イベント・舞台挨拶

『千夜、一夜』公開記念舞台挨拶

©2022映画『千夜、一夜』製作委員会

 映画『千夜、一夜』の公開を記念した舞台挨拶が都内で行われ、主演の田中裕子、共演の尾野真千子、安藤政信とメガホンを取った久保田直監督が登壇してクロストークを繰り広げた。

 本作は、ドキュメンタリー出身の久保田監督が、年間約8万人にものぼるという行方不明者の「失踪者リスト」から発想を得て着手し、映画公開まで数々の困難を乗り越え、コロナ禍にもかかわらず、約8年もの歳月をかけて完成させた作品。突然、姿を消した最愛の夫を30年にもわたって待つ女(田中)のもとに現れたのは、2年前に失踪した夫を探す、もうひとりの「待つ女」(尾野)だった。新潟県佐渡島を舞台に交差する2人の人生が描かれる。

 久保田監督は、主人公となる若松登美子役を「田中裕子さんしかいない」と決めており、あてがきで脚本(青木研次)も書かれたことを明かした。さらに、久保田監督は田中について「素晴らしい俳優さん。人として、人間としても教わることが多い。ぜひまたご一緒したいとずっと思っていた」と『家路』以来のコラボとなる田中を絶賛する。

 脚本を読んだ田中は、「(脚本の)青木研次さんとは2004年の『いつか読書する日』で初めてご一緒しました。それから何本か撮りまして今回に至ります。セリフはそれほど多くはないけど、セリフとセリフの間に感じられる“風”みたいなものを皆さんに伝えたいなと思うのですが、それが難しくて……」と謙遜しながら語った。

 田村奈美役を務めた尾野は「いい意味でとらえて欲しいのですが」と前置きし、「エンタメではなく、地味な映画ですが、何かを考えさせようとしている映画です。脚本を読んで素晴らしいと思いました」と強い思いを込めて語った。また、尾野と田中は以前一度共演しているが、尾野は「前回はやり残しているものがありました。今回は面と向かって、向かい合うシーンもあるのでぜひやりたいなと思いました」と明かし、田中との共演シーンには並々ならぬ姿勢で臨んだことを話した。


 奈美の失踪した夫、田村洋次役を務めた安藤は「自分は役者としてはフラフラとしている人間です。台本を読んで自分の人生とリンクしている、自分がやるしかないかなと思ってオファーを受けました」と話す。また、田中について「共演して、まるで魔法にかかったように、すべてを見透かされているような気持ちでした。こんなことは初めての経験です」と話し、「だんなさん」という簡単なセリフを噛んだことも話し、「ずいぶんあがっていたんじゃないかなと田中との共演を振り返っていた。


 今作は、釜山国際映画祭の「ニューカレンツ・コンペティション部門」に正式招待され上映された。現地入りしていた久保田監督は「上映後にたくさんのお客様が残ってくださって、多くの質問をいただきました」と活気と熱が感じられる報告をした。

 撮影時の思い出を話す場面で、田中は「車で撮影が終わって帰ってきたら野っ原で虫を取っている女の子がいたんです。真千子ちゃんでした」と笑顔で報告。尾野は「花を摘んでいました。花摘む乙女でした」と指をほほにあてて説明し、会場に笑いを誘った。また、田中は撮影が行われた佐渡島で、特別天然記念物のトキを5~6羽目撃したという。「野生のトキが見られてよかった」と笑顔で語った。


 尾野は、「自分の弱さを感じることはある?」と質問されると「とても弱いですね。自分でも強いと思い込んできたんですけど、ふとした時にわたしは弱いんだなと最近気づきました。そういう年頃になったんでしょうね」とコメントした。
 最後に田中は、「過ぎ去った年月を千夜に例えれば、今日は一夜。観て下さって、お部屋に戻って明かりをつけるときに、ふとこの映画を思ってくださればいいかなって……」とメッセージを伝えた。

登壇者:田中裕子、尾野真千子、安藤政信、久保田直監督

配給:ビターズ・エンド
10月7日(金) テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開

(取材・文・写真:福住佐知子)

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