記者会見映画祭・特別上映

『三度目の殺人』第74回ヴェネチア国際映画祭 記者会見・フォトコール・レッドカーペット

©2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

 9月9日より公開となる是枝裕和監督最新作『三度目の殺人』が、第74回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門に正式出品されたことを受け、福山雅治、役所広司、広瀬すず、是枝裕和監督が現地入り。記者会見・フォトコール・レッドカーペット、そして公式上映に参加した。

公式記者会見

是枝監督に質問です。展開がスローな作品ですが、全編を通してスリル・サスペンスを持続するための秘訣はなんだったのでしょうか?

是枝裕和監督:まずはお集まりいただきありがとうございます。どの映画もだいたいスローといわれるのですが今回も自分のペースで作っているので、特になにかをゆっくりしたというつもりはないんですね。
 ガラス一枚隔てて向き合った男ふたりが言葉を交わさない時間、何かが止まって見えるその瞬間にいろいろなものが動いて見える、実際は動いてないのに心の奥で何かが動いて見えるというのを丁寧に丁寧にやろうと思ったので、そういうことがもしかすると影響しているのかもしれません。ただ、止まって見える中で実は何かが動いて見える、というのをやりたいと思いました。

素晴らしい映画でした。監督に質問です。エイナウディ氏を音楽に起用しようとしたきっかけは?

是枝裕和監督:エイナウディさんとは今回とてもいいコラボレーションができたと思っていますけれども、きっかけは海外の映画祭を回っていた時にたまたま飛行機に乗って聞いた曲が彼の曲で、音を聞いていたらすごく風景が浮かんだんです。特に 水、火 雪とか。
 その時は名前が読めなかったのですが、メモして日本に戻ってアルバムを買って、今回は脚本を書きながらずっと彼の曲を聞いてました。
 なのでサウンドトラックをお願いしたというよりか、本の段階から僕の台本は絡まってます。すごく映画の中から生まれてるような気がします。

エイナウディさんの側からの話も聞かせてもらえますか? 是枝監督と初めてあった時にはどのようにアプローチを受けたのでしょうか? どんな話をしましたか?

ルドヴィコ・エイナウディ:コンサートのために東京を訪れた時に、是枝組が撮影しているセットに招待されました。セットとは別の部屋で、編集中の映像を見せてもらったのが、この映画との出合いでした。もちろん台本は読んでいたし、是枝監督の作品も観てはいたのですが、この謎めいた物語に心惹かれ、直ぐに夢中になりました。黒澤監督の名作「羅生門」にも通じると思うのですが、様々な視点から語られていて何が本当なのか分からない。そこが面白いと思ったので、「最後の最後まで顕れない真実」というスピリット(テーマ)で作曲しました。

監督への質問です。今回の作品は、近年の是枝作品とは全く違った作風になっていると思います。どうしてジャンル・ムービーを撮ろうと思ったのでしょうか? どうしてスリラーを撮ったのでしょうか?

是枝裕和監督:観ていただいた人が感じたほど新しいことをやった意識ではないような気がするのですが、ただこの10年ぐらいホームドラマを続けて人間のデッサンを鉛筆で書いていたような、そういう意識なのですが、今回はやや家から社会へ視野を広げて油絵で描くようなタッチを変えた作画をしているのですが、描く本人は変わらないので、変わっているところと変わってないところがあると思います。

(直前の返答を受けて)でも、どうしてスリラーだったのでしょうか?

是枝裕和監督:スリラーをやろうと思って最初スタートしたわけではないですが、社会に目を向けた時に人が人を裁くことについて考えてみたいと思ったことがスタートとしてありましたし。
 日頃お付き合いのある弁護士さんと話をする中で、「法廷が真実を追求するところではない、利害の追及をするところだ」という一言を聞いたのが今回のモチーフ、きっかけになりました。
 脚本作りも実際の弁護士たちに入っていただいて一緒に作っていったプロセスがあるので、そういう意味では自分の記憶、家族をベースにして書いていたストーリーの作り方とは違う作り方をしました。そして、それはとても刺激的でした。

『そして父になる』はベネチアでも話題になりました。日本ではロックスターとしても有名な福山さんですが、今回も是枝監督から起用され、是枝作品の常連になりつつあると思います。今回は社会の襞をかきわけ、事件を捜査する役ですが、どういった心構えで臨んだのでしょうか?

