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「第2回新潟国際アニメーション映画祭」【クロージングセレモニー】大川博賞・蕗谷虹児賞 授賞式

 3月15日より、第2回新潟国際アニメーション映画祭が開幕した。昨年3月の第1回映画祭より、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、日本のみならず世界へも発信される映画祭。
 映画祭最終日となる3月20日(水・祝)、クロージングセレモニーが行われ、大川博賞・蕗谷虹賞の授賞式、並びに【長編コンペティション】の各賞が発表され、グランプリは『アダムが変わるとき』が見事受賞した。また、傾奇(かぶく)賞に『アリスとテレスのまぼろし工場』、境界賞に『マーズ・エクスプレス』、奨励賞に『インベンダー』が選ばれた。

【クロージングセレモニー】大川博賞・蕗谷虹児賞 授賞式

 クロージングセレモニーで挨拶したゼネラル・プロデューサー・真木太郎は「1回目から比べて倍くらいの賑わい、お客さまの数を感じて、映画祭らしくなってきたなと思っています」と挨拶。「それはアニメーションの力と言いますか、共感力、求心力みたいなものがこの映画祭を支えてくれているんだと思います」と実感を述べた。

 優れたアニメーションの制作スタジオに贈られる大川 博賞を受賞したのは『映画大好きポンポさん』を制作したCLAP。プレゼンターには大川博東京映画配給初代社長の孫にあたる大川 裕氏が登壇した。

 また、優れたアニメーションの技術スタッフに贈られる蕗谷虹児賞を受賞したのは、東地和生氏(美術監督)、本田 雄氏(作画監督)、丸尾みほ氏(脚本)の3名。プレゼンターには新潟県議会議長の楡井辰雄氏が登壇した。

 長編コンペティション部門の今年のグランプリは『アダムが変わるとき』が受賞。傾奇賞には『アリスとテレスのまぼろし工場』、境界賞に『マーズ・エクスプレス』、奨励賞に『インベンダー』が選ばれた。グランプリを受賞したジョエル・ヴォードロイユ監督の本作は延べ20人、レギュラー・スタッフは8人ほどという少数精鋭での制作体制だったこともあり、受賞が発表されるとスタッフと共に登壇。同じコンペティションに参加した監督やスタッフたちからもお祝いの声が飛び、ヴォードロイユ監督は涙を流しながら喜びを爆発させた。

ノ ラ・トゥーミー審査員長は総評にて「皆さんの作品はスクリーンの中から私たちの心を掴みました。アニメーションという、美しく世界的なアート・フォーム、芸術形態の制作に関わるものとしてとても誇りに感じています。皆さんの作品は、アニメーションの未来に希望をもたらすものです。皆さんの作品が上映され、観客と一緒に楽しむことは別格の体験です。さまざまなストーリー、文化、キャラクターたちが登場し、不思議な世界を冒険するものです。本当に素晴らしい映画をありがとうございます。次にどんなものが作られるか楽しみにしています」と語り、最後に井上伸一郎フェスティバル・ディレクターより感謝の言葉が述べられ、6日間に及ぶ映画祭は幕を閉じた。

各賞の贈賞理由・受賞コメントは下記の通り。

【大川 博賞】『映画大好きポンポさん』アニメーションスタジオ CLAP

©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/ 映画大好きポンポさん製作委員会

贈賞理由
 2016 年に設立されたCLAPは若いアニメーション・スタジオでありながら、この短い期間で制作・発表した2つの劇場長編『映画大好きポンポさん』(2021)、『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022)は国内外の映画祭で多くの賞を受賞し、高い評価を受けました。それはCLAPの志の高さとアニメーション制作の優れた技術力に支えられております。今後のさらなる活躍を期待し、今回、大川博賞として贈賞させていただきます。

受賞コメント
 大変光栄ですし、嬉しく思っております。CLAPというスタジオは映画制作を中心に作ることを決めて作った場所ですので、こういった場で評価いただけたことは励みになります。今も『映画大好きポンポさん』の監督の平尾監督と一緒に新作を作っておりますし、もう一本新しい監督と新しいものを作ろうとしております。CLAPという名前を知っている人も少ない気がしますので、もしよかったらこの機会で覚えていただいて、また映画館でお会いできたら嬉しいです。

【蕗谷虹児賞】東地和生(美術監督)

