
登壇者:リー・カンション、田中 泯、須森隆文、蔦哲一朗監督
MC:市山尚三プロデューサー
1月24日(土)、2024年東京国際映画祭でプレミア上映され、第49回香港国際映画祭にて日本映画初の火鳥賞(グランプリ)を受賞した映画『黒の牛』の公開を記念し、舞台挨拶が開催された。
完成まで8年の壮⼤なスケールの映像詩
禅に伝わる悟りまでの道程を十枚の牛の絵で表した「十牛図」から着想を得て、全編をフィルムで撮影し、⻑編劇映画としては⽇本初となる70mmフィルムも⼀部使⽤された蔦哲一朗監督(『祖谷物語 -おくのひと-』)の最新作。主演はツァイ・ミンリャン監督作品で知られるリー・カンション、田中 泯が禅僧を演じ、生前参加を表明していた坂本龍一の楽曲が使用されている。
ますは本作のプロデューサーであり、本日のMCを務める市山尚三より来場の皆さんに挨拶があり、続いて蔦監督より「本日はありがとうございます。企画からだと公開まで約10年という歳月がかかりました。いろいろな思いが込み上げて、本当に感慨深いですし、万感の思いです。この10年間、本当に多くの方が関わってくださいました。いまここにいらっしゃるリーさんと、泯さんと、隆文さんのおかげで、そして何よりも、まだ何もかたちになってなかった時に参加を表明してくれた坂本龍一さんのおかげで、この映画が完成したと思っております。天国の坂本さんにも無事に成功したと報告できたらと思います。そう言えるように、これからも頑張りますので、引き続き、皆さんも応援していただけたら嬉しいです」と制作8年、公開まで10年を懸けた、その思いを言葉を詰まらせながら、挨拶した。

主演を務めたリー・カンションは「僕は東京に来るのは東京国際映画祭やフィルメックスなど映画祭が多いのですが、今回はこうやって『黒の牛』の宣伝で来られたということを本当に心から嬉しく思っています。コロナの時期の撮影だったので、2回に分けて来日し、しばらく隔離した後で撮影に入りました。苦労はいろいろとありましたが、主演女優が“牛”」なので(笑)、この主演女優といかにコミュニケーションを取るかというのが、とても大切でした。さまざまなトレーニングを経て、僕と主演女優の間も非常にうまくいきましたし、この映画も立派に完成しました」と公開の喜びと撮影中の苦労を語った。

出演の田中 泯は「とにかく(撮影が)楽しかったですね。きついし大変だったんですけど」と話し、「この間もふくよさん(出演の牛)と牛嶋島神社で踊りました。たいへんに嬉しかったです」と墨田区向島の牛嶋神社で開催した本作のイベントについても触れた。共演したリー・カンションについては「リーさんとは、とうとう最後の最後まで、一緒にタバコを吸うとか、『チョコレートいる?』って聞いたりとか、それぐらいでした。無言の会話をこんなにも楽しめる相手を、久しぶりに見つけたので、とても喜んでます」と話した。

出演の須森隆文も「自分は本作がまだ形になる前、9年ぐらい前から関わっていて、ほんとに今日という日を迎えられて幸せです」と喜びを語った。
その後、MCの市山プロデューサーから主演のリーに「ツァイ・ミンリャン監督の作品などで、世界の映画祭で受賞されている台湾を代表する有名な俳優さんですが、本作の脚本を読んですぐに出演を承諾いただいたんですが、何故ですか? そして、どのように主人公を演じようと思ったのか」と質問されると、リーは「監督が私とツァイ・ミンリャン監督を台湾まで訪ねてきてくださいました。その際、本作の元となるパイロット版を持ってきてくださったんですが、観て驚きました。この時代にモノクロで、しかも70ミリ・フィルムを使って撮影するというお話だったので、この監督は本当に勇敢だと思いました。日本の50年代のクラシック映画の巨匠たちの作品のようだと感じました。完成した映画を東京国際映画祭のスクリーンで観たのですが、一つひとつのシーンがまるで一幅の絵画のように非常に美しく感動しました。自分のもう1つの代表作ができたと思いました」と初めて完成作品を観た時の感想を話した。
続いて、MC市山から「蔦監督は特殊な監督であるとは思うのですが、どのような監督ですか、演出はどうでしたか?」と振られた田中は「牛と一緒に田んぼを耕している時が、どのぐらい大変か想像がついていないんじゃない? 雨の降らせ方も猛烈だった。『痛いよ』というくらい(笑)。そこら辺はどうなのかなって」とユーモアを交えながら蔦監督に投げかけ、「前作『祖谷物語』の時は誰も歩いたことのない斜面を、走って降りてくれと。『下がどうなっているの?』と聞いたら『知らない』と。そういう意味では底知れない監督なんですが、ただ出来上がってくるもの、彼の中にあるイメージは、とっても好きです」と蔦監督を評価。
「言葉で説明できることを台本にずらずら書くような監督じゃないんですよね。映画をご覧になった皆さんはもう感じていただけたと思いますけど、しゃべれることなんか1つもないんですよね。僕はそれでいいと思っています。感じたことを言葉にするとなくなっていきそうな気がするからです。こういう映画もあるんだってことを、しっかりと伝えていただければと思います」と観客に語りかけた。
そして映画の初期から関わっていた須森にその経緯を聞くと「パイロット版の10分ぐらいの短編の映像が存在していまして、それにも自分は出演していました。そこからなかなか本編の撮影が決まりきらず。蔦監督に何度も連絡をして『牛どうなってます?』と。それでやっと動き始めるっていう話を聞き、主演がリーさん、田中 泯さんも出演されるとのことで、すごいことになってきたぞと。その間、自分は別の作品にも関わらせていただいてましたが、常にどこか頭の片隅に『黒の牛』の存在があって、無事に出来上がってほしい、無事にお客さんに観てもらいたいと思ってました。今日、このような満席でお客様に観ていただいて……本当に自分にとってこの映画は特別で、参加できたことを誇りに思っております」と監督同様に長年本作に関わってきた熱い思いを語った。

公開表記
配給:ALFAZBET、ニコニコフィルム、ムーリンプロダクション
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿 K’s cinema他 にて全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)






