
登壇者:尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏、河瀨直美監督
河瀬直美監督の最新作『たしかにあった幻』完成披露上映会が都内で行われ、キャストの尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏と河瀬監督が舞台挨拶に登壇して作品についてクロストークを行った。

本作は小児臓器移植実施施設が物語の舞台。“愛のかたち”と“命のつながり”をモチーフに、日本での失踪者と臓器移植の現実を重ねて描いたヒューマン・ドラマ。河瀬監督にとって6年ぶりの劇映画であり、オリジナル脚本としては8年ぶりとなる。
フランスからやってきたレシピエント移植コーディネーターのコリー(ヴィッキー・クリープス)が、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら、命の尊さと向き合っていく。同時に突然、失踪した恋人の迅(寛一郎)の行方を追う姿を通して愛と喪失、希望が描かれる。
河瀬監督は「コロナ禍などもあって、舞台挨拶に立つのも久しぶり。もう劇映画は撮らないんじゃないか、とも言われていました。感無量です」と感慨深く挨拶した。

同作は、昨年8月にスイスで開催された、ロカルノ映画祭のインターナショナル・コンペティション部門に選出された。
河瀬監督は「クロージングで上映されたのですが、(上映)終了後に割れんばかりの拍手があって、グッときました」と振り返った。
河瀬組の常連メンバーの俳優陣たちは、今作では出番は少なかったものの「やり切った感」に溢れている様子。
尾野は、河瀬監督とは同じ奈良出身。河瀨監督が、カンヌ映画祭(フランス)で新人監督賞「カメラドール」を受賞した『萌(もえ)の朱雀(すざく)』(97年)で、主演に抜てきされてデビュー。同映画祭グランプリ受賞作『殯(もがり)の森』(07年)にも主演。今回19年ぶりのタッグとなった。

尾野に向かって河瀬監督が「何回かオファーしているけど、スケジュールが合わないと言われて……」と伝える。
尾野は、今回の出演について河瀬監督から「『真千子は、主役以外の役はやらないの?』と聞かれて、『やるし!』と、答えて参加が決まりました」と話す。「役について、どんな準備をすればいいのかも分からないまま、監督から何言われるか分からないけれど、『身一つで行くしかない』と現場に行きました」と腹をくくって撮影現場に入ったことを話した。

そんな尾野の演技について聞かれると、河瀬監督は、「100点超えでした。河瀬組の1番、強いところが出ています」と笑顔で太鼓判を押した。
尾野と北村は、お弁当屋を営む夫婦(めぐみと亮二)役で出演。北村は河瀬組では短編に出演しているが、長編作品への参加は初めて。心臓移植のドナーになる子どもの父親役という難しい役柄。「モデルなっている方にお会いして、いろいろお話を聞かせてもらいました」と役作りについて話す。「この作品で何を伝えたいのかと考えながら現実をまんま伝えたいと思い演じました」と想いを伝えた。


河瀬は北村に目をやり「泣くシーンじゃないのに後ろで泣いてたね」と明かし、芝居じゃない感情が出ていたことを伝えた。
先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療の現実と、年間約8万人にのぼる日本の行方不明者問題を重ね合わせて描いた人間ドラマとなる。
移植を受けるドナーの父役を演じた永瀬は、撮影には2日ほどの参加となった。


当日はフリップトークが行われ、タイトルにちなんで、「たしかにあった」ことを書くことに。

河瀬監督が書いたのは「フランスロケ」。本作には3種類のバージョンがあることを明かし、日本で公開される作品ではフランスロケのシーンはカットされている模様で、永瀬は思わず「マジで?」。尾野も「マジで?」とビックリ。河瀬監督は「日本バージョンではフランス・ロケシーンはちょっとだけあります。感じていただければ……」と余韻をふくませたものの、観客も驚かせていた。(3バージョンとも観たくなってしまう……。)

最後に、河瀬監督は「みんながあきらめないで突き進んでいく――どうしても会いたい、夢を捨てたくない、そんな想いをラスト・シーンに託しました」と客席に伝えた。

(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2026年2月6日~ テアトル新宿ほか 全国ロードショー






