インタビュー

『レッドシューズ』主演・朝比奈彩 オフィシャル・インタビュー

撮影:田村 充

自分の感じたことを大事にしながら、演じさせていただきました

 崖っぷちのシングルマザーが、最愛の娘のために、リングに立つ!母と子の絆の物語『レッドシューズ』の全国公開を前に、本作が映画初主演となった朝比奈彩のオフィシャル・インタビューが届いた。『ケイコ 目を澄ませて』のボクシング・トレーナーから指導を受け、『今際の国のアリス』で得たアクションの基盤を存分に発揮した映画初主演作に込めた思いを語った。

朝比奈彩

 1993年10月6日、兵庫県出身。2017年、「東京アリス」(Amazonプライム)で女優デビュー。続いて、「チア☆ダン」(18/TBS)、「大阪環状線 Part3 ひと駅ごとのスマイル」(18/KTV)、「やれたかも委員会」(18/TBS)、「ランウェイ24」(19/EX)、「今際の国のアリス」(20/Netflix)など出演。映画では『ぐらんぶる』(20/英勉監督)、『そして、バトンは渡された』(21/前田哲監督)に出演。モデルとしても活躍、「Oggi」の専属モデルを務める。

女性ボクサーであり、シングル・マザーでもある真名美の思いや闘いを、どのように受けとめましたか?

 ボクシングはもちろん、子どもを産んで育てた経験もないので、最初にお話をいただいたときは正直戸惑いもあったんです。でも同世代の女性やシングル・マザーに向けて力を与える作品にしたいという監督の話を聞いて、自分がその力になれるのであれば、ぜひ一緒にやりたいですとお返事しました。それでも経験していないことがたくさんあったので、やっぱり難しかったですね。
 母親を演じるにあたっては、この仕事をする前に産婦人科の助手として2年間ぐらい働いていたので、そのときに目にした母親と子どもにまつわるやり取りを思い出したり、自分の感じたことを大事にしながら、演じさせていただきました。

©映画レッドシューズ製作委員会
初めてボクシングに挑戦してみていかがでしたか?

 もともとキック・ボクシングをやっていて、ボクシングも同じ格闘技ですし、そこまで大きな違いはないのではないかと思って始めたんです。でもいざやってみると、全く違う競技であることを、体を動かしながら身にしみて感じました。なので立ち方、頭の振り方、ステップの踏み方といった基礎練習をゼロから始めました。逆にキック・ボクシングの癖が体についていたことで、対戦相手と対峙するとつい足が出てしまったりもしたので、ボクシングのベースを体に染み込ませるまでに時間がかかりました。
 それを一年間やってきて、ボクシング指導の(映画『ケイコ 目を澄ませて』に出演のボクシング・トレーナー、本作にも出演の)松浦慎一郎さんに「これならプロ・テストを受けたら受かるよ」と言ってもらえたときには、そこまでちゃんと仕上げてこられたということが、自分の中でも自信につながりました。

撮影:田村 充
具体的にはどんなトレーニングをしたのでしょうか。

 基礎練習、テクニックの練習、相手を決めて型を作っての練習、カメラワークに合わせた動き方の練習、という4段階に分けて仕上げていきました。
 この映画の撮影前に、『今際の国のアリス』で空手の達人を演じていたのですが、そのときにアクションの基礎を教えていただいたので、その上で本作に取り組むことができたのは大きかったです。『今際の国のアリス』のシーズン1は、アクションのノウハウや知識がまったくない状態からスタートしたので大変だったんですけど、今回はその経験を生かすことができてよかったなと思っています。

