イベント・舞台挨拶

映画『月』公開記念舞台挨拶

©2023『月』製作委員会

 映画『月』の公開記念舞台挨拶が都内で行われ、舞台挨拶に宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョーと石井裕也監督が登壇してクロストークを繰り広げた。

 本作は、実際に起きた障害者殺傷事件をモチーフにした辺見 庸の小説「月」を、『茜色に焼かれる』(21)などの石井監督が映画化した。重度障害者施設が舞台。元・作家の堂島洋子(宮沢)が、職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする……。社会や個人が “見て見ぬふり”をしてきた現実を捉えた作品。

 宮沢は、出演を決めるまでの経緯について聞かれると、「映画化されると知って、(出演するのが)怖いと思いました。でも最初に(エグゼクティブプロデューサー、企画の)河村光庸さん(撮影直前に亡くなっている)からこの映画についての熱意をうかがうことができました。殺伐としたこの今の世の中、地球上にいろいろなことが起きています。生きていくために保身してしまう自分に対して、もどかしさがありました。この作品を通して、そのもどかしさを乗り越えたいという気持ちが強く湧きました。内容的に賛否両論のある作品になるだろうなとは思いましたが、ここから逃げたくないという気持ちで参加しました。河村さんの魂を受け継ぎたいと思いましたし、背中を押され続けて、演じ切ることができたなと思っています」と真摯な表情で語った。

 石井監督も、「この作品に出てくる施設の闇はあらゆる闇につながっていると思います。この事件にかなり近い本質を見つけることが出できて、そういうものをとらえに行くつもりで演出しました」とただならぬ覚悟で撮影に挑んだことを明かした。
 また、石井監督は「なんらかの理由で告発できない、声が上げられない、閉鎖された空間でいろいろなことが起こり、それに対して隠ぺいするというのは、障害者施設だけの話ではない。むしろ、僕たちが暮らしている身近なところでの世界の話。自分たちの人生にもつながってくる話。そこを意識して脚本を書きました」と報告した。

 世の中の理不尽に憤っている青年・さとくん役を演じた磯村は「直感的に参加しないとダメだ思いました。覚悟を持つまでに時間が掛かりましたが、それだけエネルギーのある作品と役でした。監督とも慎重に話し合って臨みました」と力強く話した。

 さとくん(磯村)と同じ施設で働く陽子役を演じた二階堂は「一番怖いのは、知ってはいるけど関心が薄れていってしまうことだと思います。ここの社会を生きる当事者として、作品に参加して考えたいと思いました」とコメントした。

 洋子(宮沢)の夫・昌平役を演じたオダギリは「映画にはいろいろなタイプのものがある。この作品のような重いものを受け止めることも大事だと思う。僕は世に問うような映画のほうが興味があります。石井監督がこのテーマに挑戦するなら、乗らないわけにはいかないと感じました」と思いを伝えた。

 また、完成試写を観たオダギリは「試写を観たあと、誰かとこの作品について話し合いたい気持ちになれなかった。感情が先に立って、言語化が難しかった。受け止めるまでに時間がかかったなという感想です」と話し、監督にも会わずに試写室を離れたことを明かしていた。

 今作では実際に障害を抱える人々もキャスティングされている。その理由について石井監督は「この映画を作るにあたって、できる限りの取材をしました。障害を抱える人たちに生きていることの不思議さや素晴らしさを強烈に感じました。それは俳優の芝居では出ないものだと思ったし、それを無しにこの映画は成り立たなかったと思います」と説明した。

 映画を観た感想を尋ねられた宮沢は「石井さんが真剣に向き合って書いた台本は、一度読んだだけでスッと理解できるものではありませんでした。現場では『洋子には葛藤や不安がある。彼女の情緒を乱して演じてほしい』と言われました。試写を観ながら、当時もがいていた自分を思い出しました」と話した。

 また、作品について「生きていくなかで見たくないものとか、聞きたくないこととか、触れたくないものがゴロゴロあって。そのフタを開けるということはすごく勇気やエネルギーがいることだし、そのフタを開けて、中にあるものと向き合ったとき、決してポジティブなものではないかもしれないけれど、そうした中から考えるきっかけ、話し合うきっかけになるような映画ではあってほしいですし、皆さんの記憶にベッタリこびりつく作品として広がっていってほしい」と思いを伝えた。

 石井監督は「覚悟が違うんです。こんな苦しい舞台挨拶も初めてです。出演者の覚悟もあるし、スタッフ一人ひとりが真摯に向き合い、みんなで作り上げた映画なので熱気が違う。誰も手を出していないところに踏み込んでいったので、結果的にまったく新しい映画になったという自負があります。いろいろな反応・意見が出ると思いますが、強烈な表現ができたという手応えを噛み締めています」と力強くメッセージを伝えた。

 登壇者:宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョー、石井裕也監督

 (取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:スターサンズ
 全国公開中

(オフィシャル素材提供)

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