
登壇者:木ノ本嶺浩、辻しのぶ、小林萌夏、南久松真奈、碧海舞音、加藤悦生監督
アンバサダー:古川 杏
司会:岡安弥生
映画『メモリードア』公開記念舞台挨拶が1月18日(日)、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で行われ、W主演の木ノ本嶺浩、辻しのぶ、共演の小林萌夏、南久松真奈、碧海舞音、メガホンをとった加藤悦監督、アンバサダーの古川 杏が登壇した。
現代社会が抱える「認知症」「ヤングケアラー」「⼈間の尊厳」といったテーマを、切なくも温かな視点で描いた本作。⽊ノ本は27歳のエリート・サラリーマンで「認知症カフェ」の店員・令子に出会ったことがきっかけで誰かを支えることの意味と新たな人生の目的を見出していく主人公・和也を、辻は「オレンジカフェ」の店員で、若年性認知症を患うバツイチ・子持ちの令子を演じる。
本作を制作するに至ったきっかけを聞かれた加藤監督は「テーマとしては“認知症”が最初からあったわけではなく、“人の尊厳”を描きたいなと思って物語を構成していきました。あとは条件ですね。予算、キャストのスケジュール、その中でのベストを考えていきました」と打ち明け、加藤監督の父親が脳梗塞で半身不随になり、10年ほど闘病していたことがあったそうで「ある日、ベッドにいなくて探したら、トイレの便座の横に挟まって動けなくなっていたんですよ。“呼べばいいじゃん”って思ったんですけど、親父は何も言えずにじっとそこで待っていたんです。それは親父のプライドだったのか、息子を呼べなかったのか、いろんなことを思いましたが、抱き上げた親父がすごく軽くて、当時17・18の僕は“こんな感じになったら生きたいかな”って思っちゃったんですね。その思いがあって『生きたいんだよな』というセリフがあったりするんですけど、その経験が生かされています。人の死は“生きたくない”と思ったところが死なんだなと思ったので、それを映画で表現できたらいいなと思いました」と熱く語った。
また、自身の役を演じた感想を聞かれると、⽊ノ本は「今回『メモリードア』のお話をいただいて台本を読んだ時、最初は“そんな綺麗事でいくのかな”というのが正直な感想でした。でも、大先輩で大好きな辻さんと相対したした時にすべてを忘れたというか、監督が書いた人に対する優しい言葉を寺島さんが具現化していて、僕はそこに身を委ねていけば和也でいることができました」と吐露した。
一方、若年性認知症を患っている役を演じる上で難しさはあったかと尋ねられた辻は「正直、難しいとはまったく思わなかったですね。ただ、(若年性認知症の役を)イメージで演じるのはやめようと思いました。私の母も脳溢血で、その後に後遺症で認知症のようになっていたんですが、会話ができる時と、別の世界に行っている時の目があって、不安な時の目だったり、天使のような目をしていたり、コロコロ変わっていくんです。なので、その“目”だけを頼りに演じました」と打ち明けた。
令子の娘・梨花を演じる小林は「私は当時高校3年生でしたが、身近に認知症の人がいる経験がなかったのでどう演じようかと悩みました。でも一番大切にしたかったのは、お母さんである辻さんを愛するということでした。撮影中、辻さんとたくさんお話をさせていただきましたし、認知症カフェの皆さまともお話ししました。キャストの皆さんが本当に大好きで、この作品がこうして多くの方に観ていただけたことが本当にうれしくて感無量です。ほぼ初めて映画でお芝居をさせていただいたのですが、この役を演じることができてすごくうれしいです」と感慨深げに語った。
佐田(モロ師岡)の妻で認知症患者の百合子を演じる南久松は「私の母も数年前に認知症で亡くなったのですが、撮影当時はまだ初期で、私自身も認知症というものがよく分かっていませんでした。母が認知症になってからすごく明るくなって、よく笑うようになったんですけど、認知症であっても心の中はちゃんと生きていて、ただ表現が難しくなるだけなんだなと思ったので、今『メモリードア』を見ますと“そうだよね”と思えます。私もみんなが大好きなので、公開して今日はお会いできてうれしいです」と笑顔で語った。
和也のキャリア・チェンジをサポートするヘルパーの歩美を演じる碧海は「私は認知症の方と関わる役ではなかったんですけど、すごく難しい役でした。自分なりの愛を持っている役だったので、愛についてすごく深く考えさせられたという当時の記憶があります。加藤監督の書くセリフを、歩美としてどう噛み砕いて言っていいんだろうかと悩みながら生み出した役だったなと思います」と振り返った。
そんな本作を、実際に認知症カフェで上映しているという加藤監督は「認知症カフェはコロナ禍で一時は下火になりましたが、今年から品川区がすごく力を入れていて、30ヵ所以上あって、そこで上映会をさせていただきました」と明かし、「ある時、80歳を超えたおばあちゃんがいらして、“93分間大丈夫かな”と心配していたのですが、上映が終わるとその方が少女のように生き生きとおしゃべりされて、元気になっていく姿を見て、映画を作った意義がここにあったのかなと感じました」としみじみと語った。
さらに、古川は本作を観た感想を求められた古川は「今まで生きてきて“こうあるべきだ”とか、“こうするのが普通だ”って、自分が考えていないうちに枠にハマろうとしている自分がいるなと思いました。愛の深さとか、“こういう形もあるんだ”って思って、これからの生き方について改めて深く考えさせられました」と語り、「和也が何も違和感なく認知症に入っていたシーンで、次の日も『誰でしたか?』って言われても、ずっと通い続けていた和也は、どう思っていたんだろうなって思いました」と質問。
これに和也役の⽊ノ本は「“認知症とは”とか“介護とは”ということに対して正解が決まっていない映画だと思います。認知症だから好きになったわけではなく、ただその人の人柄に惹かれただけ、認知症は“目が悪いのかな”くらいの些細なことだと思っていて、その受け入れをしているんだけど、他の人から見たら“偽善”と思われると思うんですね。何よりも認知症であることが普通であるというのが加藤さんの本には描かれていたので、僕はそこに委ねていけば、特別なことなくそこにいられるというのが、質問の答えではなかろうかと思います」と答えた。
なお、吉川が今年8月に公開予定の加藤監督の映画『ル・ジャルダンへようこそ2』で主演を務め、同映画がゆうばり国際ファンタスティック映画祭に招待されたことも発表された。
最後に、加藤監督は「この『メモリードア』を撮影していただいたカメラマンの八重樫(肇春)さんが、昨年、ご逝去されてしまいました。彼がいなければこの映画はなかったですし、このかっこいい映画は彼がいたからこそです。本当はこの場に一緒に立ちたかったくらいだし、形になったものを見てもらいたかったです」と悼み、キャスト陣も大粒の涙を流した。
公開表記
配給:株式会社テンダープロ
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)






