セザール賞4部門ノミネート(主演女優賞、脚色賞、衣装デザイン賞、美術賞)。フランスで動員100万人を超える大ヒットを記録した『母との約束、250通の手紙』で、伝説の文豪ロマン・ガリの母親を演じた主演のシャルロット・ゲンズブールのオフィシャルインタビューが到着した。
シャルロット・ゲンズブール
1971年7月21日、フランスのシンガーソングライターであるセルジュ・ゲンズブールと、イギリスの女優であるジェーン・バーキンの娘として生まれる。
15歳のとき、クロード・ミレール監督作『なまいきシャルロット』(85)でセザール賞の有望若手女優賞を受賞。フランソワ・トリュフォー脚本、ミレール監督作『小さな泥棒』(88)にて世界的に評価される。
ラース・フォン・トリアー監督作『アンチクライスト』(09)でカンヌ国際映画祭の女優賞を獲得。
その他、『インディペンデンス・デイ リサージェンス』(16)、マイケル・ファスベンダー主演の『スノーマン 雪闇の殺人鬼』(17)、アルノー・デプレシャン監督作『イスマエルの亡霊たち』(17)、『嘘はフィクサーのはじまり』(16)など精力的に出演している。
俳優で監督であるイヴァン・アタルの監督のもと3つの映画を作り、彼との間には3人の子どもがいる。
女優以外の活動として、5枚のヒット・アルバムを制作し、ルイ・ヴィトンに自らデザインを提供し、アンバサダーも務めている。
ニナ役を演じないかとエリック・バルビエ監督から誘いが来た時点で、小説「夜明けの約束」のことはご存知でしたか?
いいえ。ジーン・セバーグとの関係しか、ロマン・ガリについては知らなかった。だから、この映画の脚本で初めて「夜明けの約束」を知ったの。物語の規模の大きさに心を動かされたわ。エリック・バルビエの脚本に夢中になった。後になって小説を読み終わってから脚色作品の量を考えてみて、初めてエリックがどれだけ原作に忠実に書いたかが分かったの。最初はロマン・ガリのことをあまり知らなかったから、心配や緊張なしで、比較的軽い気持ちでこの作品に関わり始めた。参考文献を読んでもまだ圧倒されなかったのね。
あなたが演じる役をどう理解しましたか?
エリックはあらゆる資料を見せてくれた。ニナの写真すべてを見たし、彼女の軌跡を徹底的に調べたわ。彼女が子ども時代を過ごした町についてとか、彼女の人生の他の時期についても。でも分かるものは少なかった。実際には自分の祖母を思い出すことで、ガリの母親のキャラクターを自分のものにしたの。私はニナと、私が捉えたニナの姿と、父方の祖母の姿を合わせたのよ。例えば私が想像したニナのポーランド語訛りは、私がよく知っていたロシア語の訛りに似ていた。ニナと私の祖母という二人の女性は、同じ世代の人間で、同じ世界出身、同じ文化を持っているの。私の祖母は、ニナほど面倒な人ではなかったけれど、それでもとても強い性格だった。祖母の私の父に対する関係とニナと息子との関係は明らかにそっくりだったわ。私は祖母の思い出を用いて、自分自身の物語を想像してみたの。もちろん違うところもたくさんあるけれど、基本的なところは共通点が多かったわ。私の父はフランス生まれで、東欧に行ったことがないのに、自分のルーツに関してはノスタルジアを抱いていて、それが幼い私にもうつったの。特に宗教的なことは考えないで、ユダヤ式伝統に根を下ろしている、なんていう事実もね。私の父は1917年にロシアを後にした。父は、彼の親がロシアを去った時のことをとてもロマンチックに話すのよ。「革命から逃れてフランスに避難した」ってね。私は新聞で読んだ作り話を思い出すの。父と祖母が戦争の話をしていると、それは冒険物語みたいで。私は13歳ごろまでそんな話を聞いていたのよ。
あなたはご自分の祖母のイメージをニナの役に反映させたということですか?
だから訛りは大事だったのよ。エリックに、ニナに訛りをつけることを提案したんだけど、彼は大反対だった。でもニナに訛りがないなんて考えられなかった。少なくとも、訛りの名残はあるはずだって思った。一部の場面でこの女性がポーランド語を話しているのを見たら、彼女が別の場面でフランス語を話しているときに、パリ訛りで話すはずがないのよ。私はその考えを慎重にエリックに分かち合ったわ。そうしたら彼は納得してくれたの。だから役作りは、ポーランド語とポーランド訛りのおかげで完成したのよ。結果は大成功。信憑性があるわずかな訛りというか、かすかな訛りが聞こえて、今となってはなくてはならないものなの。
前の仕事でポーランドで撮影しているときに、エリックが来て、最初の衣装を作ってくれた。ところが鏡で自分の姿を見て、何かがおかしかったの。ニナの姿ではなかったのよ。私の顔つきが全く合ってなかった。ガリの母親が送ったような人生を生きている女性には見えなかった。もっと苦しみを背負っているように見えなければいけなかったし、体重も増やさなければいけなかった。ダメージを受けた感じで、歳を感じさせることを恐れてはいけないと思ったの。私はありとあらゆるものの助けを借りたわ。衣装、メーク、ウィッグ、補綴などね。また偽のお尻と胸を使ってみることにもした。人生で初めて仮面をかぶっているような気持ちがしたわ。完全に変身して、女優として演技をすることができた。それによって自由を感じて、できる限り自分とは違う人物になることはとても楽しかった。
ニナというキャラクターについてはどう思いますか? ニナと息子のやり取りを見ていると、彼女のような母親を持つことは呪いなのか、それとも祝福なのか、と考えずにはいられないのです。
その疑問は私も持ったわ。私は、この母親をとても愛しているんだけれど、同時に呪いでもあると思う。彼女は彼の肩に重荷を背負わせるわけだから。いつもが試験なのよね。でも彼女は彼にすべてを与える。彼女のおかげで彼は強さや、生きることに対する欲求を身につける。でも私は彼女を批判しない。彼女は重荷であって、負担であるのは確かね。でも私は最高級の愛を感じようと試みたの。彼女が息子に対して抱いていた情熱をね。頑固な彼女の滑稽な側面と同時に、彼女が持っていた運命という強烈な概念をちゃんと表現するのはとても難しかった。ニナは滑稽であると同時に、哀れでもある……。
この役を演じるのはとても楽しかった。滑稽な要素にはとても共感できたの。私の祖母もユーモアのセンスがあって、それはとても独特で、ニナのユーモアとはそんなに違わなかった。私は自分の歴史を取り入れた時が多かった。ガリのことではなく、私の父や、私の家族のことよ。そんなふうに自分を巻き込まないといけなかったの。ニナが何かを隠していると感じられる時がある。彼女は結構分かりにくいキャラクターだから。彼女のことはあまり分からないの。息子に対する彼女の執念は彼女だけのものみたいなんだけど、それが彼女のキャラクターの本質的な部分を提供してくれる。彼女のモンスター的な側面のこともエリックから聞いていたわ。生命力と節制のモンスターよ。
公開表記
配給:松竹
2020年1月31日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
(オフィシャル素材提供)