福山雅治:僕自身、是枝監督、是枝作品のファンなのですが、僕も音楽をやっているときはシンガーソングライターというスタイル、作詞、作曲、演奏、歌をやらせていただいており、監督の映画作りの現場はすごく手作り感があって、原案から脚本、監督、編集をやられていて、全ての工程を俳優として参加しながらその現場を一番近くで見られるというのは、僕にとってこの上ない贅沢な経験です。贅沢な経験であると同時にすごく刺激を受ける現場です。
 是枝監督という一人の人間を通して、そして映画製作を通して、監督がどういう目線でこの人間社会を、人間を見つめているのかというのを知る機会を与えていただいています。私にとって自分の活動、表現をフィードバックできる現場で、参加させていただくことにいつも感謝しています。

是枝作品ではよく「親子の関係性」にも言及されます。広瀬さん、役所さんはどういった心構えでこの作品に臨んだのでしょうか?

広瀬すず:私は10代だからこそ、少女だからこそ見える大人の方の言葉、行動、母への思いなどいろいろなものを客観的に見ていました。お母さんが話す言葉を一字一句聞き逃さないように、ずっと話を聞いていて、徐々にニュアンスが変わっていったり、どこか自分をかばうように話す姿を見てまた感情が生まれたりしていました。

役所広司:私は監督からは「誰か嫌いな人を2~3人殺す練習をしたらどうですか……」なんて言われたりはしませんでしたけど(笑)、監督から頂いた脚本と撮影の最終日まで脚本が変更になって、監督がどの方向に私たち俳優を導いてくれるのかというのが手に取るように分かりましたので、それをひとつの手掛かりになんとかやりきることができました。

劇中のセリフで、弁護士の父親である元裁判官が以下のようにいうのが興味深かったです。「30年前は犯罪の原因を社会に求める風潮があった。当時もし有罪判決を下していれば、今回の事件は起こらなかったかもしれない」。このセリフは、日本の社会が変化して来ているという事実を表現しているのでしょうか?

是枝裕和監督:そのセリフは僕が書いているのですが、父親が言っている通り、犯罪は社会から生まれるという考え方が日本にも定着とは言いませんが、建前としてでも通用していた時代があったのですが、いま自己責任という言葉が日本ではいろいろなところで使われていようになっていて、その犯罪が生まれた社会的時代的経済的な背景を武器にして、個人の責任にしていくという流れは、裁判長が口にしたような形で今の日本を覆っているのではないかと思い、そういうものを背景として描きたいと思いました。

「誰を裁くかは誰が決めるんですか?」というフレーズについて聞かせてください。

是枝裕和監督:それは広瀬すずが演じた咲江という役が、「誰を裁くかは誰が決めるんですか?」というセリフを主人公にぶつけるという形で言葉にしました。
 今回はずっとこの映画を撮りながら私自身が、「人は果たして人を裁けるのか? 法廷はだれかを裁く場所なのだろうか、それとも誰かを救う場所なのだろうか?」と問い続けていました。それは多分、答えがあるわけではない。答えのない答えを作品を通して問うということが僕は映画にとって一番誠実な監督の態度だろうと思っているのですが、その問いを問い続けました。
 彼女の問いにも答えはないのでしょうけども、その問いを主人公にぶつけるという選択肢を選びました。

昨夜作品を拝見して、最後の最後まで途切れない緊張感に感銘を受けました。一つ分からなかったのは、「盲人が二人で象を触る」という挿話です。一人は耳を触っているがもう一人は別の体の部分を、というこの挿話の意図は、真実は二つある、ということなのでしょうか?

