イベント・舞台挨拶

『本心』完成披露舞台挨拶

© 2024 映画『本心』製作委員会

 登壇者:池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督

 日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督(『月』、『舟を編む』)の最新作『本心』が11月8日(金)に全国公開。原作は、「ある男」で知られる平野啓一郎の傑作長編小説「本心」。キャストには、池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中 泯、綾野 剛、妻夫木聡、田中裕子らが集結。本作は、“リアル”と“リアルではないもの”の境界が今よりもさらに曖昧になった世界を舞台に、亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫る革新的なヒューマン・ミステリー。ついに待望の公開が“あとひと月”に迫る中、“世界初のお披露目”を今か今かと待ち望む観客を前に、主演の池松壮亮、そして三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督登壇の完成披露舞台挨拶が開催! 本作へ懸けた思い、そして撮影裏のエピソードなど、“ここだけでしか聞けない本心”が明かされた――。

 主人公の朔也(池松壮亮)は、母・秋子(田中裕子)と二人でつつましい生活を送るごく普通の青年。しかしある日、「大事な話があるの」と言い残して急逝した母・秋子が、実は“自由死”を選んでいたことを知ってしまう。幸せそうに見えた母がなぜ自ら死を望んだのか……母の本心を探るため、朔也は不安を抱えながらも、AIに集約させ人格を形成するVF(ヴァーチャル・フィギュア)を利用し、仮想空間に母を“蘇らせる”選択をする……。
 原作を読んだ池松が「今やるべき作品」「これは自分の話だ」と感じ、全幅の信頼を寄せる石井監督に自ら企画を持ち込んだ意欲作だが、そんな渾身作について池松は、「満員御礼の会場に向けて「これだけの素晴らしいキャスト、そして監督とここに立てることを光栄に思います」と挨拶。2020年に池松が平野啓一郎氏による原作小説と出合ったことをきっかけに、今回の映画化に至った経緯がある。池松は「人と対面で会うのも難しいコロナの時期に原作に出合いました。コロナは書かれていないけれど、アフター・コロナについての全てが書かれているような気がして、強いインパクトを受けました。これは同時代を生きる私たち自身の物語だと感じました」と回想した。

 そんな池松から原作小説を勧められたという石井監督は「AIと対面する人の心が人類近々の問題であり、今最も考えなければいけないテーマが小説として見事に書かれていた。これは映画監督として立ち向かわなければいけないものだと思ったし、それに目を付けた池松君はさすがだと思った」と心を動かされていた。

 朔也の母・秋子と生前親しく、ひょんなことから朔也と同居することになる三好彩花を演じた三吉。自身の名前と役名の読み方が一緒であることから、客席がどよめくと「そうですよね、私もそういう気持ちでいます」と照れ笑い。脚本を読んで「何が楽しくて何がしんどいのか彷徨っていた時期に読んだので、運命を感じざるを得なかった。こんな運命的な出合いはほぼないだろうと思うくらいの御縁を感じました。女優としても自分自身としても今必要な映画だと思いました」と胸を打たれたようだった。

 朔也の幼なじみで、朔也に自身と同じリアル・アバターの仕事を紹介する岸谷役の水上は「ヒールに分類される役で、ひたすら朔也の邪魔をする。まるでゾンビのようにまとわりついて粘着質があって。その一方で軽やかな岸谷を目指しました」と役柄を紹介。

 AI技術を駆使して仮想空間上に会話もできるように再現されたヴァーチャル・フィギュアの開発者・野崎役の妻夫木は久々の“石井組”参戦。また、池松とは、石井監督が手掛けた2014年公開の映画『ぼくたちの家族』と『バンクーバーの朝日』以来、約10年ぶりの競演となる。『ぼくたちの家族』では兄弟役も務めた二人だが、妻夫木は「家に帰って来た安心感があった」と久々の石井組にしみじみし、池松については「役と同化するくらい突き進む人」といい「その手綱を石井監督がコントロールする様を目の当たりにして凄いなと思った。どのように人物を見つめてどのようにお客さんに見せるか。強力な説得力を与える画になっている」とコンビネーションを絶賛していた。

 朔也の母・秋子と秋子のヴァーチャル・フィギュアを演じた田中。息子・池松について「池松さんとはセリフ以外ほとんど何も話していません。話したい気持ちはあるけれど、何を話していいのか分からない。目が合っても……ぎこちないです」と今後に期待だと笑みを見せていた。

