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『幻滅』フランス映画祭2022 横浜 上映後Q&A

©2021 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 3 CINÉMA – GABRIEL INC. – UMEDIA

 19世紀フランスを代表する文豪、オノレ・ド・バルザックが書き上げた『幻滅——メディア戦記』を、『偉大なるマルグリット』(2015)のグザヴィエ・ジャノリ監督が映画化。念願のセザール賞において作品賞他、最優秀助演男優賞(ヴァンサン・ラコスト)、有望新人男優賞(バンジャマン・ヴォワザン)を含む最多7冠を受賞しフランス映画界を席巻した『幻滅』(2023年公開)は、注目のキャストが勢揃いし、200年も前の物語とは思えないほど現代と酷似したメディアの状況を鋭利に描く、社会派人間ドラマ。この度、主人公リュシアンを務めた俳優バンジャマン・ボワザンが本作をひっさげて初来日を果たし、大勢の観客を前にQ&Aを行った。

 オノレ・ド・バルザックが冷徹に描いたのは、社会を俯瞰し、そのなかで翻弄されるさまざまな人間像。44歳で書き上げた「人間喜劇」の一編、『幻滅——メディア戦記』を映画化した本作。
 主演のリュシアンを演じたのは、フランソワ・オゾンの『Summer of 85』で日本でも大きな注目を浴びたバンジャマン・ヴォワザン。オゾン作品とは打って変わり、初のコスチューム劇で、純粋な青年が野心と欲望に惑わされ堕落していく過程を見事に演じきった。また、リュシアンの先輩格として彼を教育していく、ジャーナリストを演じるのは、『アマンダと僕』のヴァンサン・ラコスト。私欲にまみれた人々のなかで唯一、誠実にリュシアンを見守る作家のナタン役は、監督としても世界的な人気を誇るグザヴィエ・ドラン。他、セシル・ド・フランス、新星サロメ・ドゥヴェル、彼らを固める脇役にフランスの国民的スター、ジェラール・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバール。そして、本作が遺作となったジャン=フランソワ・ステヴナンらフランス国内外の実力派俳優を集めた魅力的なキャストが勢揃いした。

 イオンシネマみなとみらいでの『幻滅』上映後、同作主演のバンジャマン・ヴォワザンを迎えたQ&Aが行われた。フランスの文豪オノレ・ド・バルザックが手がけた小説を映画化した本作は、2022年セザール賞7部門を受賞する快挙を成し遂げた重厚なドラマ。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアンが、あこがれのパリで暮らす中で、当初の目的を忘れ、欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていくさまを描き出す。

 映画上映後、重厚なドラマを堪能した観客からの力強い拍手で迎えられたバンジャマンは「みんなお元気ですか、上映を楽しんでもらえましたか?」と笑顔で挨拶。彼自身、この作品の撮影よりも前に、原作となったバルザックの小説を読んだことがあったといい、「この原作は、フランス人だったら、若い頃に読む小説なんです。僕も高校生くらいに読んだんですけど、その当時は小説を味わえるほどに成熟していませんでした。でも、この小説は祖父が大好きだったもので、それを孫である僕の主演で映画化されるということになり、祖父が涙を浮かべて喜んでくれました。それは本当に感激しましたし、このようなすばらしい機会を与えてくれた監督に感謝します」と謝辞を述べた。

 豪華キャストの共演が話題となっている本作、共演者とのエピソードを尋ねられるひと幕も。「ジェラールは、撮影初日の朝7時にスクーターに乗ってやってきて。みんなにワインと、骨付きの大きな肉を振る舞ってくれた。ジェラール・ドパルデューならではという感じでしたね。でもいざ本番となると完璧にセリフが頭に入っていて。その様子を目の当たりにできるというのは本当に贅沢な時間だった。彼の目を見ていると、撮影現場で彼がどれだけのことを経験してきたのか、思い知らされるようでした」と振り返る。

 さらに共演者のヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・ドランについては「彼らは年代的に近い俳優なので、思い出も多いですね。次はいつ現場で一緒になるかなと楽しみにしていたんです」とコメント。さらにドランについては「彼は、カンヌに監督として何度も出品している世界的な映画スターだけど、俳優としてはそれほど経験があるわけではなかった。そういう彼の姿を見るのは新鮮ですばらしかった」と語る。

 そして「セシル・ド・フランスさんの大ファンなので、彼女の出演作を観られてうれしい」と熱っぽく語った観客のコメントには、「僕もあなたと同じ気持ちです」と笑顔を見せたバンジャマン。「彼女は本当にすばらしい女優。僕自身、あの集中力の高さは見習いたいと思っています。撮影現場では、照明を準備するのに本当に時間がかかる。本来ならスタンドインという代役の人で光のチェックをするもので、俳優はそこにいなくてもいいわけですが、彼女はどういうふうにカメラの光が作られるのか見てみたいと言い、控え室に戻らなかったこともありました。それは本当にプロフェッショナルで素晴らしいことだと思いました」と感服した様子を見せた。さらにジャンヌ・バリバールについては、「彼女から2日目くらいに『あなた、お願いだから100%完璧に演じきるのはやめてくれない? 観客にも想像する余地を残してくれない?』と言われたことがあって。それは僕自身、参考になりましたね」と付け加えた。

 本作はフランスで権威ある映画賞として知られるセザール賞の7部門を獲得。「その時はどんな心境になった?」と質問されると、「この作品はセザール賞にたくさんノミネートされていたんですが、僕は欲張りなので、すべてのカテゴリーで受賞するといいなと思っていました。結果的に最優秀作品賞を含む7冠を獲得することになったわけですが、このチームが評価されたということでうれしかったですね」とコメント。「これをきっかけに、これまで組んだことのない監督にも興味を持ってもらえたらいいですよね」と笑顔で付け加えた。

 初めて訪れた日本で大きな歓迎を受けたバンジャマン。『Summer of 85』につづき『幻滅』の公開で更に日本でのファンを増やすに違いない。ぜひ、2023年の公開にご期待を。

登壇者:バンジャマン・ヴォワザン

公開表記

 配給:ハーク
 2023年 全国公開!

(オフィシャル素材提供)

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