イベント・舞台挨拶

『デッドストリーム』ティーチインイベント

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 登壇者:ヴァネッサ&ジョゼフ・ウィンター (監督・脚本・制作・編集・音楽)/ジャレッド・クック(プロデューサー)

 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から『女神の継承』まで、今やホラー映画の一大ジャンルとしての地位を確立 し、ホラー・ファンを魅了するPOVホラー。そんなPOVホラーの本年度最恐の1作! 炎上系配信者が“いわくつきの館”で体験する恐怖の一夜を描いた映画『デッドストリーム』がSDP配給にて2024年8月16日(金)より新宿シネマカリテ他全国で順次公開する。

 8月7日(水)、公開を記念し、代々木にあるBROADWAY DINERにて映像制作を志す若者を対象にしたティーチインイベントが実施された。

 ティーチインイベントでは、監督のジョゼフ・ウィンター、ヴァネッサ・ウィンター夫妻とプロデューサーのジャレッド・クック氏を講師として迎え、映像制作を学ぶ若者達から盛んに質問を受け付けた。
 彼らも本場アメリカでの制作体制や本作の撮影方法に興味津々といった様子で、監督たちも日本のクリエイターの卵たちとの交流に予定時間をオーバーするほど、大盛況のティーチインイベントとなった。

映画デッドストリームについてご紹介いただけますでしょうか。

ヴァネッサ・ウィンター:この作品をジョセフと二人で制作したいと思い始めたとき、まずは少人数のクルーで制作したいと思いました。二人ともホラー映画が大好きだったので、ホラー映画にしようと決めていました。コメディチックなところが多い作品ではありますが、ジョセフのDNAからきているところがあります。最初にジョセフが想起したアイデアが、今回の主人公のショーンと同じようにビビり屋な主人公が、幽霊屋敷に閉じこまれてしまうというお話でした。その話のタネをリアルタイムに見せることにこだわりました。というのも大好きなファウンド・フッテージ映画に「REC:レック」シリーズがあって、「REC:レック」の持っている勢いのようなものが好きなんです。本作も見ている人が息がつけないように、リアルタイムに展開し続ける作品にしたかったんです。あとは二人ともクレイジーなクリーチャー・エフェクトが大好きなので、作品に加えたいと考え、そのためにジャレッド(本作のプロデューサー)が加わったのですが、そこで作品のテクノロジーのような人格が生まれました。ジャレッドが配信者の主人公の立場で、どのようにテックの要素を加えていこうかと考えてくれたおかけで、とてもリアルなテクノロジーのセットアップの選択をすることができました。その結果、テックの魅力を持った作品にもなりました。

ファウンド・フッテージは言わずもがな、POV作品もここ最近盛り上がりを見せており、どちらも既存のファンが多数存在するジャンルだと言えます。日本でもこの2点に着目して公開を楽しみにしている人がたくさんいるのを感じています。『デッドストリーム』は、ファウンド・フッテージだけどライブ配信、POVだけどカメラ視点は主人公だけではない……などさまざまなアイデアやこだわりの詰まった作品で、飽和状態だと思われていたこの2つのジャンルに新しい風を吹きこんだ作品だと感じていますが、代表的なクラシック・ホラー作品が存在するジャンルだからこその難しさもあったと思います。あえてこのジャンルに挑戦しようと思った理由ありますか?

ジョセフ・ウィンター:ファウンド・フッテージの作品を制作する以前に、長年二人で衣装の映画を作りたいと思っていました。その願いを叶えるのであれば、数人の手を借りながら、映画の形にできるコンセプトを自分たちで作り上げて、自分たちでバリアを壊してくしかないと気がついたんです。実用的な観点からファウンド・フッテージというジャンルを戦略的に選びました。映画作りは大変なのは皆さんご存じの通りですが、ファウンド・フッテージという形をとれば少しは楽なのかなとちょびっと舐めてはいました。ただ実際に脚本を書き始めたり、ブレイン・ストーミングを始めたときに、皆さんに注目してもらうのであればカメラ1台では足りないなど、普通の映画のように物語を語る上で必要な要素を全て撮影できるように、複数のカメラ・カットが必要なことに気づき、どんどんと複雑になっていったので当初の想像よりも大変な撮影となりました。ジャレッドが加わったおかけで、この作品を撮るためのテクノロジーをたくさん発明してくれました。ファウンド・フッテージのジャンル自体は飽和状態だと思っていたので何か新しいものをつくるために、カメラを複数台使うこと、リアルタイムで撮影している映像を編集しているデバイスが登場することで、『デッドストリーム』らしさを出したいなと考えました。

主人公ショーンが配信者ということもあり、屋敷の各部屋に複数のカメラを配置したり、ショーンの主観とショーンの顔のアップのカメラを使ったショットが印象的でした。この撮影手法はチャレンジングなものだったと推察するのですが、撮影中にはどんな困難がありましたか?

