イベント・舞台挨拶

『この夏の星を見る』「良いお年を」

© 2025「この夏の星を見る」製作委員会

 登壇者:松井俊之プロデューサー×くれい響氏(映画評論家)

 直木賞作家・辻村深月氏による青春小説「この夏の星を見る」(KADOKAWA)を山元 環(やまもとかん)が自身初となる長編商業映画の監督を務め、東映配給により7月4日(金)に全国公開となり、約5ヵ月。
 この度、映画のクライマックスである2020年12月1日からちょうど5年後となる2025年12月1日(月)に、全国7館にて同時刻(19時)に本作を上映する『この夏の星を見る』「良いお年を」上映会が開催された。

 12月1日(月)、映画の舞台のひとつでもあり今回の上映会にも参加しているシネマサンシャイン土浦には、本作の登場人物のモデルでもあり、主人公たちの挑戦する「スターキャッチコンテスト」の生みの親でもある、天体観測講師の岡村典夫先生が来館。映画の上映前後には、集まったファンの皆様と共にイオンモール土浦・屋上での観測会も開催された。

 そして新文芸坐では、上映後に映画評論家のくれい響氏と松井俊之プロデューサーが登壇しトークショーを開催。
 イベント冒頭、本日の聞き手を務めたくれい氏は「7月の公開直後から(新文芸坐の支配人に)『絶対に映画を観てほしい。そして絶対に12月1日にイベントをやらせてくれ』とずっと口説いていました」とこの特別な日に向けた並々ならぬ思いを告白。

 松井プロデューサーも「今日は全国で7館、北海道から大分まで一斉に同じ時刻に上映するというイベントとして成立しました。本当に感謝申し上げます」と映画の公開から約5ヵ月となった本日、劇場に足を運んでくれた観客に感謝の思いを述べた。

 そしてこの日、新作の撮影のために来場が叶わなかった山元 環監督からはメッセージが届けられた。「12月1日は亜紗たちにとってとても特別な日です。宇宙を飛ぶISSと地上で追う亜紗たちの距離はおよそ400km。とても遠い距離ですが、目に見えない思いが距離という障害を優に飛び越え、みんなが繋がることができる日です。映画の中のそんな特別な日に『よいお年を上映会』が実施されること、本当に嬉しく思っています」。

 山元監督は7月5日に開催されたの公開記念舞台挨拶の際に、七夕の短冊に「冬までロングラン上映して、“よいお年を”をみんなで言いたい」という願い事を書いていたが、それがついに現実のものとなった。「夢みたいな気持ちでいっぱい」と感激の言葉を書き記した山元監督のメッセージは、最後に「『この夏の星を見る』に出合ってくださり、心から感謝申し上げます。素敵なよいお年をお過ごしください」という言葉で締めくくられた。
 そしてその手紙の言葉を補足するように、「本当にこの作品はたくさんのファンの方々に支えていただいて。SNSでも声を上げていただいて、そして、くれいさんのような方が声を上げてくださって、そして全国のミニシアター系の劇場で公開を繋げていただくこととなり、この日を迎えることができました」と感謝の思いを語る松井プロデューサー。

 そして監督の夢はもうひとつ。「監督はイベント中に『日本アカデミー賞に行きたい』とも話していたんです」と付け加えた松井プロデューサーは、「作品賞や監督賞などはアカデミー会員というものに入っていないと投票できないんですけど、一個だけ。一般の映画ファンの皆さんが、自分が大好きな俳優さんや監督、作品に投票できる賞があるんですが、それが『話題賞』です。なんとか山元 環を日本アカデミー賞に連れていってあげてください。よろしくお願いします!」と会場に投票を呼びかけると、会場からは温かい拍手が送られた。

 続いて映画冒頭に登場する、制作会社のロゴに関する話題へ。東映の三角マークの後に現れる「東映アニメーション」、そして「FLARE CREATORS」というロゴについて、SNS上では「(アニメかと思い)劇場を間違えたんじゃないかと思って焦った」という声も上がっていたということに触れて、FLARE CREATORSの取締役エグゼクティブ・プロデューサーでもある松井プロデューサーは、FLARE CREATORSが東映アニメーションと東映によって設立された企画会社であり、本作がその第一弾作品であることを説明。ちなみに会社のロゴデザインをしたのは、『THE FIRST SLAM DUNK』のポスタービジュアルなどをつくったクリエイティブ・ディレクターであるとのことだが、そのロゴが宇宙をイメージさせるものだというのは「偶然です」と笑ってみせた。

