インタビュー

『どん底作家の人生に幸あれ!』アーマンド・イアヌッチ監督 オフィシャル・インタビュー

©2019 Dickensian Pictures, LLC and Channel Four Television Corporation

 『スターリンの葬送狂騒曲』のアーマンド・イアヌッチ監督が、『LION/ライオン~25年目のただいま~』でアカデミー賞®にノミネートされた名優デヴ・パテルを迎え、イギリスの文豪ディケンズの自伝的傑作小説「デイヴィッド・コパフィールド」を映画化した『どん底作家の人生に幸あれ!』がいよいよ1月22日(金)より全国公開となる。この度、イアヌッチ監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

アーマンド・イアヌッチ監督

 1963年、スコットランド生まれ。監督、脚本家として活躍。
 イギリスの無能な大臣の失言から始まる大混乱を追った『In the Loop』(09)ではアカデミー賞®脚色賞と英国アカデミー賞にノミネートされ、アメリカの女性副大統領の悪戦苦闘を描いたTVシリーズ「Veep/ヴィープ」(12~19)ではゴールデン・グローブ賞ノミネート、エミー賞を受賞。
 『スターリンの葬送狂騒曲』(17)でも、英国アカデミー賞脚色賞にノミネートされた。辛口政治コメディを描く手腕を高く評価されている。

プロデューサー、監督・脚本 として本作に関われていますが、イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの代表作で自伝的側面のある原作小説を描くにあたり、気をつけたことは何でしたか?

 僕はこの映画の観客がたとえチャールズ・ディケンズのことを聞いたこともなく、原作である小説「デイヴィッド・コパフィールド」についての知識もなく、僕の過去の作品について何も知らなくても構わないと思っています。僕はこの原作が大好きで、そこから放たれるバイタリティーやエネルギーそして現代的な要素とユーモアが大好きなのでそれを映画の中に組み入れたかったのです。それにキャストのアンサンブルが加わって楽しい作品にしようと思いました。
 この映画はお互いに火花を散らしあいながら物語が進行していきます。過去のコスチュームプレイのルールには従わないことにしました。劇中の登場人物たちは、現代に生きている人たちと同じ。蜘蛛の巣だらけでカビ臭くて暗い過去の歴史や時代に戻る必要はないと考えたのです。そこが僕の意図したアプローチでした。

これまでなんども映画化、映像化されてきた原作ですが、今回特にチャレンジングだった点は?

 この原作は大作で,一番苦労したのは脚本にする時でしたね。前半、中盤、後半という形で構成されている大作を作るには注意が必要でした。他の人気作品のように山場となる場面だけを切り取って並べ替えていくことは出来ないので、視点の違う箇所を切り捨てることにしました。
 一方では、物語に流れているクリエイティブな精神性は維持したまま、陽気で愉快な感情を失わないことが大切でした。それを2時間の映画作品にしなくてはならなかった。900ページもの長編大作を忠実に再現するのとは違う作業でした。そこが一番大変だったかもしれないですね。だから面白い登場人物がいても面白いシーンがあってもカットしなければならなかった。そこが一番苦労したところでした。
 撮影現場では俳優陣とは2週間に渡るリハーサルをやって理解を深めていき、みんなの士気も高まり、親密な関係を築いていくことができました。この映画で大切なことは友好関係とそのコミュニティなので、それを撮影現場でも作り上げていったわけです。

主人公デイヴィッド・コパフィールドを演じたデヴ・パテルとの仕事はどうでしたか?

 デイヴィッド・コパフィールド役をできる人は彼以外にはいないと思ったし、彼を見て直感的に自分が求めている人だと分かりました。デヴ・パテルには主人公デイヴィッド・コパフィールドを演じることができる素質が兼ね備わっていたんです。脆弱性があり、コメディーのセンスがあって、身体的特徴も一致していて、しかもロマンティックでカリスマ性と強さを持っています。彼を見た時、映画『LION/ライオン~25年目のただいま~』(16年)のことを思い出しました。強くて光る個性を持っている。それがデヴ・パテルでした。

 「デイヴィッド・コパフィールド」の映像化というと、サイモン・カーティスが監督したBBCのテレビ・シリーズで“ハリポタ”の頃より幼かったダニエル・ラドクリフがデイヴッドを演じた名作もあるが、今回の新作は古典をモダンなアプローチで翻案しており、舞台・衣装はヴィクトリア朝なのに、映画的なレトリックは実に斬新。
 配役もそうで、デイヴィッド・コパフィールド役にインド系のデヴ・パテル、アグネスやミセス・スティアーフォースがアフリカ系の女優、ミスター・ウィックフィールドが香港系と、意表をついており、最初はものすごく違和感を覚えたものの、観ているうちにそれも気にならなくなるくらいユニークな語り口で、ディケンズの言語的イマジネーションが映像という媒体に憑依し飛翔しているかのようだ。
 役者たちの素晴らしさは言うまでもないが、出色はユライア・ヒープを演じたベン・ウィショー。単なる陰湿な悪役ではなくて、虐げられ辱しめられてきた者にこびりついた卑屈と怨嗟、後の捻じれた横柄さの裏に秘めた悲哀を体現していて、あくどいことをしているのに、つい彼の深みに嵌ってしまいそうな名演だ。
 (Maori Matsuura)

公開表記

 配給:ギャガ
 1月22日(金) TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテ 他、全国順次ロードショー!

(オフィシャル素材提供)

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