イベント・舞台挨拶

『悪は存在しない』トークショー

© 2023 NEOPA / Fictive

 登壇者:大美賀均(主演)、北川喜雄(撮影)、山崎 梓(編集)、※ 濱口竜介監督よりビデオメッセージ有

 第80回ヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞したことで、カンヌ映画祭、ベルリン映画祭のいわゆる3大映画祭のグランドスラムを果たし、アカデミー賞®を入れると黒澤 明以来の快挙を成し遂げた濱口竜介。3年弱の短期間での活躍に世界で最も注目される監督の一人となった濱口監督の『ドライブ・マイ・カー』以降の長編映画最新作品であり、現在、世界中の映画祭、映画館で上映され、世界の映画業界を席巻し続けている『悪は存在しない』。4月26日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』ほか全国の劇場で公開される。
 きっかけは、石橋から濱口への映像制作のオファーだった。『ドライブ・マイ・カー』(21)で意気投合したふたりは試行錯誤のやりとりをかさね、濱口は「従来の制作手法でまずはひとつの映画を完成させ、そこから依頼されたライブパフォーマンス用映像を生み出す」ことを決断。そうして石橋のライブ用サイレント映像『GIFT』と共に誕生したのが、長編映画『悪は存在しない』である。自由に、まるでセッションのように作られた本作。濱口が「初めての経験だった」と語る映画と音楽の旅は、やがて本人たちの想像をも超えた景色へとたどり着いた。
 主演に、当初はスタッフとして参加していた大美賀均を抜擢。新人ながら鮮烈な印象を残す西川 玲、物語のキーパーソンとして重要な役割を果たす人物に小坂竜士と渋谷采郁らが脇を固める。穏やかな世界から息をのむクライマックスまでの没入感。途方もない余韻に包まれ、観る者誰もが無関係でいられなくなる魔法のような傑作が誕生した。
 この度本作の公開を前にして、主演の大美賀均、撮影を担当した北川喜雄、そして編集の山崎 梓が登壇するトークショーを行った。当日は濱口監督よりビデオメッセージも上映した。

 登壇者の登壇前に、「皆さま最初で最後の試写会いかがだったでしょうか? 皆さんの反応が気になるのですが、その場にいられなくて申し訳なく思っています。ただ、自分たちとしても、すごく良い仕事ができたなという感触を持っています。音楽の石橋英子さんの発案から始まった企画ですが、自分にとって充実した、幸福な制作でした。映画の内容は幸せだけではないところもありますが、皆さんにとって楽しめるものであったらいいなと思います。あそこはこうだったんじゃないか、ここが好きだ、嫌いだ、とかそういう話を皆さんとしていただいて、話題にしていただければと思います。アフタートークもぜひ最後までお楽しみください」と濱口監督のビデオメッセージが流され、その後MCの呼びかけで登壇した登壇者。

 早速、どのようなきっかけで本作が始まったのかという話になると、撮影の北川が、「大美賀さんが合流する前に、まずは石橋さんに会いに行こう、ということと、音楽映画をどういうふうに撮ったら良いのかという命題の元に、石橋さんのスタジオに濱口さんとふたりでカメラを持っていったのが一番最初でしたね。その時点では、まだタイトルも決まっていなくて、石橋さんのパフォーマンスのバックグラウンドに流れる映像制作ということだけ聞いていました」とはじまりを語る。

 大美賀も「濱口さんとは、『偶然と想像』という作品で制作部として入ったのが始まりでした。そこから、今回も初めはスタッフとして、北川さんと三人でシナハン、ロケハンに回っていきましたね」と、自身のはじまりを語ると、北川が「小淵沢に三人で行ったのが始まりでしたね。みんなで田舎暮らしはどういうものだろう、と言ってやってみようということでスタンドインをしながら、薪割ったりしましたね」と、当時を重ねて振り返る。そこから、どういったかたちで“主演”を務めることになったか聞かれた大美賀は、「2回くらいシナハンに行って帰ってきたタイミングで、“驚かないで聞いてください”と濱口監督から電話がかかってきました。何かやってしまったのかな、とちょっと怖いですよね(笑)。そして、“出るほうに興味ありませんか?”ということで本当にサプライズでした」と、まさかのサプライズに観客からも驚きの声が上がった。「当然びっくりするわけですが、濱口監督は経験豊かで、『ハッピーアワー』も経て職業俳優ではない方と映画をつくられてきた方なので、そんな監督がそう言うなら面白いだろうと思いました。濱口監督にとっても新しいことをやってみようということだったので、その一員になれるなら、とワクワクしていましたね」とオファー当時を振り返る大美賀。

