仕事仲間、そして応援してくださっているファンの方たちの気持ちが、僕にとっては一番の宝物です
心に深い痛みを抱えた青年が、旅先での偶然の出会いによって生きることへの希望を見出してゆくまでを描いた青春映画『キズモモ。』。重い過去を抱えた青年という難しい役柄に挑戦した、主演の馬場 徹がインタビューに答えてくれた。
馬場 徹
1988年6月17日生まれ、東京都出身。
映画、TV、舞台の他、CM、声優など幅広く活躍。そしてPure BOYSメンバーとしても活動中。主な出演作に、TV「オレンジデイズ」「義経」「トップキャスター」、舞台「テニスの王子様」「銀河鉄道の夜」(08年10、11月公演)、映画「青空のゆくえ」(05年/長澤雅彦監督)「夜のピクニック」(06年/長澤雅彦監督)「妄想少女オタク系」(07年/堀禎一監督)「カフェ代官山~Sweet Boys~」(08年/武正晴監督)「憐~Ren~」(08年夏公開/堀禎一監督)「トワイライトシンドローム デッドゴーランド」(08年夏公開/安里麻里監督)「カフェ代官山Ⅱ~before sweet boy~」(08年秋公開/武正晴監督)「花ゲリラ」(09年春公開/関顕嗣監督)などがある。
俳優になったきっかけを教えていただけますか?
小さい時からずっとサッカーが大好きでやっていたんですが、小学校4年生の頃に大きな怪我をしてしまいまして、家にいることが多くなり、もともと映画は大好きだったんですけど、見る機会が増えたんですね。一日3本見たりしていました。映画を見ている間だけは怪我の辛さを忘れることができました。それで、“あぁ、僕も俳優になりたな”と思って事務所に入ったのがきっかけです。
どんな映画がお好きだったんですか? 憧れている俳優さんは?
アクション映画が大好きでした。激しい格闘シーンとか見るのが。一番好きな映画は『パール・ハーバー』ですね。ベン・アフレックも大好きです。好きな俳優さんは、特にハリウッドにはたくさんいますよ。日本ですと、真田広之さんに憧れています。アクションも出来ますし、演技も素晴らしい方ですから。僕もいつかアクションに挑戦してみたいです。今は簡単に出来るジョギングをまた始めようと思っていますが、後々には殺陣などを習うことも必要になってくるでしょうね。いろいろなことにチャレンジしていきたいです。
実際にお仕事を始めたのは何歳の時だったんですか?
小学校6年生の時に事務所に入りまして、中学校2年生くらいまではレッスンをしていました。その後、少しずつ仕事をするようになりましたね。
実際に憧れていた世界に入って、想像と違ったことはありましたか?
とにかく何も知りませんでしたから、現場ではこういう風に創られていくんだと分かってすごく興味深かったです。表だけではなく、裏ではこういう闘いがあるんだということが良く分かりました。僕は裏側にも興味があります。カメラが大好きなので、現場に行くと時々カメラマンさんのカメラをお借りして写真を撮らせていただいたり……などしています。
今作の『キズモモ。』というタイトルを聞いて、何を連想しましたか?
ホント、そのままですよ、傷ついた桃。冒頭も傷ついた桃から始まりますし。
初めて脚本を読んだ時には、どう思いましたか?
僕が演じたアキはもともとは元気な男なんですけど、自分のせいで悲劇が起きてしまったということがあって、物語が進むにつれて彼の葛藤が見えてきたり、自分とは正反対の将也に出会うことによって新たな発見があって、人が人を支え合っていくということを学んだりなど、心にしみる話で、素敵な映画になりそうだなと思ったのが最初の印象ですね。
これまでも何本か映画に出演されていますが、今回はまさに主演で、しかもシリアスなドラマです。演じる上でどんな苦労がありましたか?
特にこれと言った苦労はなかったですね。ずっとロケ現場にいたので、撮影以外はずっと部屋にいましたし、撮影の間は役に集中できたので、さほど苦労は感じませんでした。ただ、その時期はちょうど花粉が多い頃でしたので、それに悩まされたくらいです。おととしから花粉症になってしまいまして。
監督からは何かアドバイスはありましたか?
思うようにやらせてくださいました。「つながりの部分だけは意識して演じて」とは言われましたね。
アキとご自身が重なる部分はありましたか?
普段は元気がいいところ、やんちゃなところです。ただ、アキは、みんなといる時には意識的に場を楽しくしようと頑張っていますが、一人になるともの思いに沈んでいますね。そこは僕と違うかもしれません。
古川雄大さんとはもともとお友達とか?
