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「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」『化け猫あんずちゃん』トークイベント

©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

 登壇者:久野遥子(監督)、山下敦弘(監督)
     ジュリアン・レジ(カンヌ監督週間 アーティステック・ディレクター)
 司会:矢田部吉彦(前東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)

 現在、都内・ヒューマントラスト渋谷で開催中の「カンヌ監督週間in Tokio 2024」。12月11日(水)は日本のアニメーションとしては6年ぶりの選出となった『化け猫あんずちゃん』が登場。上映後のトークイベントには久野遥子監督、山下敦弘監督、カンヌ監督週間・アーティステックディレクターのジュリアン・レジが出席し、実写とアニメが融合した撮影の舞台裏、カンヌ国際映画祭での思い出などを語った。なお、前東京国際映画祭プログラミングディレクター、矢田部吉彦がMCを務めた。

 「カンヌ監督週間in Tokio 2024」は、第77回カンヌ国際映画祭<監督週間>に選出された最前線の映画に出合う12日間(12月8日〔日〕〜12月19日〔木〕)。アニメ『化け猫あんずちゃん』は、母を亡くし、祖父のお寺にやって来た小5の少女かりんが、37歳の化け猫のあんずちゃんと出会い、一夏の不思議な体験を描く。森山未來が演じるあんずちゃんを山下監督が実写で演出し、その映像をもとにアニメーション化する“ロトスコープ”の手法を採用。久野監督の指揮のもと、老舗スタジオ・シンエイ動画とフランスの気鋭スタジオ・Miyu Productionsがアニメーション制作を担当した。

 まず、『化け猫あんずちゃん』をカンヌ監督週間に選出した理由についてジュリアンは、「2024年は特にアニメ作品を探していました。今後の映画界を支える若いクリエイターたちがアニメ映画にとても注目しているので、カンヌ国際映画祭においても、アニメの分野から選出することがとても重要だと思ったからです」と述懐。さらに、「実は2作品、候補に上がっていたのですが、いずれも『猫』の話でした。なぜ、『化け猫あんずちゃん』を選んだかというと、これまで西洋の人たちが好きな日本のアニメ映画にとても親近性があったこと、そして『喪失』と『ユーモア』という2つのテーマを扱っていて、大人から子どもまで幅広い方々に観てもらえるところが評価の対象となりました」と明かした。

 カンヌ監督週間に選出されたときの気持ちについて久野監督は、「カンヌでアニメが入選することがほとんどない中で、初めての参加した作品が『化け猫あんずちゃん』だったので、めちゃくちゃびっくりしました。でも、カンヌのおかげで、いろんな映画祭に呼んでいただき、また世界各国で上映する機会もいただいたので、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです」と感慨深く語る。

 一方の山下監督は、「僕は昔、深夜枠で、『山田孝之のカンヌ映画祭』を作っていた身としては、“え? 本当に行くの?”っていう感じでしたね。あのドキュメンタリーでは、カンヌに出品するための映画を製作するという狙いがあったんですが、今から思うと、全部間違っていました」と自虐ネタで笑いを誘った。

 また、本作が上映される日、映画祭の計らいで、子どもたちが劇場に来やすいように上映時間を設定したというジュリアンの裏話を聞いた久野は、「確か観客の半分くらいがお子さんだったんですが、とてもビビットなリアクションをとるところと、怖いシーンになると急に静かになるという両面があって面白かったですね。大勢のお客さんと観る機会が初めてだったので、それがフランスのお子さんたちと一緒だったことが貴重な経験になったと思います。あと、あんずちゃんのぬいぐるみが大人気だったので、こういうグッズは大事だなと思いました」と笑顔で語った。