 AIをテーマにした本作の撮影中、奇しくも生成AIの規制に関する問題でハリウッドでは大規模なストライキが発生していた。そんな時期での撮影を振り返り、池松は「目の前に突きつけられている問題に対して問題意識を持った俳優がそれぞれのパートでその役に責任を取っている姿は見ていて神々しく、美しく映っていました。キャストそれぞれがベストのお芝居をしています」と胸を張っていた。

 本作のタイトルにちなんで「最近、実は“本心”を言えなかった、隠しちゃった」というエピソードをそれぞれ発表。池松は韓国でサムゲタンを食べようとしたそうだが「韓国で一番有名なお店に連れ行ってもらったけれど、僕が食べたかったのはサムゲタンじゃなかった。名前を間違えていた。そもそも鶏でもなかった」と料理名を勘違い。「でも違うとは言えなくて……。これが食べたかったと言いました」と苦笑いだった。

 三吉は「最近1週間前の記憶が飛んだりして、寝たら忘れてしまう体質になった。なので本心も覚えていないくらい。特にこれと言ったエピソードはないです」と恐縮。
 水上は「本心を隠し切れないです、僕は! 本心は隠そうと思っても隠せないですね!」と裏表のない人間だと自称。
 ヤモリ好きという田中は、飼っている野良猫がヤモリを狩ってしまうことを強く叱れないというエピソードを話した。
 一方、妻夫木は「40を超えたら覚えられなくなった」と加齢からくる記憶力の減退を明かす流れで「今四十肩。これを大っぴらにすると……やはり歳だなと思われる。でも40を超えたらケガをしますよ。気をつけてくださいね、皆さん!」と注意喚起していた。

 また「共演者に今だからこそ聞きたい本心」を尋ねられた池松は「みんな分からんかった本心が!」と笑い飛ばしながら、「優れた俳優の本心は見えないと思う。三吉さんもプロフェッショナルにスッとされているけれど何を考えいるのか分からない。水上君もピエロに見えてくるけれど軸はブレない。でも人の話を聞いていない。田中さんに至っては本心なんか分からない!」とお手上げ状態。
 これに水上は「池松さんから『いい意味でも悪い意味でも人の話を聞いていない』と言われて……どういうことなのかと一日中考えちゃいます」と悶々としていた。
 劇中で、母・秋子を想空間に“蘇らせる”選択をした朔也。他愛もない穏やかな日常を取り戻そうとしていく朔也が、次第に母の“隠された一面”を目の当たりにし、母だけでなく自分自身の本心すらも見失っていく……。親子であっても、そしてどんなに近い存在だとしても、そして自分自身でさえも――人間の“本心”とは果たしてどこにあるのかは、誰にも分からないものなのかもしれない。

 最後に石井監督は「AIやヴァーチャル・フィギュアというまったく新しいエモーションを表現できた映画であり、人間がずっと大切にしてきた普遍的な感情や心が未だかつてない形で浮き彫りになっている作品です。ここにいる俳優たちが役というものに真摯に向き合った時に神々しいものが生まれ、それがお客さんの心にも届くのではないかと思います」とアピール。主演の池松も「堅苦しい映画でも難しい映画でもないです。今私たちの周りにある世界的共通トピックが入った物語です。時代の波に飲み込まれ、迷子になった青年とそれを取り巻く登場人物たちがいかにして生きているか、何を求めて生きているのか。そんな作品になっています。皆さんにとっていい時間になればと思っています」と呼び掛けていた。

 劇中で登場する職業“リアル・アバター”にちなみ、水上が、リアル・アバターとして、共演者の皆さんと客席の様子を撮影する試みも行うなど、登壇者と観客による、劇中さながらの演出も行われ、初めから最後まで、熱烈な盛り上がりをみせた本イベント。我々がかつて想像していたようなSFの世界ではなく、“日常”に溶け込んだ、今の生活と地続きの設定である『本心』。AIや仮想空間、日々著しく進化するテクノロジーが世界中を席巻し、生活様式が目まぐるしく変貌しているいま。時代に翻弄され彷徨う人間の【心】と【本質】を描いた革新的なヒューマン・ミステリー『本心』を是非劇場で見届けてほしい。

公開表記

 製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
 11月8日(金)より全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました