インタビュー

『いろとりどりの親子』レイチェル・ドレッツィン監督 オフィシャル・インタビュー

© 2017 FAR FROM THE TREE, LLC

 24ヵ国で翻訳され世界中で大ベストセラーとなったノンフィクションを原作にしたドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』が新宿武蔵野館にて公開中ほか、全国順次公開となる。自閉症や、ダウン症、低身長症、LGBTなど、さまざまな“違い”をどう愛するかを学んでいく6組の親子の姿を映しながら、マイノリティとされる人々の尊厳と権利に光を当てた本作は、しあわせの形は無限に存在していることを、私たちに気づかせてくれる。

 この度、本作のレイチェル・ドレッツィン監督のインタビューが到着した。さらには、登場する6組の親子の1組、オルナット家族とレイチェル監督とのオフショットスチールほか、撮影現場の様子がうかがえるメイキングスチールも到着した。

レイチェル・ドレッツィン監督

 1965年生まれ、現在53歳。イェール大学卒。
 長年にわたり、アメリカの公共放送サービスPBSで放送されている有名なドキュメンタリーシリーズ「Frontline」を制作。エミー賞、ピーボディ賞、デュポン・コロンビア賞、ロバート・F・ケネディ・ジャーナリズム賞などのドキュメンタリー映画賞を多数受賞。
 彼女の夫であり映画製作者のバラク・グッドマンと、ブルックリンを拠点とする制作会社Ark Mediaを共同で設立し、エミー賞、ピーボディ賞、デュポン・コロンビア賞受賞作品「The African Americans」などを含む、PBSの4本の主要シリーズのシニアプロデューサーを務める。
 ヒラリー・クリントンと同級生のウェイズリー大学を卒業した女性たちを取材した「Hillary’s Class」や、中年期のセクシャリティを扱った「ニューヨークタイムズ」紙のショートフィルム『Naked』など、時事性の高い社会派の作品を多く手がけており、本作が長編映画デビューとなる。
 現在、彼女はマンハッタンの4年制美術学校「スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツ」で、講師としてソーシャルドキュメンタリー・プログラムを担当。ブルックリンに在住し、3人の子を持つ母親でもある。

 レイチェル監督は、映画で登場する家族ととても近い距離感で、自然体の表情を撮れたことについて尋ねられると「私は映画に登場する家族と親密な関係を築くために、大きな尊敬と、好意の気持ちを持って接しました。それが信頼を築く大切な第一歩になると考えているからです。信頼を築くのに時間がかかった家族もありました。撮影が始まる前から頻繁に会いに出掛け、数ヵ月かけて友情を築いたのです。彼らに、人間としての私を知ってもらうことが重要だと考え、自分自身の人生についてオープンに話をしました。人生のもっとも深い部分をオープンにしてほしいと頼むなら、私のことを信用してもらう必要があったのです」と、お互いに胸の内を開いて接することを心がけたと話した。

 6組の家族に取材しようとした決め手については「最初に、原作に出てくる家族は登場させないということを決めました。ジェイソンを除き、映画に登場する家族は原作と関連がありません。なぜなら10年をかけて執筆された原作はすでに出版されていて、登場する家族の多くは人生の異なるステージに進んでいたからです。そのため、まず映画の中で経過を追うことのできる家族を探しました。次に、焦点を当てたい「アイデンティティー」を絞り込みました。少なくとも1組は、行動面で“違う”子どもを持つ家族、そして知的障がい・身体的障がいを抱える家族を、原作とは異なるテーマについて取り上げました。映画を有機的に感じてもらえるように、各ストーリーがお互いに会話し合い、ぶつかり合うのが理想です。すでにキャスティングされた家族とどう引き立て合うか、スクリーンを飛び出して観客とコミュニケートできるような家族を探したいと願い、それができたと思っています」と自身のビジョンを明確に持ったうえで、取材する家族にアプローチし、それが実現したことについて振り返る。