 「なるべく次世代を担っていってほしい新しい俳優さんをキャスティングしたかった」と松井プロデューサーが語る通り、本作には注目の俳優陣が多数出演しているが、面白いことにその地域ごとに撮影現場の雰囲気が違っていたという。まずは中野有紗、早瀬 憩、和田 庵、蒼井 旬ら五島のキャストに関しては「五島は非常に温かみがあって、撮影チームはスケジュールに追われてせかせかしているのに、現場は時間がゆっくり流れていた。そういう空気感と役者さんの持ってる性格みたいなものがすごく一致していました。そしてチームワークが良かった」と説明。
 さらに黒川想矢、星乃あんなら東京のキャストについては「ふたりは当時中学3年生だったんですけど、都会的で垢抜けているなと感じました。黒川くんは、先月に行われた第17回TAMA映画賞で最優秀新進男優賞をいただいたんですが、撮影の時からものすごく成長していたんです。受け答えも堂々とされていて、ビックリしてしまいました」と振り返る。
 一方の桜田ひより、水沢林太郎、河村 花ら茨城のキャストは、「たしか当時、みんな21、22歳を超えていたと思うので、とても大人でした。そういえば亜紗ちゃん(桜田)と晴菜先輩(河村)は、茨城ですごく仲良くなっていましたね」という。

 本作の原作は辻村深月の同名小説だが、山元監督自身、「なんとしても2時間以内に収めたい」という思いで挑んだという。だが、実際に撮影された素材をつなぎ合わせると2時間半近いバージョンになってしまった。そこから現在の126分という上映時間に収める作業は困難を極めることとなった。
 「山元 環という監督は本当に優れた監督で、台本を作った段階で絵コンテを頭の中に作るんです。それが設計されているんで、とにかく芝居を役者に任せて(カット尻でカットをかけずに)ずーっと撮ってるんですよね。そしてセリフもある程度任せちゃってるわけですが、その音声を後で聞くとすごくいいんで。活かしたくなるわけですよ。そうするとまた長くなってしまうわけです」と編集作業の苦しみを笑いながら振り返った。

 そこで松井プロデューサーは原作ファンに向けて「心から謝りたい」と切り出した。「原作には(黒川想矢演じる)真宙が通う中学の先輩の鎌田先輩というキャラクターがいるんです。それと、真宙が(萩原 護演じる)輿くんとリモートをしている時に、きのこ大全の本を見つけて盛り上がるシーンもあって。この2つはどうしても残したくて、最後の最後まで頑張ってみたんですけど、どうしても全体を短くしなくてはならなくて……お詫び申し上げます」と断腸の思いでカットした幻のシーンについて詫びるひと幕も。
 とはいえ、原作に対するリスペクトは最大限に捧げられている。「そもそも脚本の森野マッシュさんが辻村先生の大ファンだったので。ものすごく解像度高く辻村作品を取り込んでくださいましたし、オリジナルで書いたセリフも先生に見ていただいて。そのまま許可していただいたもの」と振り返る松井プロデューサーは、「私のプロデューサーとしての第一の目標は、原作の辻村先生に喜んでもらうことですから」とキッパリ。「それはどうやら達成できたようなので。すごくありがたかったですね。ただ鎌田先輩ときのこ大全の件については、ファンの方々には本当に申し訳ないなと思っています」と頭を下げるひと幕もあった。

 イベント終盤では会場に集まった全員で「良いお年を!」コールで締めくくることになった。会場に集まったファン全員が起立し、声を合わせて「良いお年を!」の大合唱。それはまるで映画の中で亜紗たちが同じ空を見上げて叫び、ひとつになったように、会場全体もひとつになったような瞬間だった。
 そんな本作の今後の展望について「抱負というより目標ですが、たとえば来年の夏にもう一度上映したいですね!」と松井プロデューサーが語ると、会場からは期待を込めた大きな拍手が沸き起こった。

 さらに、トークショー終了後、本イベントに参加されたファンの方々からのコメントも。今回2度目の鑑賞で、まだ映画を観たことのない方を誘って参加してくれたと明かす女性は、「妹がコロナ当時小学生で、今は中学生なのですが、同じ学というところで共感できる場面があると思うので、学生の方々にはぜひ観ていただきたいなと思います」と絶賛。そして、桜田ひより演じる主人公・亜紗たちと同い年だという女性2人は、すでに3回目、4回目の鑑賞となるリピーターぷり。映画の魅力を問われると、「最初に見た時には、コロナ当時、どれくらいつらくて我慢していたか、実は頑張ってたんだなということを二人で話したりした。映画体験として強烈だったのもあって、何回も何回も観たくなり、何回観ても新しい発見があるなと思いました。「私たちのための映画だと思う」と周囲の同世代の友人には勧めていて、(映画を通じて)コロナがあった時に一度戻って、のり超えられる感じして……『私たちの為のものじゃん……』と思います」と熱量たっぷりに語ってくれた。

公開表記

 配給:東映
 ロングラン上映中!

(オフィシャル素材提供)

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