
登壇者:近藤亮太&高橋ヨシキ&西川 亮
5月16日より全国公開を迎えた映画『ノスフェラトゥ』は、都内の劇場では満席回が出るなど30代から40代を中心に大きな盛り上がりを見せている。この日行われた公開記念トークショーでは、今年1月に『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で長編映画監督デビューを果たし、新作中編ホラー映画『〇〇式』の公開が控える近藤亮太監督、映画評論家の高橋ヨシキ、DVD&動画配信でーた編集長の西川 亮が登壇。ホラーに精通した3名が、映画のディープな魅力をたっぷりと語った。
本作は、ロバート・エガース監督が幼少期から夢描いてきた悲願の映画化ということで、エガース監督の長編映画デビュー作『ウィッチ』の頃から注目していたという近藤は「特殊効果含めて彼のキャリアを全部ぶつけてきたなという感じがする」といい、高橋も「ムルナウ版からして人間関係がシンプルでストレートな構成ですが、今回は派手にやっている印象。それだけ監督がやりたいことを詰め込んでいる」と、エガース監督の集大成となった本作を絶賛した。
第97回アカデミー賞🄬では撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門にノミネートし、美しいゴシックの世界観も話題だが、オルロック伯爵のビジュアル面について話が及ぶと、近藤は「ヘルツォーク版にしてもお馴染みのビジュアルではありますが、今回はだいぶスタイリッシュになっていると思います」というと、高橋は逆の印象を受けたようで、「僕は、長く生きているモンスター性を出してきたなと思いました。声もぜぇぜぇしていて(笑)。一番驚いたのは、トーマスが伯爵の城に到着した時の場面。伯爵が全然招いてくれないっていう(笑)。今までに輪をかけてとっつきにくい人に描かれている」と語り、ムルナウ版『吸血鬼ノスフェラトゥ』、ヘルツォーク版「ノスフェラトゥ」、と比較しながら観るとさらに楽しめる。
また、近藤は映画監督の観点で印象に残るところがあるそうで「とくに前半1時間のクオリティが高い。今の時代、スマホで映画を見る人も多いので、暗さの塩梅をどこにもっていくかというのは常に議論になるのですが、本作は月明かりや蝋燭など地明かりを活かしながら、見やすさも同居した美しい画作りが素晴らしい」とエガース監督の徹底的なリサーチに基づく画作りのすごさについて熱弁。セリフも当時の訛りが反映されるなど、再現性には強いこだわりも。西川は「そういった意味では、映画館でちゃんと観ないとわからない映画になっている。目に見えない所にこだわりがある」と映画としての醍醐味が詰まっていると感じたようだ。
さらに、キャスト陣の演技について話が及ぶと、リリー=ローズ・デップの怪演が話題にあがる。近藤は「ノスフェラトゥを現代に描く上で掘り下げているのはリリーの演技だと思います。ニコラスも昔っぽさを出しながら絶妙なバランスでした」とコメント。エレンが憑依された動きには、日本舞踏が参考にされたという。
エガース監督は、今後も狼男を題材とした映画『Werwulf(原題)』や、デビッド・ボウイが主演した1986年のファンタジー映画『ラビリンス 魔王の迷宮』の続編の監督が決まっている。高橋は「彼は外連を見せるのが上手な監督。独自の立ち位置があって、自分の世界観を大事にしている珍しいタイプ」、西川も「『ノースマン』では規模が大きすぎて苦労したという話もありますが、ここ最近の2作で着実にステップアップしている」と次回作にも期待を込め、トークショーは幕を閉じた。
公開表記
配給:パルコ ユニバーサル映画
5月16日(金) TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
(オフィシャル素材提供)