 6組の親子のひとつである加害者家族のストーリーを取り入れることで悩んだ点について、「リース一家のストーリーは、本作の中で最も難しかったのは間違いありません。当然のことですが、彼らが私たちを信用し、痛ましい経験の詳細を共有するまでに数ヵ月かけてインタビューをし、少しずつ関係を作りました。他よりも暗いトーンを持つ物語を、映画の一部として溶け込ませるのも大きなチャレンジでした。そして、なぜトレヴァーが犯罪を起こしたかではなく、起きたことに対処する家族の努力について描くよう、細心の注意を払いました。このパートは、観客がもっとも辛い思いをする時間ですが、それも、このストーリーを入れることが重要だと考えた多くの理由のうちのひとつです」とテーマとして扱うことの難しさと同時に、このストーリーを扱うことの必要性について答えた。

 3人の子どもの母親でもある監督は、自身の子どもと両親との関係の変化について尋ねられると「私は普段はおおらかな親ですが、親がすべき最善のことは子どもをあなたのベストなイメージに形作るのではなく、ありのままでいさせることだと再認識できました。コントロールしたいという願望を手放せば、気持ちがスッキリします。本作はそれを手助けしてくれました」と自身の子育てのうえでも、本作の制作を通して新たな発見があったと振り返る。

 また、劇中音楽をニコ・ミューリーと、ヨ・ラ・テンゴに決めた理由について、「最初に、原作の“Prodigy”(=神童、天才の意味)の章に登場するニコが決まりました。彼の手がける音楽は素晴らしく、人生体験は題材へのつながりが強いと感じました。原作と、映画でやろうとしていることをよく理解してくれて、それが音楽にも反映されています。ヨ・ラ・テンゴの関わりは、実は少しサプライズでした。私は彼らの大ファンで、1曲を映画に使用するためにまず連絡をとりました。でもアイラ・カプラン(Vo,G)から映画に興味を持っていると電話をもらって、気づいたらこのプロジェクトについて長く話し込んでいました。コラボレーションが実現したことは、自分のキャリアの中でもとても誇らしいことです。アイラ、ジョージア・ハブレイ(Vo, D)、ジェームズ・マクニュー(Vo, B)の3人は素晴らしい人柄の持ち主で、彼らとの仕事は最高でした。最大の貢献は、映画に音楽を使いすぎないよう忠告してくれたことです。彼らの仕事はとても繊細で、音楽が作品を故意に盛り上げるのではなく、ストーリーの瞬間をシンプルに強調するようにしていました」と予想外にもヨ・ラ・テンゴが提供する楽曲のプロジェクト規模が大きくなったことや、彼らの音楽の魅力について語った。

 日本では2020年のパラリンピックへ向けて、“多様性”がキーワードとして多く使われているなかで、この映画を通して日本の観客に伝えたい思いについて「私たちは矛盾する時代に生きています。テクノロジーや社会的勢力のお陰で、違いのせいで非難を受ける人が互いにつながり、かつては存在しなかったコミュニティを形成しています。一方で、科学的進歩が違いを取り除くことをより簡単にし、ダウン症と診断されれば妊娠を中絶する、ろうの子どもには人工内耳を施す、低身長の原因となる遺伝子を攻撃する薬を飲ませる、ということが起きています。私の願いは、本作が人種は“多様性”と“違い”によって豊かになる、ということを明白にすることです。私たちの多くは、まったく違う外見・行動をする人が近くにいると、最初は不快さと気まずさを感じます。でも彼らをよく知るチャンスがあれば、想像していたよりもたくさんの共通点を持っていること、“私たちのよう”ではない人の存在が私たちを人間として豊かで成熟させるということに気づくはずです。街で見かけたら同情を感じるような人々でも、貴重で有意義で、誇り高く幸せな人生を生きています。彼らは別の何者かに変わりたいと望んではいないのです。私は多様性を祝福し、その価値を認めることが最も大切だと思っています。『いろとりどりの親子』は行動の呼びかけなのです」と最後に締めくくった。

公開表記

 配給:ロングライド
 2018年11月17日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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