イベント・舞台挨拶

『弟は僕のヒーロー』公開記念トークイベント付き試写会

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 来年1月12日(金)より公開する『弟は僕のヒーロー』の日本公開を記念して、映画の主人公である「ダウン症のある弟がいる兄ジャック」のモデルとなった原作者で脚本家のジャコモ・マッツァリオールさん(以下ジャコモさん)がイタリアから来日し、「ダウン症のイケメン」としてテレビや新聞、雑誌、映画、ドラマなど数々のメディアで活躍しているあべけん太さん(以下けん太さん)と、けん太さんの実兄であり、兄弟で全国各地をまわり、ダウン症の啓発活動をしている安部俊和さん(以下俊和さん)と12月21日(木)、プレミア試写会後にトークショーを行った。
 本作の魅力を掘り下げながら、国境を超えて同じ境遇の彼らが、兄弟ならではの視点でダウン症の苦労と喜びを語り、ケアが必要な家族との生活や気持ちの変化について語った。

 満席の客席を見て「映画をご覧いただきありがとうございました。感動で胸がいっぱいです。日本に来ることができて、素敵なクリスマス・プレゼントを頂いた気持ちです」と挨拶をしたジャコモさん。

 続いてゲストのけん太さんが「皆さん、こんにちは! ダウン症のイケメンあべけん太です」と元気に自己紹介。兄である俊和さんも「今日はよろしくお願いいたします」と挨拶をした。

ダウン症のジョーが頑張っている姿に共感

 けん太さんが「感動しました。(ダウン症の)ジョーが一生懸命に、頑張っている姿に泣きました」と涙声で本作の感想を語ると、俊和さんも「弟と一緒に観ました。共感する部分が多かったです。弟が産まれたシーンはまったくうちと同じで、僕は姉と産婦人科に行って、母が泣いていたのが印象に残っています。まだ6歳だったんですが、嬉しい日なのになんで泣いているんだろうと思ったのを覚えています」との感想を語った。

けん太さん&俊和さんの仲睦まじい姿に映画続編制作の提案も

 「好きなシーンは、ジョーくんがピアノを弾いているところです」とけん太さんが話すと、ジャコモさんが「音楽は言葉を超える。ジョーが楽譜を見ないで弾き始めるシーンが僕も好きです。難しいことだけど、社会の規範から飛び出し“自由になれる”ってことを弟から学びました」と話すと、俊和さんが「けん太もよく“自由だ!”って言ってるよね(笑)。けん太は3年前から一人暮らしを始めたんです。当初、家族はすごく心配していたんですが、けん太自身は能天気に“やったー! 厳しい父ちゃんから逃れられる”って喜んでいて。駅前で“俺は自由だぁ〜!”って叫んでましたよ。社会と共存するために父親はいつもけん太に“早くしろ!”って言っていたので、自分のペースで全てができるって喜んでいて」とエピソードを披露すると、ジャコモさんが「けん太さんの一人暮らしが、この映画の続編になるね。主人公の兄ジャックが恥ずかしいという気持ちから解放されて、弟を自由に愛そうというところで映画は終わっているけど、その後も生活は続いているから。お二人の姿はまるで“嬉しい未来”を見ている感じです」と提案すると、けん太さんが「(映画の続編)やっちゃいましょう。ダウン症のことをもっと知って欲しいので、(映画が完成したら)映画館で観て欲しいです」と提案に乗り気だった。

ダウン症は体質みたいなもの。ポジティブなマインドの秘訣を語る

 またジャコモさんがダウン症の弟ジョヴァンニさんを主演にしたショートムービー『ザ・シンプル・インタビュー』を制作してYouTubeで公開したところ、再生回数60万回を超えて話題となり、それがイタリアの大手出版社の目に留まり、映画の原作である小説『弟は僕のヒーロー』を執筆した経緯について尋ねると、「そもそものきっかけは弟と何か楽しみたくて、YouTubeを作りました。ダウン症について世間の目をちょっと変えたかった。彼らの晴らしさとか能力とかに注目して欲しかった。個人的にはあの動画で人生が一変しました。小説を書きながら心に仕舞い込んでいた暗い部分を突っつかなくてはいけなかったけど、結果的にはよかったです。社会に差別があるってことだけじゃなくて、自分の中にも弟を恥ずかしいと思っている気持ちがあり、それを変えれば新しい世界が広がると再認識することができました」と語ると、俊和さんは「けん太と歩む人生はむちゃくちゃ楽しいです。いまはこんなに明るく元気ですが、成長がゆっくりなので、父も母も言語療法士のところに通ったり、運動教室に通ったり一生懸命でした。3歳まで歩けなかったし、5歳まで話せなかった。今のけん太の姿をみて勇気や希望になれるのも嬉しいですが、できなかった時の話もしたい。そして、いまこんなに我々はハッピーに生きていることをYouTubeの『けん太チャンネル』で発信したいです。母が泣いたのは、知らないでびっくりして泣いたんだと思うんです。父と母はダウン症は体質みたいなものだと思おうと決め、“背が高い人も、低い人もいる”“太っている人も痩せてる人もいる”それと同じだと。ちょっと腹が出てる人もいるよね?」とけん太さんのお腹を指差すと「ちょっと食べ盛りなんで(笑)」とジョークを飛ばし、「みんな違ってみんないいってよく言ってるよね」と俊和さんが聞くと「当たり前です」とけん太さん。

 「けん太は運転免許証を持っているんです。20歳のときに兄も姉も持ってるのに、なぜ自分だけ取らせてくれないの?と父と母に言って。その時はまだ(ダウン症で)日本で取得した人はいなかったみたいで、警察に尋ねたら基準をクリアすれば大丈夫とのことっだったので、挑戦し始めました。教習所は6ヵ月ぐらいで卒業できたんですが、学科試験は54回落ちて、55回目で受かりました。けん太は頑張ってポジティブなマインドを手に入れて、その頃から自己肯定感が生まれたのかなと。昔はこんなに明るくなかったけど、何かに挑戦して達成感が生まれて明るくなったと思っています」と称賛すると、けん太さんも「努力してます」と笑顔で語った。そしてジャコモさんが「ふたりの関係性は素敵ですね。僕も限界や挑戦についてよく考えます。リミットを超えて、超えて、今のけん太さんがいる。もちろんジョヴァンニにも限界もありますが、考えてみれば、自分だって、誰だって、限界や超えられないことはあると思います。それを超えられるようにお互いに助けあっていくというのが、歩むべき道だと思います」と語った。

 ダウン症のことで一番伝えたいメッセージを聞かれると「小説や映画を通じてみんなの考えるヒントになってほしい。障がいがある人に向ける言葉や態度、過剰なまでに憐れむなどについて、あれ?と思うきっかけになればと思います。多様性というのが流行ってますが、多様性にも多様性があるということを知ってほしい。人間ってフルーツポンチみたいに、ごちゃ混ぜなのが現実だと思う」とジャコモさんが語ると、「たとえばLGBTの人に生産性がないとか言うけど、ダウン症もLGBTもみんな違ってみんないい。差別はやめてください!」とけん太くんが言うと拍手が湧きおこった。

 最後に観客に向けて、ジョー役のモデルとなったジャコモさんの弟ジョヴァンニさんから動画メッセージがサプライズで届き、会場を沸かせた。

 登壇者:ジャコモ・マッツァリオール、あべけん太、安部俊和

公開表記

 配給:ミモザフィルムズ
 1月12日(金)よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、 アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー!

(オフィシャル素材提供)

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