 “ロトスコープ”という手法について興味津々のジュリアンから、「アニメなのに特定の俳優を使って撮影する意味は?」という質問が飛ぶと、山下監督は「現場のセリフをアフレコでそのまま使うので、そこも含めて役に合う俳優を使う必要がありました」と解説。「特にあんずちゃん役の森山くんは、ダンサーでもあり、身体能力がすごく高いので、猫的な動作を要求し、見事に応えてくれました。彼の動きがそのままアニメに生きていると思います」と絶賛。
 撮影自体も、「アニメを多少意識はしましたが、ほぼいつもと同じ、実写映画を撮っている感覚でやれましたね。ただ、照明もメイクもいらないので、その分、スケジュールをかなり詰められたのはちょっときつかったです(笑)」と撮影当時を振り返った。

 アニメ班の久野監督と実写班の山下監督、制作上の大きな相違はなかったのだろうか? これについて山下監督は、「原作はあんずちゃんだけの世界だったので、映画用にかりんというキャラクターを作って、彼女の背景を物語の軸にしていったんですが、あまりにもかりんに肩入れしすぎて、久野さんから『あんずちゃんが主役だから!』と軌道修正されたのを覚えています。途中から相米慎二監督の『お引越し』を撮っている気分になりましたから(笑)」と苦笑い。

 これに対して久野監督は、「はい、そこだけは言わせていただきました(笑)。あとは、実写の撮影現場にもいましたし、編集も参加していたので、大きな相違はなかったです。ただ、ワンカット平均15秒くらいあったので(アニメは通常5秒程度)、かなり大変な作業でしたが、そこが他のアニメと違う部分になるなと思ったので、頑張ってやり切りました」と力強く締めくくった。

『化け猫あんずちゃん』作品概要

©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

 (2024年、日本、上映時間:97分)

 監督:久野遥子、山下敦弘
 配給:TOHO NEXT

 母を亡くした小5の少女かりんは、父の地元に連れてこられ、祖父が住職の寺で夏を過ごす。寺には人間のように暮らす37歳の化け猫のあんずちゃんが出入りしており、かりんは驚愕するが、やがてあんずちゃんに重要な願い事を相談する……。
 森山未來が演じるあんずちゃんを山下監督が実写で演出し、取り込んだ映像のアニメーション化プロセスを久野監督が率いた。おっさんキャラの化け猫の絶大なインパクトは、カンヌを爆笑させた!

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」概要

Sélection indépendante et singulière”―――独立性のある、他に類いのないセレクション

 1968年、作家性や芸術性の高い作品を称揚するためにカンヌ映画祭に創設された「監督週間」だが、そのセレクションは決してハ-ト・ウォーミングな作品やラブコメなどではなく、ラディカルで自由な矢を放ち、見る者の心を打つメッセージ性の高い作品ばかりだ。日本の映画ファン、映画・映像業界に携わる方々、そしてこれからその世界に飛び込もうとしている若者たちへ向けて、世界の最前線の映画たちをお届けする。

 【日程】2024年12月8日(日)〜19日(木)《12日間》
 【会場】ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル7・8F)

 【鑑賞料金】
  一般:2000円/大学:1500円/小中高:1000円/シニア:1300円/ハンディキャップ割引:1000円
  TCG会員:あり(いつでも1400円) ※火・木1200円割引ナシ
 【前売券】ムビチケ前売券(オンライン):1600円
      https://mvtk.jp/film/Z0000067(外部サイト)

  ※ 水曜サービスデー(毎週水曜日):1300円
  ※ イベント回:2000円均一(割引なし・特別鑑賞券使用不可)

 ■主催:監督週間(Quinzaine des Cinéastes/Directors’ Fortnight)/特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
 ■共催:東京テアトル
 ■特別協力:三菱UFJ銀行
 ■協力:金延宏明(ノブ・ピクチャーズ)/CINEFRANCE STUDIOS/Filmarks/レプロエンタテインメント/活弁シネマ俱楽部/ELLE/AKIRA H/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ/スペースロック/河本和真(Deep Emotion)/小林由佳(よーてらよてら)

 ▼公式HP:https://www.cannes-df-in-tokio.com/(外部サイト)
 ▼公式X: https://x.com/cannes_tokio(外部サイト)
 ▼公式Instagram:https://www.instagram.com/cannes_tokio/(外部サイト)

(オフィシャル素材提供)

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