ジャレッド・クック:想像していたよりもはるかに大変な撮影となりました。通常のシネマ系のカメラであればその場ですぐにモニターで確認できますが、本作は基本的にGoProを使ってiPadにリンクさせ確認していました。Wi-Fiで繋いでいたので、4mくらいショーン役のジョセフが歩くとモニターが映らなくなるので、みんなで一生懸命壁にモニターを寄せて見ようとしていましたが全く見えませんでした。5分~10分くらい撮影した後にジョセフが帰ってきて、みんなで撮影したものを確認するという形をとっていたので、通常の2~3倍くらい時間がかかってしまって悪夢でした。カメラの台数は一番多くて7台。そのうち3台は暗視カメラになっていて廊下や部屋を撮影しました。主人公には3台、そのうち顔が映るものを1台、ヘッドセットを2台使用しました。実は真夏の撮影だったので、暑さでバッテリーがはがれやすかったり、ヘッドセットにつけているバッテリーは頭を激しく動かすと飛んでいってしまったりというハプニングもあり気をつけないといけませんでした。クリエイティブな面ではジョセフは演じながらも、POVカメラはジョセフがカメラマンとして全部撮影していました。どちらもこなした彼は本当にすごいと思います。時々闘いのシーンや頭がどうしてもうまく動かせないときは、私がジョセフの頭を代わりに動かすこともありました。私が映画作りで好きなことがクリエイティブな問題解決をすることです。監督夫妻がファウンド・フッテージの企画を出してくれたときに、初めはシネマのカメラで撮ろうと思っていました。物理的に難しいことが分かったときに、一眼レフやミラーレスなどいろいろ考えましたがGoProで撮ろうとなりました。撮影監督としてはGoProは質としては好ましくありませんでしたが、最終的には本作にとってパーフェクトな絵を撮ることができました。耐水性もあるのでお風呂のシーンや、カメラが頑丈だったので闘いのシーンも問題なく撮影できました。作品にもぴったりでしたし、問題解決の作業を監督夫妻と一緒に行うことが楽しかったです。

ジョゼフ・ウィンター監督はマイケル・ジャクソンの『スリラー』のPVを観てホラー映画製作を志したとお聞きしましたが、スリラーのPVのどういったところにホラー映画への情熱をかき立てられたのでしょうか? また、本作では本国でオマージュ・ポスターが作成されているように、『死霊のはらわた(The Evil Dead)』をはじめとしたクラシック・ホラーへのオマージュが捧げられていると思うのですが、今作のような新しいホラー作品を作っていく上で過去のホラーの名作から取り入れていることとは具体的に何でしょうか?

ジョセフ・ウィンター :小さなころから怖い映像が好きで12月が誕生日ですが、ハロウィンに誕生日を祝うほどホラー好きでした。小さいころに親がレンタル・ビデオ店でマイケル・ジャクソンの『スリラー』を借りてきてくれて、自分のために作ってくれたのかと感じるほど怖い雰囲気が好きでした。そのビデオにはメイキングも入っていて、顔の特殊メイクをはがすメイキングを見た時に、こうやって人の手で映像は作られているんだと実感した瞬間でした。それから自分も同じことをやりたいと思い、SFXや特殊メイクなどといったフィルム・メイキングに関わるようになっていきました。ただ自分の作家としてのテイストはコメディ色が強いので、『死霊のはらわた』シリーズや『キャプテン・スーパーマーケット』などが大好きです。『ガバリン』シリーズも大好きで、『ガバリン』を見たことがある方は、本作を見ていただくと影響を受けているなと見て取れると思います。

本作は予算的にミニマムな制作体制で作られた作品だとお伺いしております。具体的にはどのくらいの予算で制作された作品なのでしょうか。また、予算的な制約の中で感じた困難なことなどありますでしょうか。

ジャレッド・クック :ずばり12万ドルで制作しました。ユタ州で撮影したため、ユタ州の税制対策や助成金も含まれた金額になります。ギリギリの予算感の作品ではありました。大変だったことは数日間で撮り終えたいので、そのために強烈なリハーサルを行いました。家の地下室でヘッドギアのテストもしたし、時間を無駄にしたくなかったので『デイストリーム』という作品を先に撮影しました。これはスタントやエフェクトなどを入れずにやりたい動きを撮影し編集まで行った作品になります。撮影のタイミングや何が必要なのか本番の撮影で無駄がないように。ただ結果的には本番は想像よりも倍の撮影日数がかかってしまいました。

<学生からの質問>

普通の人では思いつかない奇想天外なアイデアや、クレイジーな仕掛けなどが盛り込まれていて、怖いけど面白くて癖になる作品でした。もし同じチームで次回作をつくるならどんな作品を作りたいですか?

