インタビュー

『僕の名前はルシアン』大山千賀子監督 オフィシャル・インタビュー

©「僕の名前はルシアン」製作委員会

 「Vogue」などのファッション誌を中心に活躍し、資生堂の企業文化誌「花椿」に掲載された犬の未発表写真が第35回朝日広告賞でグランプリを受賞した写真家で映像作家の大山千賀子が、実際にあった事件にインスピレーションを得て描いたオリジナル・ストーリー『僕の名前はルシアン』は、自殺願望を抱えた若者たちが同じ願望を共有するサイトで知り合うところから始まるミステリー。
 この度、渋谷・ユーロスペースにて、9月29日(金)~10月12日(木)に連日18:30より公開されるのを前に、大山千賀子監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

監督・脚本:大山千賀子

 奈良県吉野郡生まれ東京藝術大学美術学部大学院研究科を経てロンドン大学ゴールドスミス校で映画術を学ぶ。
 【フィルモグラフィー】短編映画「霊柩車の男」はShortshortsFilmFestival&Asia、NY Indeoendent FilmFestival、HuescaInternational Film Festival(Spain)、サンパウロ国際映画祭短編映画部門に正式出品短編映画、「Last Ecstasy」満島ひかり主演はShortshorts Film Festival&Asia、札幌国際短編映画祭、NY Indipendent FilmFestival ,WTOs lnternational Film Festival(Norway)、Athens International Short Film Festival(Greece)に正式出品、短編映画「異邦人」がある。『僕の名前はルシアン』はアジアン映画祭正式出品、MED Film Festivalにおいて観客賞を受賞。その他の受賞に「朝日広告賞」「NY Clio賞」「APA賞」「キリンコンテンポラリーアワード」などがある。

監督の来歴をお教えください。

 20代でロンドンに行った時ですが、(高校でダンス部だったこともあり)まずコベントガーデンバレエ学校にでマト・マトックスという先生のクラスに入りました。バレエ学校には掲示板があり、さまざまな情報がいつも貼られていました。ある日その中にモデル募集があったので、応募したら運よく合格しました。そして男性ダンサーに抱えられている写真がVOGUE LONDONに載ったんです。その後もバレエをしながら次々といろいろなモデルの仕事をしました。日本航空のモデルやクラーク・シューズなど。そのうちいろいろなフォトグラファーと知り合って、手伝っているうちに、フォトグラファーになりたいと思いました。私にとってロンドンはこの上なくエキサイティングなところでした。
ロンドンのモデルたちとテスト撮影した写真が日本の雑誌「コマーシャルフォト」や「流行通信」に掲載され、ロンドンでは「VOGUE」や「NINETEEN」の表紙も飾ることができました。「レナウン」「ユニチカ」さんらがロンドンまで来てくださって撮影をしたり、ロンドンの新聞のデイリーニューズやデイリー・ミラーなどのファッションの撮影をしたりしました。
 東京からのオファーも増えてきたので一時帰国のつもりで東京へ戻りましたが、思いの外たくさんのお仕事をいただき、そのまま居座ることになってしまったのです。
 動くイメージの撮影を始めたのは、インターゴールドのCMだったと思います。その仕事が好評だったこともあり、その後はAOIや東北新社からも仕事が来て、資生堂やトヨタなどのキャンペーンの撮影もこなしました。その後、写真を原点から考え直したくて東京藝大に入学しました。養老孟司先生のゼミをとっていたのもその頃です。アートとしての写真や現代美術が面白くなって、「残像の中で聞く現代音楽」という作品シリーズをしばらくやりました。その時はCMとは全く関係のない写真をインドに撮影に行ったり、マレーシアのジャングルで虫の声を録音したりと今までの世界とは全く異なる領域に身を置いていました。それらの作品展はロンドンではICA、パリでは日本芸術会館や清水寺、東京都写真美術館でも行い好評だったと思います。それからしばらくしてロンドン大学ゴールドスミス校に行き、本格的に映像の勉強をしました。

「今生きている自分と今起こっている現象を作品にしたい」と制作活動をしているとのことですが、本作で描きたいと思ったのはどういうことですか?

 まず、念頭にあったのが日本は自殺国ということでしょうか。切腹という歴史も多少は影響しているのか、仏教という宗教からきているのかまだ自分には定かではありませんが、日本では他国に比べ、多くの人が自殺という死に方をするという記事が段々と目に入ってきて、オリジナル・ストーリーの映画を創作することを考え始めました。

ルシアン役を演じた栁俊太郎さんとの出会いをお教えください。

 ルシアン役は、若い男性に演じてもらいたいと思い、若い男の子を探し、東京中のプロダクションを回りましたが、イメージに合う俳優が何ヵ月も見つからず困っているときに、栁君が現れました。彼を一目見た瞬間に、「彼だ!」と思ってお願いしました。

ライフワークとして「裸体」への取り組みがあるそうですが、本作ではどのように取り組みましたか?

 裸体にこだわる理由は、「裸体、これしか私たちは持っていない」からです。若い頃から裸にはこだわっていまして「自画像」という裸の写真集も出版しています。今後も何か作品を撮る時には人間の裸を入れたいと思っています。それほど裸は私にとって大切なものなのです。そして安心できるビジュアルでもあると思っています。裸は雄弁です。本作では、「自分の欲望を遂げるためには自分も女も裸になる」という設定にしました。

水中撮影にもこだわり、6mの深さのタンクを求めて、イギリスのエセックスで撮影を敢行したそうですが、イギリスでの撮影はいかがでしたか?

 ヘアメイクはクレア・ウィリアムズという方がやってくださったのですが、自分でも潜って血液の濃さなどを研究されました。彼女のメイクアップ・アーティストとしてのこだわりには感銘を受けました。またプロのダイバーが2名水の底に待機しており、俳優が苦しいと合図を出すと、すぐさま酸素を与えに行くというやり方になっていました。

本作の見どころはどこだと思いますか?

 栁が演じるサイコパスと女との接点です。あと、スマホを神格化している若者たち、宗教に凝っている母親、家庭をかえりみない夫など、現代社会をベースに描いています。人はみなエキサイティングな人生を望んでいるかもしれないですけれど、「幸せは退屈なものでもあり、凡々としたものだ」というテーマも描きたく、登場人物は劇中一度はあくびをするというルールも作りました。

渋谷のユーロスペースでの上映へのこだわりをお教えください。

 昔『ゆきゆきて、神軍』という映画を観に行ってからユーロスペースがすごく好きになって、この映画は絶対ユーロスペースでやりたいと最初から希望していました。ユーロスペースは作品選びにこだわる映画館なので、はじめて監督した長編映画を上映していただけることになって、本当に心から嬉しいです。

読者にメッセージをお願いします。

 恋人たちのような「愛」を表現するのではなく、「一瞬の愛」を表現してみました。しかし、現実的には一瞬の想いで突き進んでいってもいいのか? 矛盾していますが、それについて考える機会になればと思います。
 本作では、音にすごくこだわっていまして、冨田和彦さんという(『万引き家族』『怪物』などの)日本で5本の指に入る方にナレーションやアフレコの録音をお願いしました。ぜひ映画館で美しい映像と共にご覧いただければと思います。

公開表記

 配給:Tokyomuse Films
 9月29日(金)~10月12日(木) 渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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