インタビュー

『緑のざわめき』夏都愛未(監督・脚本)オフィシャル・インタビュー

©Saga Saga Film Partners

 第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に正式出品された、福岡、佐賀を舞台に、3人の異母姉妹が織りなす物語を描いた『緑のざわめき』。この度、監督・脚本の夏都愛未監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

監督・脚本:夏都愛未

 1991年5月1日生まれ、神奈川県出身。
 2014年に『3泊4日、5時の鐘』(15/三澤拓哉監督)で女優デビュー。2018年に山戸結希企画プロデュース作品『21世紀の女の子』の中の短篇『珊瑚樹』で監督デビュー。長編初監督長編『浜辺のゲーム』(2019、日本=タイ=マレーシア=韓国)では、監督・脚本・編集を担当し、第14回大阪アジアン映画祭コンペティション部門に正式出品された他、ニューヨークジャパンカッツ、カンボジア国際映画祭、アートフィルムフェスティバル(スロバキア)に選出された。2022年に公開された映画『あなたの微笑み』(リム・カーワイ監督)に出演。

脚本を読んだ時の感想はいかがでしたか?

 ちょっと人間模様が複雑なお話だなと思ったんですけれど、夏都監督に、「人と人との関わりの物語であって、ファミリー・ツリーだったり葉っぱの葉脈のイメージがこの作品にはあって、関わり方・ありようが木々の葉みたいにいろいろなところにあるけれども繋がっている、それが3姉妹の繋がりにも影響してくる」というお話を聞いた時に、自分の中でも腑に落ちるところがありました。
 実は最初に頂いた脚本が、4時間分ぐらいの、『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな、読めども読めども終わらない超大作だったんです。けれど、ある意味削ぎ落としていない監督が一番やりたいことを先に提示していただいたお蔭で、映画では描かれていないそれぞれのキャラクターのバックボーンを事前に知ることができました。役の情報が全て織り込まれていたのですが、その中でも監督が特に描きたくて表現したい部分が今の脚本になって作品になりました。最初の稿は、ほぼ資料でした(笑)。

異母姉妹についての映画を撮りたいと思った理由を教えてください。

 女性の連帯を描きたいとすごく思っていて、中上健次など文学に影響されたこともあって三姉妹にしたいと思っていました。「血が半分繋がっているのに、何かの圧で離れ離れになってしまっている人たちがまた一つになる」というのを描きたくて、異母姉妹にしました。私たちはつい血縁に捉われがちですが、血の繋がりを超えて魂の部分で姉妹になる様子も同時に描きたかったんです。

ご自身の経験を反映している役はありますか?

 私の経験を直接反映している役はないです。特にお茶汲みしろと言われたこともないんですけれど、周りの友達が言われたことを客観的に脚本に落とし込むことで、日常に蔓延っている性的役割分担・差別を淡々と描けると思いました。

英題の由来は?

 佐賀、伝説のサーガ、性が合わさって展開していく映画なので、英題は“SAGA SAGA”になりました。

 葉脈の存在は、この脚本の一番の根本にあると思っています。実は最初は三姉妹ではなく、二人の話で、女子会とストーカーの話でした。佐賀で撮るとなって、構想を練って、杏奈が葉脈の栞を持っているというイメージから物語を展開していきました。佐賀の景色を見て、大江健三郎や中上健次の文学が頭に浮かんできて、そこに葉脈という要素が浮かんだ形です。

松井玲奈さんと岡崎紗絵さんと倉島颯良さんのキャスティング理由を教えてください。

 松井さんは、女優なんですけれど、文学者でもあって、縛られていない面白い人だなと思っていました。いろいろなことをやっているのにブレていなくて芯が通っていて、ちょっと寂しげなんですよね。それが響子に合っていると思いました。
 岡崎さんは、ドラマとかでよく拝見していて、お芝居・声の使い方が面白いと思っていました。ちょっと影がある方なんです。そこにすごく惹かれました。
 倉島さんは、『21世紀の女の子』で私の短編に主演していただいたんですが、オーディションで真っ直ぐ前を向いてしゃべっていて、真面目な人という印象を受けたんです。一生懸命だったから印象に残っていました。明るくて、目も大きいんですけれど、翳りがあって、倉島さんも影の部分に惹かれてキャスティングさせていただいています。

イン前にそれぞれにどのような話をしましたか?

 それぞれの誕生日などの生い立ちや性格だとか学歴だとかを書いた履歴書を書いてお渡しした位です。脚本を読んで各々の役について考えてきてくださったので、あまり話はしていないです。

松井玲奈さんと実際にご一緒していかがでしたか?

 松井さんは、自分のプランはあるけれど、「この時こういう気持ちでいて大丈夫なのか」など確認してくださり、一緒に作っていくという感じがあってすごく嬉しかったです。

岡崎紗絵さんとはご一緒していかがでしたか?

 菜穂子が響子にお父さんの話を振る時とかも、どういう気持ちで振ればいいのかなど、ひとつひとつの心の動きを丁寧に考えてくれましたし、すごく脚本を読み込んでいる深い方でした。

倉島颯良さんとご一緒していかがでしたか?

 「杏奈と私はすごく似ている」と言っていました。半分当て書きだったので、前ご一緒した時よりも役と倉島さんの距離がすごく詰められているように感じました。

草川直弥さんとご一緒していかがでしたか?

 お話をしたら、すごくピュアで真っ直ぐで、嘘がつけない人なんだろうなという印象を受けました。すごく心の綺麗な人でした。

カトウシンスケさん演じる長老・コガ爺のモデルはいますか?

 私が影響を受けた文学の中にも村の翁と言うか、村の長みたいな人が出てくるんですけれど、私が住む熊本の田舎でもマッサージ師の人が住んでいて、心を病んだ人を治療したりするんです。長老は最初は「治療師」という役名だったんですけれど、それがコガ爺になりました。大江健三郎の作品の登場人物は役名が面白くて、カタカナと組み合わせている名前が多くて、そういうリズムにも影響されています。
 長老は、もうちょっとおじいさんを想定していたのですけれど、カトウさんだったら長老になれるとすごく思って、年配の方を演出するよりカトウさんにお願いしたいと思いました。

本作の見どころはどこだと思いますか?

 いろいろな人がいろいろな想いで生きて感情が交差していく構成や、三姉妹それぞれの感情の行方が見どころです。

読者にメッセージをお願いします。

 佐賀の風景や自然の中で、それぞれの一線を越えようと姉妹たちが一歩踏み出すところを見て欲しいと思います。
 本作は、女性が連帯していく、横の繋がりを作っていくというのが大きなテーマになっています。世の中、性差によって障壁が生まれがちだから、そういう世の中をみんなで乗り越えていきたいです。この映画が何かそういうアクションのきっかけになったらいいなと思います。

公開表記

 配給:S・D・P
 9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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