トレーナーの谷川役の市原隼人さんもボクシング経験者でしたね。

 一言で表すと「熱い方」です。ボクシングの経験があるからこそ、いろいろとアドバイスをいただいて、カメラの中でも外でも市原さんが隣でずっとサポートしてくださったからこそ、最後まで走り抜けられたなと感じます。撮影の合間にも、自分からミットを持って「練習しよう」と誘ってくださって。ミットを持ってくださる方が変わるだけで、打ち方も変わってくるんです。後輩である私から練習をお願いするのはなかなか難しかったんですけど、市原さんから声をかけてくださって、一緒に練習に時間を当ててくださったのは、本当にありがたかったです。

©映画レッドシューズ製作委員会
佐々木希さんの演じる由佳とはシスターフッドのような関係性でもありました。

 すごく印象に残っているのは、真名美が部屋に帰ってきて、崩れ落ちて、泣き叫ぶシーンです。テイクを多く重ねたのですが、一回目も二回目も涙が全く出なくて。台本を読んだときから、あのシーンに思い入れがあったからこそ、ちゃんと自分が思い描いた通りに演じたいという気持ちが強かったんですけど、なかなかそれが上手くいかなかったんです。でも監督が「完璧にしようとしなくていいんじゃない?」と言ってくださって、じゃあ何も考えずに自分が今感じたままをやってみますとやってみたときに、あのシーンが出来上がりました。真名美が感情を出し尽くした後に、由佳と抱き合うくだりは、もともとト書きになかったんです。でも希ちゃんがあの瞬間に感じた感情のまま、抱き締めてくれた。そのおかげで、本当に由佳と真名美の関係性が見える素敵なシーンになったと思います。

©映画レッドシューズ製作委員会
あのシーンには、真名美としてだけでなく、個人的にも感情移入するものがあったのでしょうか。

 あそこで「エミを産まなきゃよかった」というセリフがあるんです。たとえ本心ではそう思っていなかったとしても、母親としてその言葉を口にせざるを得ないほど追い詰められた状態というのは、どういう心情なんだろうと。自分の感情がコップいっぱいに溢れそうになった瞬間に、どういうふうにその言葉を発するんだろうと、台本を読んでいてすごく感じたので、大事にしたいと思っていました。不器用ながらもずっと真っ直ぐに突き進もうとしてきた真名美が、初めて弱音を吐くシーンだったので、その姿をちゃんと見せてあげたいなという気持ちがありました。

義母の葉子役の松下由樹さんとの共演はいかがでしたか?

 松下さんはクランクインした瞬間からお義母さんでした。立ち居振る舞い、目の動かし方、いつどのタイミングでもすべてがそうとしか見えなくて。真名美からすると、仲良くしたい気持ちはあるけれど、エミの親権を得るために闘わなくてはいけない相手なので、撮影中は間にバトルがある関係性を常に保ちながらお互いに演じていた気がします。撮影が終わってから、舞台挨拶などで優しい笑顔を目にすると、こんなにも違うんだ!と役者としての凄さに衝撃を受けました。私は「ナースのお仕事」を見て育ったので、松下さんと観月ありささんが同じ作品にいる、ということに感動していました(笑)。

©映画レッドシューズ製作委員会
北九州市で撮影しながら、真名美の生きている町の空気感を、どのように感じましたか?

 個人的には、若戸大橋と、めかりの展望台が特に好きでした。若戸大橋は、夕陽が落ちる前にその傍らでシャドー・ボクシングをしたり、職がなくなったタイミングで行ったり、真名美にとっていろいろな思い入れのある場所で、その景色を見ながら気持ちを保っていたような気もするんです。展望台は真名美が葉子に「世界チャンピオンになります」と宣言する場所なので、印象に残っていますね。

この映画を通して、主演としてどんな思いを届けたいですか?

 闘って、つまづいたとしても、また闘って。人生はその繰り返しなので、真名美が何度も立ち上がる姿を見て、少しでも前向きになって、次の日にもう少し頑張ってみようかなと思ってもらえるように、届けられたらいいなと思います。

撮影:田村 充

公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 2月17日(金)より福山駅前シネマモードにて先行公開、
 2月24日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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