
世界中の女の子が憧れる童話「シンデレラ」をモチーフにした北欧発のゴシック・ボディホラー映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』が、1月16日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開となる。長編劇映画デビューとなる本作で世界各国の映画祭で賛否両論の反響を生んだエミリア・ブリックフェルト監督のインタビューが届いた。
【エミリア・ブリックフェルト(Emilie Blichfeldt)監督 プロフィール】
1991年5月20日生まれ、ノルウェー出身。ノルウェー映画学校の卒業制作として2018年に制作した作品『SARA’S INTIMATE CONFESSIONS(原題)』が、2018年ロカルノ国際映画祭や2019年クレルモン=フェラン国際短編映画祭など、数々の映画祭に選出された。そのほか、大胆かつ挑発的な短編映画で高い評価を集めてきた。本作『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』は、長編監督デビュー作となる。
Q.グリム童話の「シンデレラ」をモチーフにした本作ですが、なぜ「シンデレラ」の物語をホラー映画として作ろうと思ったのですか?
出発点は、この童話の中で最も心を揺さぶる場面の一つ、ガラスの靴を履くために自分のつま先を切り落とす義姉妹のシーンでした。このイメージは、押し付けられた美の理想に従うことで多くの女性が直面する苦しみを完璧に象徴しています。あの肉体的、そして精神的な犠牲が現代においてもなお、いかに重要な意味を持つのかを描きたいと思いました。
Q.刺激的で痛みを感じさせるホラー・シーンが多いですが、それらのホラー要素には必然があるように感じます。ストーリーとホラー要素のバランスをどのように考えていますか?
ホラー要素は常に物語の一部であるべきだと思います。ただの筋書きではなく、感情だったり、登場人物の成長だったりします。それは観客とのコミュニケーションでもあります。観客をどんな心理状態に置きたいのか、何を恐れさせたいのか、その瞬間に何を感じてほしいのか。だから、私にとってホラーは、映画の他の要素も含め、より大きな物語の一部でなければならないと考えます。
Q.主人公の義姉妹・エルヴィラ役のリア・マイレンのキャスティング理由を教えてください。普通のおとなしい女の子から狂乱していく様が素晴らしかったのですが、彼女が撮影で苦労していたシーンはありましたか?
リアが撮影で苦労していたところはありませんでした!
600人以上の女の子たちをオーディションしましたが、リアに出会った時、彼女の驚くほどの表現力に、ただただ圧倒されました。表情だけでなく、全身を使って演技をする女優です。多くの若い女の子は、自由に、自分らしく、自身を表現することに大きな不安を感じてしまいます。エルヴィラと同じように、自分を客観的に観察し、愚かしく、また変に見えないようにします。でも、リアはそういったことから解放されていました。だから、エルヴィラの奇抜さ、無邪気さを愛情をもって演じ、このキャラクターに込められた皮肉なユーモアを理解していることが伝わってきました。撮影時間が長くなる日でも、体力的にも、精神的にすごく大変だったはずなのに、リアはそれをやり遂げる体力もあり、現場でも苦労する様子は見せませんでした。まるでチャンピオンのようにやり遂げていました。

Q.昨今、日本では子どもを支配したり、傷つけたりする“毒親”の存在が聞かれるようになっています。本作の母親・レベッカはまさに毒親の典型ですが、彼女自身も社会の犠牲者に見えます。レベッカ、エルヴィラ、アルマの親子関係を監督はどのように捉えています?
レベッカはできる限りの最善を尽くしていると思います。世の中にはそんな有害な親がたくさんいますが、少し悲しいですよね。でも、私の世界観というか人間観は、酷いことをする人は、楽しいからとかやりたいからではなく、自分自身のトラウマや無知、理解や経験不足が原因になっていると思います。親なら子どもの最良を望みます。例えば、自分の子どもの体重が少し増えたことに不安を感じ、「もし太ったら、誰からも愛されないかもしれない」と考えるかもしれません。それは純粋な子どもへの愛情からくるものです。実際、多くの毒親は子どもを守ろうとしますが、それが真逆の影響を生んでしまうのです。そう考えると、レベッカとエルヴィラには深い共感を覚えます。エルヴィラは、知らず知らずのうちに犠牲者になってしまいますが、これは育つ環境に関係なくおこる事実だと思います。社会に対する考え方、何が真実で何が善なのか、その他すべてのことについて、親が持つ価値観の影響が強く出ます。アルマは末っ子なので、母親の毒牙にかかる前に、自分に起こりうる出来事を目の当たりにすることができました。彼女は自分自身が傷つく前に、第三者としてそれを見る機会があり、そこに潜む病的な部分、つまり有害な部分、毒のようなものに気づくことができたと思います。