© 新見伏製鐵保存会

贈賞理由
 東地和生さんは長年、数々の作品でアニメーション美術に関わり優れた作品に関わってきました。『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018)では、情感豊かな美術表現で多くの注目を集めました。さらに『アリスとテレスのまぼろし工場』(2023)では輝くような映像がスクリーンから溢れだし、その高みに達しています。この素晴らしい美術を讃えて、贈賞させていただきます。

受賞コメント
 この度は映えある賞をいただき大変光栄に思います。当たり前の話ですが、背景美術というのはたくさんのスタッフがいて、オーケストラに例えると私は指揮者で、一人ひとりの演奏があってこそ初めて成立するものです。なので私の指揮のもとでたくさんの素晴らしい背景を描いてくれたスタッフに感謝すると共に、そういう作品に出合わせてくれたたくさんのスタッフに心より感謝申し上げます。『アリスとテレスのまぼろし工場』という作品は、光と影の表現、背景美術をやっている者ならみんな目指すものなんですけれども、さらに踏み込んだ表現として、キャラクターの影と背景の影を合わせるということに焦点を置いて制作いたしました。それが叶ったのも作画監督の石井百合子さんをはじめとするアニメーター・スタッフの力が寄り添ってくれたからこそ実現したものであり、背景だけでできるものではなかったと思っています。最後に、蕗谷虹児さんからのバトンを脈々とアニメーション・スタッフが受け継いでいくのを感じております。私の元にもそのバトンが回ってきているのを感じます。そのバトンを次の若い世代に渡す時がいずれ来ると思うんですけれども、手元にあるうちは全力でまた次の作品を作っていきたいと思います。

【蕗谷虹児賞】 本田 雄(作画監督)

© 2023 Studio Ghibli

贈賞理由
 世界から日本のアニメーションが高く評価される大きな理由のひとつに、手描アニメーションの素晴らしさがあります。それは一枚一枚描いていくアニメーターの技術と表現力に支えられています。本田 雄さんは、そうした日本のアニメーターを代表する存在として長年活躍、『千年女優』(2001)、『ヱヴァンゲリオン新劇場版:Q』など多くの素晴らしいアニメーションの動き、キャラクターを創造してきました。『君たちはどう生きるか』(2023)では、作画監督としてその表現を存分に発揮することでアニメーション文化に大きな貢献をしました。その功績を顕彰いたします。

受賞コメント
 本当に光栄に思います。この作品は足掛け7年ぐらいかかったもので、特に宮﨑さんも『これが最後だ』という覚悟のもとできたアニメーション映画です。僕も机を並べて一緒に仕事をした時にはやっぱり緊張感がある現場でした。宮﨑さんの意思を継ぐっていうわけではないけれども、できるだけ宮﨑さんの意向に沿ったものにしようと思いながらやりました。7年かかったというよりも、7年かけただけあって、やっぱり終わった後は感激と共にすこし寂しい気がして。そういう感慨深い作品となりました。宮﨑さんも最後の覚悟で作ったのは間違いないんですけれど、また次回作もあるんだと思います。その時はまた僕もぜひ力になれたらと思って、やっていきたいと思います。

【蕗谷虹児賞】丸尾みほ(脚本)

© 2022「かがみの孤城」製作委員会

贈賞理由
 アニメーションにおいての“言葉”や“物語”は、映像と同じぐらい重要な役割を担ってきます。それは作品の骨格でもあります。丸尾みほさんは、1980年代より脚本家として多くのアニメーションに関わり、『カラフル』(2010)、『百日紅』(2015)、『バースデー・ワンダーランド』(2019)においては、映像と心の情景を見事に言葉で提示しています。最新作『かがみの孤城』(2022)では心の葛藤を持つ思春期の少年少女の繊細さを表現し、心を動かす作品に大きな貢献を果たしました。

受賞コメント
 素晴らしい賞をありがとうございます。『かがみの孤城』も昨年海外のいろいろな国で上映していただく機会に恵まれまして、私もそのうちフランス、ポーランド、ルーマニア、スペインに伺うことができました。そこで現地の方々といろいろお話をしまして、日本と同じようにどこの国でも、居場所のない子どもたちというのが少なからずいるということを知りました。それは驚きというよりも、『やっぱりそうなんだな』という気持ちがしました。映画を観たからといって何かが解決するというのは難しいとは思いますが、仲間がいる、助け合えるということはとても大きな力になると思います。辻村深月さん原作のこの映画を世界の子どもたちに観ていただきたいと思います。

【長編コンペティション部門】

★グランプリ『アダムが変わるとき』

 (カナダ)英題:When Adam change 
  監督:ジョエル・ヴォードロイユ

 周りの人たちからの嘲笑や否定的な発言で、身体が変化するという奇妙な特異性を持つティーンエイジャー、アダム、15歳。変化に変化を重ね、ただでさえ複雑な彼の人生はどんどん複雑になっていく!