是枝裕和監督:たぶん一つなんでしょうけども、確かなものとしては手にできないんじゃないですかね。通常の物語だと謎があってだんだん解けていって犯人に辿りつくというのが王道だと思うのですが、今回は逆を行っているので。
 シンプルな分かりやすい事件だと思っていたのが、複雑になって分からなくなっていく……逆のルートを辿るつくりになっていますが、それは決してお客さんを煙に巻こうとしているのではなく、取材を通して出会った弁護士たちが判決の後にある釈然としない感情が残る「おそらくそうであろうと思いながらも、でももしかしたら……」と思いながらも次の裁判に行かなくてはならない、そんな弁護士が感じるもやもやとした感じを今回は主人公が感じ、お客さんも同じく感じていただきたいという、チャレンジかもしれませんが、そんな着地点を目指して作りました。そして、それを楽しんでいただけたようで嬉しいです。

ドストエフスキーに影響を受けましたか?

是枝裕和監督:「罪と罰」ですか? 学生時代に読んだだけなので、今回の映画を作るにあたって読み直したわけではないです。ただ頭の隅にあったかもしれませんね。影響を与えた作品のなかの一つだと思います。

フォトコール

 涼しく爽やかな風が吹く、美しい水の都イタリア・ヴェネチア。イタリアの有名ブランド、ドルチェ&ガッバーナのスーツ姿で颯爽と登場した福山雅治。イタリアを代表するブランド、ジョルジオ・アルマーニのスーツで貫禄の登場の役所広司。同じくアルマーニのドレスとプラダの靴で大人っぽい装いの広瀬すず。同じくアルマーニのスーツの是枝裕和監督が記者会見会場に登場。会見場は報道陣で満員(250人キャパ)大盛況、海外媒体の質問に応じた。

 フォトコールでも、たくさんのメディアが集まり、「是枝!」という歓声が上がり、今や世界中で注目を集める是枝監督の最新作であり、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『そして父になる』の福山×是枝監督の再タッグである本作への注目度の高さが感じられた。

 監督、キャスト陣は9/3(日)にヴェネチア入りし、沢山の海外取材を受けるなど多忙な日々を過ごしつつ迎えた公式上映日。前日行われたプレス試写の評判も高く、本日の公式上映でどのように海外メディアから受け止められるのか期待が高まる。

レッドカーペット

 快晴のヴェネチア国際映画祭 レッドカーペット会場。

 キャストと監督を一目見ようと、大勢の観客とマスコミで溢れる中、レッドカーペットに登場したのは、イタリアの有名ブランド、ドルチェ&ガッバーナのタキシードとジバンシイのシャツ、クリスチャン・ディオールの靴に身を包んだ福山雅治、イタリアを代表するブランド、ジョルジオ・アルマーニのタキシードの役所広司、日本のブランド、WITH A WHITEのエレガントな白いロングドレスにイタリアのブランド、ジュゼッペ・ザノッティのハイヒールの広瀬すず、同じくアルマーニのタキシードの是枝裕和監督と、本作の音楽を担当したイタリア人音楽家 ルドヴィコ・エイナウディ。

 広瀬にイタリア人女性から「カワイイー!」の声もあがるなど観客やメディアからの大歓声に応え、手を振るほか、カーペット途中ではサインを求められ、心よくそれに応じる姿が見られた。

スタンディングオベーション

 キャパシティ約1030席が満席となる上映会場にて、是枝裕和監督が描く、緊迫感あふれるサスペンスに息をのむように引きこまれた様子の観客たち。上映終了後には、6分にも及ぶスタンディングオベーションが続き、福山らキャスト陣は手を振ってそれに応えた。

 また、是枝監督はヴェネチア国際映画祭フェスティバル・ディレクターであるアルベルト・バルベーラと熱い握手を交わした。

登壇者:福山雅治、役所広司、広瀬すず、是枝裕和監督、ルドヴィコ・エイナウディ(音楽)

(オフィシャル素材提供、※スタンディングオベーション写真:Maori Matsuura)

公開表記

配給:東宝・ギャガ
2017年9月9日(土) 全国ロードショー

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