Q.本作の王子様は、本当は嫌な男として描かれていますが、そのようなキャラクター設定にしたのはなぜでしょうか。
王子様はエルヴィラだけでなく、多くの女性たちが結婚を夢見るプリンス・チャーミングのような存在です。現代の王子様、例えばジャスティン・ビーバーのような存在はどんな人だろうかと考えました。彼に会うことを夢みたり、憧れるのはとても人間らしいことです。そこで、詩人という側面を王子のキャラクターに加えました。王子が書く詩にはセクシャルなことを匂わせる表現もありますが、純粋なエルヴィラはそこに気づくことはありません。そして、古い時代の王国に、夢に見るような王子様がいる確率はどれくらいでしょうか? 今の時代よりもはるか昔、王子にとって女性は物であって、自分の思い通りにできる存在でした。だから、このチャーミングな王子像を覆して、「確かに、私たちはそういう有名人に憧れるけど、彼らも人間なんだ」と思わせられたら、興味深いのではないかと考えたのです。また、彼にも同情するところもあります。王国を存続させるために結婚を強いられますが、若い男性がそんな大きな責任を負うことを望むでしょうか。エルヴィラが美しくなるためにどんな苦痛を経験しても、それが良い人にするわけではないように、彼もまた同じです。だから、少しのジョークを交えながら、リアルな側面として描きました。

Q.静かな森の中に佇むお城や華やかな舞踏会場、そして、衣装もガーリーからゴシック・テイストなドレスも印象的で、童話の世界観を見事に再現しています。ロケーションや衣装で特にこだわったポイントや苦労したことはありますか?
現実世界で起こっているかのようなリアルさを感じられるおとぎ話をめざしまた。ディズニーのフェアリーテールでは、登場人物や場所はとても煌びやかで華やかですが、そこにフェイクな印象を強く感じました。しかし、東ヨーロッパの映画、特に70年代のおとぎ話の映画には、人物や自然がリアルに感じられる雰囲気があります。まるで現実世界のパラレルワールドのようです。すべてがリアルで、実感できるような世界観を求め、美術デザイナーや衣装デザイナーと何度も話し合いました。ロケーションは、おとぎ話のような雰囲気がありながらも、ゴシックさも感じられる場所を探しました。
衣装デザインも同様です。ディズニーで使われるドレスのシルエットをそのまま取り入れることにしました。これは整形手術という概念にとても一致します。シンデレラが着ている大きなベルスカートのシルエットは1800年代半ばのデザインです。エルヴィラのお尻の部分が大きく膨らんだドレスもディズニーから取り入れていますが、これは1880年代のものです。ディズニーがこれらのシルエットを使い分けたのは、お尻の部分が大きく膨らんだドレスを着用する継母と義姉妹が成金で悪趣味だということを揶揄し、一方、シンデレラが着用する大きなベルスカートは古風で上品な女性の象徴であることを表現するためです。私はこの要素をどうしても取り入れたいと思いました。興味深いポイントであり、象徴的なシルエットでもあるからです。

Q.次回作はどんな作品を考えていますか?
おとぎ話やボディホラー映画にはならないでしょうね。私はジャンルにこだわるタイプではありません。まず物語や登場人物、あるいは伝えたい何かがあって、そこから生まれるような映画を作りたい。だから、次回作は、もし言えるとしたら、かなり違うスタイルの作品を作るつもりです。
公開表記
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
1月16日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
(オフィシャル素材提供)