はい。「テニスの王子様」でワン・ステージ一緒にやっていましたから、前から仲が良かったです。だから、一緒にやると決まった時には「楽しくやれそうだね」と二人で喜びました。実際、やりやすかったですよ。部屋も、河合龍之介くんも含め、3人一緒でしたし。とにかく、コンビニに行くにも車を15分くらい走らせないといけないような場所にいましたから、毎日撮影が終わるとコンビニに行って宿舎に戻ってゆっくりして、みんなでテレビを見たりしていました。演技の話などはしませんでしたが、同じ部屋といってもそれぞれプライベートな空間があったので、一人で静かに考えることもできましたね。
好きなシーンは?
僕と雄大と河合くんの3人でバスケをした後に、僕がちょっと「酸欠だ」と言って抜けるまでのシーンと、アキと時計職人の弓矢三紀が工房にいて、弓矢が時計を作っているのを見ているシーンが一番好きです。アキの心の動きが見えてきて、そこを起点に少しずついろいろなことが動いていきますから。バスケのシーンはすごく楽しかったです。あの撮影は初日だったんですよ。あれのおかげで、みんなもすぐに打ち解けることができたと思います。河合くんはすごくバスケがうまくて、いろいろと教えてもらいました。
料理が上手だという設定でしたが、馬場さんご自身はいかがですか?
料理はやらないですね(笑)。でも、すごく興味はあります。
アキは自分探しのような旅に出ますね。馬場さんはもし時間がたっぷりあるとしたら、どこに行きたいですか?
日本でも海外でもいいので、南の島に行きたいです。きれいな海のある所。ビーチパラソルの下でのほほんとしていたいです。最近はダイビングをしてみたいとも思っています。
馬場さんは「やりたいことがいっぱいありすぎる」とどこかでおっしゃっていましたね。今、一番やりたいことは何ですか?
やっぱり海に行きたいです。誰にも見られていない所。一人になれる場所です。
この夏はそういう機会がなかったのですか?
この夏は舞台に入っていましたので、全くありませんでした。でも、それはそれで良い思い出になりましたね。ゆっくりするのは、来年の夏の楽しみということで(笑)。
将来、こうなりたいと思い描く姿は?
年を取れば取るほど、どんどん輝いていく人になりたいです。深みのある人物ですね。日本ではやっぱり、真田広之さんが理想です。
アキにとって一番大切な品は、止まった腕時計ですね。馬場さんにはそういう品がありますか?
物ではないです。気持ちです。一緒に頑張っている人たちと通じ合う気持ち、良いものに仕上げようという気持ち、今応援してくださっているファンの方たちの気持ちが、僕にとっては一番大切なもの、宝物です。
あえて品物を挙げるなら、高校の卒業式の時にサッカー部の後輩たちにもらった、寄せ書き入りのサッカー・ボールです。あれはすごくうれしかったですね。僕はあまり練習に行けませんでしたし、試合にも行けなかったのに、仲間として思ってくれていたということが伝わってきて、本当にうれしかったです。今でも大切にしています。
今年、20歳になったんですよね? 何か心境の変化はありましたか?
何も変わらないですね。特に意識はしなかったです。
舞台と映画は演技が違いますよね? どういったことを意識しながら、演じていますか?
映画やテレビといった映像のものは、表情もはっきり分かりますし、気持ちも伝わりやすいと思うんですけど、舞台は観に来てくださっている方たちの反応がリアルに感じられ、自分たちも感情をストレートに伝えられて互いに共感し合えるというライヴ感があります。どっちも好きですけど、舞台は自信にもなりますね。最初は本当に怖かったですよ。自分には無理だと思いました。でも、良い舞台だったらお客さんも応えてくれますし、本当に楽しんでくださっているのがひしひしと伝わってきますから、1回やったら止められなくなりました。
でも、もちろん映画もやっていきたいです。子供の頃から映画が大好きでしたから。ただ、撮影などしていても、自分がその場にいるのが不思議な感じがします。子供の頃はサッカー選手になりたかったので。今後はどうなるか分かりませんが、精一杯頑張っていきたいです。
オフの時間には何をしていますか?
ショッピングに行きます。服が好きなんです。
それでは、これから映画をご覧になる方々にメッセージをお願いいたします。
『キズモモ。』は心が温まる、そしてこんな人間もいるんだということを感じていただける映画だと思いますので、ぜひ劇場に足を運んで観ていただけたらうれしいです。よろしくお願いします。
とてもしっかりした好青年の馬場さん。初の主演作である本作では、複雑な役柄を気負わずにナチュラルに演じている。ファンにとっても、彼の新たな顔が見られるのでは?
(取材・文・写真:Maori Matsuura)
公開表記
配給:日本出版販売/モブキャスト/ダブ
2008年9月6日(土)より、ユナイテッド・シネマとしまえん、ユナイテッド・シネマ浦和、渋谷シアターTSUTAYAにて公開!