 濱口監督とは東京藝大の同期であったと言う山崎は「在学中は一回も一緒にやっていなくて、実質、卒業後からでしたね。わたしが卒業後は大学院のほうに残って4年くらい大学で助手をやっていて、その間に海外の学校との合作などいろいろなプロジェクトが動いている中で、『THE DEPTH』という韓国の大学との制作にはいるときに、わたしが学校にいたということと、私が編集を続けるという選択肢をしていたということとか、私がいると学校にいるので機材もつかえますし(笑)とかいろいろあり、一緒にやりました。その『THE DEPTH』をやる前に『永遠に君を愛す』というのもありましたね」と濱口監督との制作のはじまりを話す。そこから、「今回は、“石橋さんの『GIFT』という作品のためのものを撮ってあります」ということから始まって素材を渡されて、“え!”みたいな(笑)。台本はいまでももらっていないです」と、ここでも驚きのエピソードが飛び出す。北川も山崎が入ったタイミングのことを、「撮影中盤で、『悪は存在しない』という映画をまずは成立させた後に、その編集を解体して『GIFT』をつくる、という話を聞いていたんですけど、良い撮影ができていって、撮影の終盤に『GIFT』のほうを山崎さんに頼もうと思うんだよね、っていうのを濱口監督がぼそっと言っていたのを覚えています」と思い返す。山崎は「確信犯ですね(笑)」と突っ込みつつ、「素材自体は一般的な音声が入っている映像が届いたんですけど、撮影順に整理されていて、“どうぞ”という感じでしたね(笑)。何をどうするか、というのはずっと手探りでいて、まずは素材を観て、何ができるかを考えようということで、頭から最後まで(濱口監督と)一緒に観て、“何をつくりましょうか?”という話になりましたね。前提として、石橋さんのための音楽ということはあったので、『GIFT』の編集の時は最初から、スピーカーをミュートにしてやっていました」と、編集の裏側が明かされていき、観客も聞き入る。続けて、「『GIFT』のほうを着手して、いろいろ試行錯誤していく中で、『悪は存在しない』も並行してやって、どこがどうこのふたつは違うのか、じゃあ『GIFT』がこうしたいなら、『悪は存在しない』はどうするのか、“編集交換日記”というか、お互いどうしてるのかみたいなのを話していましたね。部分的に繋いだもので、良きものはどちらかに入れたり、というのを並行してやっていました」と本プロジェクトだからこその共同作業のプロセスも明かされる。

 本作以前より濱口監督と関わりのあった三人に、他の作品との制作の違いを尋ねると、山崎は「今までの作品は、完成形が“こうなる映画である”というのが明確にあったと思うんですね。今回、『GIFT』は特に全くなかったので、今回の試行錯誤の多さは今までに全くなかったものですね。ストーリー展開も自由で、寓話っぽいかたちで、そういうものも受けいれられる自由度の大きいプロジェクトでしたね」としみじみ語る。北川も10人前後での制作体制の現場を振り返りながら、「濱口さんの場合は、皆がやったことひとつひとつが、この作品のためにどうなるか、自覚しながら、現場が作られる、場がつくられます。みんなが作品のために何をやっているかちゃんと明確に分かって仕事ができる、それが喜びにつながるし、それがすごく楽しいですね。そういう場をつくってくれるのが濱口さんですね」と濱口監督ならではの現場での体験を語る。

 映画中盤のグランピング建設の説明会のシーンの話になると、「ホン読みを何度も繰り返しやって、あの説明会のシーンは2日間あったのですが、1日目の午前中は丸々ホン読みに使いましたね」と贅沢な時間の使い方を振り返る大美賀。「現地のエキストラの方と、東京から来た方、50人くらいのエキストラの方が演じる人の背景や、グランピングに賛成なのかどうなのかという設定を、助監督の方がひとりひとりにお渡ししてましたね。大変だなというのを見ながら、自分は撮影の準備に集中していました(笑)」と北川も振り返るが、そういった積み重ねがあったからこそ現地のフィルムコミッションから“こんなにエキストラの皆さんが楽しそうにやっているのは見たことがなかった”という声が上がったことも明かす。編集の山崎も、“編集素材を見ていてもそれはすごく伝わってきました! そのシーンはなんか揉めてるなと思って見ていたのですが(笑)、2日間で撮影した説明会って2カメで、素材は通常の倍以上あるわけですが、全然楽しかった! このおじさんすごい賛成している、というのも分かるので、(演じている)皆さんも何回もやっているはずなのに、白熱して、とても楽しそうでしたよ」と絶賛。現場にいた北川も、「エキストラの方も、生で舞台上で演技をしている人の中に入って見ているような状況なので、アトラクション感ありますよね。最初はどのタイミングで誰が立つのか分からないので、面白かったはずです」と話す。

 そんな中、初めての演技経験に挑戦した大美賀は「いままでにない緊張をしましたね。頭を打ったりすると目の前に蝿が飛ぶってあるじゃないですか。あれが本当に起こるんですよ(笑)! 本当にセリフが出てこなくて、間があったり、三行のうち二行を飛ばしてしまったり、最初のテイクはかなり続いてしまったんですが、濱口監督は“それはそれでオッケーです”とか、“本当に集中している時はセリフを飛ばします”と言われるんですよね」と現場での濱口監督のフィードバックを明かしながらも不安そうな表情をする。そこで、北川は「実は初日の3ターン目くらいに、(撮影の)飯岡さんが“大美賀さんのいいところが撮れたよ”って言ってくれていましたよ」という話を明かし、安心した表情の大美賀だった。

 最後に、北川が「噂によると、2、3回目観るとまた違う感覚に陥ると、そのようにできていると、監督と石橋さんもおっしゃっています(笑)。すごく綺麗な自然の中、そしてミニマムながら一番いい光の時間を考えながら、楽しく撮影できた作品なので、大きなスクリーンで観ていただけたら嬉しい気持ちでいっぱいです」と、山崎が「濱口さんの作品の編集が終わった時、“観たことない映画ができたな”という感覚になるのですが、今回も“観たことがない”というのを本当に感じたので、皆さんも宣伝にご協力いただき、また観ていただけたらと思います」と、大美賀が「僕もこの映画は8、9回観ているのですが、山崎さんがおっしゃるように、説明会のシーンの町の方の顔一つとっても、観るべきところがあります。自然と音楽と、とても気持ち良いですよね。この後、お酒でも飲みながら話したり、観た後も楽しい作品です。感想等、書いていただいたら励みになりますので、よろしくお願いします。この映画を気に入っていただいた暁には、『義父養父』(大美賀の監督作)も観ていただけたら、理解が深まると思いますので、よろしくお願いします」と話し、トークショーは終了した。

公開表記

 配給:Incline
 4月26日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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