(評)ノラ・トゥーミー:生きることのぎこちなさについてとても深い何かを語っています。本作の監督と彼のチームは、いくつかの一見小さな出来事から魔法のようなドラマを生み出しました。ユーモアと優しい心のバランスをとりながら、彼の持つアニメーションというメディアに対する知識と技術力を駆使して、観客が登場人物とつながることを可能にしています。

受賞コメント
 この新潟国際アニメーション映画祭にコンペティション監督として選ばれたこと、この場に来て多くの人々に会えたこと、他のコンペ監督に会ってお話しできたこと。もうこれだけで十分な贈り物だと思っていたんです。まずこの作品が今ここに存在できている理由、それは多くの才能ある人々に巡り合ったからにほかなりません。感動でいっぱいです。

★傾奇賞 (KABUKU Award) 『アリスとテレスのまぼろし工場』

© 新見伏製鐵保存会

 (日本)英題:maboroshi
  監督 岡田 麿里

 製鉄所の爆発事故により出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の正宗。ある日、気になる存在の謎めいた同級生・睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは言葉の話せない、野生の狼のような少女・五実――。二人の少女とのこの出会いは、世界の均衡が崩れるはじまりだった。 ⓒ新見伏製鐵保存会

(評)ノラ・トゥーミー:非常に美しいアニメーション。負った傷を乗り越えてさらに大きく成長することとは何かを詩情豊かに表現することにより、大人への成長譚というジャンルを新たな高みへと消化させています。

受賞コメント
 今回はこのような素晴らしい賞をいただきまして本当にありがとうございます。この作品はスタッフが一丸となって、汗も鼻水も涙も垂らしながら、みんなで走り抜けた作品だと思っています。そのみんなの熱意にこのような賞をいただけたことで答え合わせができたような、本当に幸せな気持ちです。

★境界賞『マーズ・エクスプレス』

 (フランス)英題:Mars Express 
  監督:ジェレミー・ペラン

 舞台は近未来。私立探偵アライン・ルビーとアンドロイドのパートナーは、悪名高いハッカーを追跡するために裕福な実業家に雇われた。 彼らは火星で、この惑星の首都の地下深くに潜入する。そこで彼らが見たものは……。

★奨励賞『インベンダー』

 (アメリカ)英題:The Inventor 
  監督:ジム・カポビアンコ、ピエール=リュック・グランジョン

 飽くなき好奇心と強気な発明家レオナルド・ダ・ヴィンチはイタリアを離れ、フランスの宮廷に入る。空を飛ぶ仕掛けや驚くべき機械を発明したり、人体を研究したりと、束縛されない日々。大胆な王女マルグリットと共に冒険を繰り広げながら、レオナルドは究極の問いへの答えを発見する。

■国際映画祭の舞台となる新潟市とは
 19世紀、海外への窓口となる世界港をもつ新潟は、江戸を凌ぐ国際的な商業都市でした。また新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーターを輩出し、2012年から10年間、「マンガとアニメを活用した街づくり構想」を実施、継続的なイベントとして「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」(来場者約5万人)、1996年から全国対象で「にいがたマンガ大賞」も実施。また、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や蔵書1万冊を誇るマンガ図書館「新潟市マンガの家」を運営、マンガ家志望者のための家賃補助施設「トキワ荘」、そしてマンガ雑誌編集部と結んだ無料「ON LINE添削」を実施するなど、日本有数の熱烈なアニメ・マンガ都市でもあります。そして──21世紀、本映画祭に集結したエネルギーを、グローバル・アニメーションの創造へのマグマとし、新潟は世界のアニメーションの首都を目指します。

■新潟アニメーション首都宣言
 新潟はアニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市です。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指すアジア最大規模の「新潟国際アニメーション映画祭」第2回の展開にぜひともご注目ください。

第2回新潟国際アニメーション映画祭

 英語表記:Niigata International Animation Film Festival
 主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
 企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
 会期:2024年3月15日(金)~20日(水)
 公式サイト:https://niaff.net(外部サイト)
 公式X(旧Twitter):@NIAFF_animation(外部サイト)

 公式Youtube:https://www.youtube.com/channel/UC81m7n8a8MgQGC-8MUXs7pA(外部サイト)

(オフィシャル素材提供)

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