ジャレッド・クック:この二人のためならなんでもしたいです! 実は映画学校時代の仲間なんです。卒業後お互いに編集や撮影を頼んだりなんてことはありましたが、ここまでがっつり一緒に仕事をしたのは初めてでした。阿吽の呼吸が僕らの間にはありますし、僕からすると二人はホラーやコメディなどタイミングを含めて、素晴らしいストーリーテラーであるところに学びがありました。どんな作品でも一緒にやりたいと思っています。

ヴァネッサ・ウィンター:VHSシリーズである『V/H/S/99』の1本を3人で手掛けています。現在私とジョセフが二人で書いたホラー・コメディの脚本を提出中なので、いい返事がくることを願っています。

仕事でMVやCMのディレクターをしていて、映像の仕事をすればするほどホラーへの興味が出てきています。本作を観た時に強度が強い作品だと感じました。ファウンド・フッテージという構造とホラーの相性がいいと改めて感じました。ホラー映画は映像に対する原始的な興味に結びついていると感じています。配信と組み合わされると、配信自体も映像の人間の原始的な興味に紐づいているので、その二つの軸に加えて視聴者が見たいという3つの軸での強度の高い作品になっていると思います。そういった軸についてはどのくらい意識して制作されたのでしょうか。

ヴァネッサ・ウィンター:学生時代からホラー映画が好きなので、本作もホラー作品になるのは必然的でしたが、そこに配信を組み合わせることができたのは新しいかなと思います。監督としてすごいなと感じたのが、ジョセフがオペレーションもしながら自分のバミリなど全部頭に入っていて毎回正しく再現できていたことです。演出家としてすごいなと思いましたし、コメディにすぐれていると感じました。ジャレッドが作品に加わることで、作品に奥行きが出たと思っています。劇中にコメントが出てきますが実はこれがすごく大変で、何度もタイミングやどれを使うのか、誰のコメントをトップにもってくるかなど試行錯誤しました。コメント自体は私たちも考えましたが、ジャレッドがたくさん手掛けていて、未だにレビューを見ていると本編よりもコメントが面白かったと書かれたりすることもあります(笑)。

ジョセフ・ウィンター:制作中はテーマは正直そこまで考えていませんでしたが、ポスプロ段階になって本作のテーマはなんだろうと深く考えるようになりました。最初はただただこの時代にあったエンターテインメントをつくりたい!という気持ちがとても強かったですし、生配信・リアルタイムにこだわっていました。そういった映像は自分たちは見たことがなかったので「他の人に先にやられる前に早くつくらないと!」と考えていました。どういった映画祭に出していくか戦略的に考えるときにテーマなども考えはじめて、どこを一番見てほしいのかより深く考えるようになりました。

ヴァネッサ・ウィンター:たくさんの人に承認を求める主人公を断罪することは簡単ですが、アーティストであれば彼の必死さは分かるところもあるなと思います。自分たちのつくるものを見てほしいという想いが間違いなくそこにはあって、そこは重要なポイントとして感じていました。

制作陣の皆さんが撮影する中で一番盛り上がった瞬間やシーンはどこですか?

ジョセフ・ウィンター:みんなで盛り上がったり喜んだりするときは特別な瞬間が撮れた後です。ついに撮るぞ!というシーンがやっと上手く撮れて家に帰るときは、寝不足やストレスを抱えていたこと、現場で起こっていたことを忘れてしまうような歓喜に包まれる体験でした。一つ例に挙げるなら指の切断シーンです。このシーンは失敗しうることが全部起きたんです。ジャレッドがパペットの指を下から操作していたのですが、私の頭のカメラは自分では動かせないので、映像は見えないですがジャレッドがカメラを手で動かしていました。私は指を見ていないと切り落とす演出の時に外してしまう可能性があるので、視線を外せませんでした。その状況で演出に合わせてカメラを一緒に動かしたり、指を切ったりと完璧に撮影しないといけません。フレームアウトしていたり、指から血が出ないなど上手くいかないことばかりが続いて、やっと撮影が終わって次のシーンの撮影で2階に上がるときに、主人公は繋がりでGoProをしないといけないのに、装着せずに撮影していたことに気づき撮り直しになりました。最終的にはなんとか形となり、その瞬間はとても嬉しかったです。

映画『デッドストリーム』の8月16日(金)の日本公開を記念して、BROADWAY DINERとのコラボレーション企画が決定!

 公開日前日となる8月15日(木)より、店内では、炎上系配信者の主人公ショーンと劇中に登場するグロテスクなクリーチャーたちのパネルや数々の場面写真、そして、劇中でショーンが着用していたスウェット (レプリカ)などが展示される予定。ここに来れば、“消えたショーン”を探す手がかりを見つけられるかも……!? 本編鑑賞後は、より作品の世界観を楽しむことができるはずだ。
 本コラボについての詳細は、映画『デッドストリーム』公式X(@whereis_shawn)のほか、BROADWAY DINER公式Instagram(@broadway_diner_)にて後日発表予定。

BROADWAY DINERとは


 BROADWAY DINERは、代々木ブロードウェイに位置し、隣接するGALLERY10[TOH]と連動してART EXHIBITIONを行っているギャラリーカフェ。ARTを間近に鑑賞しながらドリンクやフードを楽しめるスポットとなっている。最新音楽から不朽の名作まで、幅広いジャンルの音楽をBGMに、食と美と音が響き合う素敵なひと時を楽しむことができる。
 ※ 現在、カフェ営業は入れ替えのためお休み
 住所:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-20-12 1F

公開表記

 配給:S・D・P
 2024年8月16日(金) 新宿シネマカリテ他全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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