(マスコミ回はユナイテッド・シネマ金沢のみ)平日にも関わらず、多くの来場者が詰めかけてくれたことに、鹿賀丈史、常盤貴子、宮本亞門監督ともに「ありがたい」と感謝を述べ、舞台挨拶がスタート。

主演を務めた鹿賀は、「昨年の12月に撮影を行い、能登の冬は寒さだけでなく、雨など天候が変わりやすいのですが、オールロケにも関わらず天候に恵まれ順調に撮影が行えたのは、能登の皆さんの思いが通じたからだと思う。被災地での撮影することは、演じる中で芝居をしようとするのではく、その場にいること。その空気を体感することを大切にしました。能登の方は辛抱強く、明るい方が多く、こちらが皆さんの明るさに救われた」と語る。

また常盤は、「半倒壊となった建物など被災地での撮影だったので、スタッフ全員がヘルメットをかぶって行ったのですが、それぐらい危険な場所なんだという緊張感はありました。被災地の状況を映像に残すことが私たちの使命だと感じました。現地の方々がとても親切で、撮影中に温かい飲み物を御用意してくださるなど温かい雰囲気の現場でした」と過酷だった撮影現場の状況や能登でお世話になった方々への感謝を述べた。

宮本亞門監督は、「震災後に訪れたボランティア先でこの状況を伝えほしいと言われたのですが、私は報道の人間ではなく、舞台で伝えるのは難しいとお伝えしたことに胸が痛みまして……。東京で知り合いに話すと被災地で撮影なんて迷惑をかけると反対する声が多かったのですが、現地の方が“私たちは前に進もうとしている”と言われて、悩んでいる場合ではないと思いトライしました。映画の中で使っているセリフは、ボランティア先などで聞いた現地の声です。“今を生きている”、とてもポジティブな方が多い。この映画を通じて能登の今を知っていただき、前を向くきっかけになると嬉しい」と語った。

また映画のタイトル「生きがい IKIGAI」にちなみ、それぞれの“生きがい”を伺うと、鹿賀は「芝居に携わっている瞬間が一番元気なので、今回のように素敵な作品に参加させてもらえることが生きがいです」と語り、宮本監督は「朝、何気なく空を見て幸せを感じる。そんな毎日が“生きがい”です」と語った。最後に常盤は「私の“生きがい”は、能登の皆さんです。住所を能登に移したら?と周りから言われるくらい撮影以外でも何度も能登に来させていただいているのですが、人とのつながりを大切にできることが嬉しい」と能登愛を語った。
能登の皆さんへの感謝と愛を感じさせる心温まる舞台挨拶となった。
公開表記
企画協力・配給:スールキートス
6月20日(金) 石川県先行公開
7月11日(金) シネスイッチ銀座 他順次公開
(オフィシャル素材提供)