イベント・舞台挨拶

『囁きの河』初日舞台挨拶

© MISTY Film

 登壇者:中原丈雄、清水美砂、三浦浩一、篠崎彩奈、カジ、宮崎美子(以上、出演)、大木一史(監督・脚本)、青木辰司(エグゼクティブプロデューサー )

 6月26日、29日のロケ地である熊本県人吉市での先行上映会では、予想を超える大勢の県民が押し寄せ、急遽2回の上映を増やした映画『囁きの河』が、いよいよ東京でも公開となった。
 7月11日(金)の初日舞台挨拶には、熊本出身の中原丈雄&宮崎美子も登壇。熊本豪雨当日に人吉球磨地域の人とやりとりしていた中原と、熊本豪雨前日にくま川鉄道で赤い鉄橋を渡り人吉駅に到着した乗客の一人である宮崎が、当日の様子やその後の現地の方の様子を語った。

 2020年7月、熊本豪雨により球磨川が氾濫し、壊滅的な被害を受けた人吉球磨地域。変わり果てた故郷に戻り、失われた過去と現実に向き合う主人公の孝之を演じた中原丈雄は舞台挨拶の冒頭、「6月26日から熊本で上映しまして、大勢の方に見ていただきましたけれど、今日もシネマ・ロサが満席になり、嬉しく思っています」と挨拶。

 大木一史監督は、「人吉は2日間で3000人近い観客が集まり、熱気と共に、東京に舞い戻ってきました。そしてインディーズ映画の聖地である池袋シネマ・ロサの舞台に立っており、感無量です」と話した。

 孝之の息子・文則の元同級生・樹里役の元AKB48の篠崎彩奈が「こんなに豪華な共演者の皆さんとこの素晴らしい作品に出られたことを嬉しく思います。私の役は、この映画の中で唯一ほっこりできる役柄だなと思っているので、そのスパイスを出せるように頑張りました」と挨拶すると、孝之の隣人・さとみを演じた宮崎美子が、「私(の役)もほっこりできるんじゃないかな」と言いつつ、「ここで張り合っても……」と自分でツッコミを入れて笑いを誘い、「川の流れのようなゆったりした映画の時間をじっくりとお楽しみいただけたらと思います」と挨拶した。

 熊本豪雨についての映画を撮りたいと思った理由を聞かれた監督は、「水害の翌年2021年にとある絵本を手にしたのがきっかけです。洪水の時の実話に基づいた本で、そこに喪失、再生、あるいは被災地の希望や地元に宿る魂を感じたんです。この絵本を出版された方々と話し合いながら、企画を立ち上げました」と制作の経緯を語った。

 2020年7月4日未明から記録的な大雨となった人吉市出身の中原は、「3日に電話で、『雨降ってるんだって?』って聞いたら、『全然大したことないと思うんですけど』と電話は終わったんです。そうしたら次の朝、すごいニュースでびっくりしました。全然予想なんかしていなかったです」と当時を回想。宮崎は、熊本県熊本市出身だが、たまたまロケで人吉市に行き、熊本豪雨前日にくま川鉄道で赤い鉄橋を渡り人吉駅に到着した乗客の一人。「九州だと梅雨の末期にざっと降ることはあるので、みんなそんなに心配していなかったんです。夕方私が帰る頃にみんなのスマホが一斉に鳴って、『上流のほうで洪水の警報が出ているらしい』と。その時も人吉市内の皆さんは『大丈夫だから』と誰一人心配していなかったんです。それが一晩明けたら、全く世界が変わっていました」と当時の状況を説明した。

 中原は、人吉に定期的に戻って地元の方と交流がある。「この映画は、人吉球磨の方にお世話になってようやく出来上がった映画です。でも人吉球磨におもねて、街の名所を映すということは一切やっていないんです。作品としての描き方で撮られていて素晴らしいと思いました」と、“ご当地映画”とは違う、作家性の高い本作を評価した。

 本作は、遊水地問題も描いている。宮崎は演じたさとみについて、「モデルがいらっしゃるんです。同じ災害にあってもいろんな捉え方があって、『自分にとってこの川はなんだろう』って災害にあったことで改めて感じたと思うんですけれど、(さとみは)『ここで生きていこう』と考えた人」と説明した。

 地元の老舗旅館の営業再開を目指す女将・雪子役の清水美砂と夫・宏一役の三浦浩一は、ロケ地にもなった旅館に撮影中宿泊した。清水は、「人吉旅館さんにはお世話になりまして、(堀尾)里美さんという女将さんに何回か話を聞きましたが、映画の中で演じた雪子は、人格を含めて、私なりの雪子をやらせていただきました」と台本をもとにキャラクターを作ったと話した。

 三浦は「本当にお人柄がいいご夫婦でした。人吉の先行上映会の後、ご覧になったお客様に『人吉旅館のご主人はあんなグズじゃねぇ』って言われましたが、僕が演じたのは、台本を読んで、僕がイメージした宏一であって、ご本人とは違う」と改めて強調した。

 清水は、女将役でこだわったシーンについて、「17歳くらいの時に出演したNHKの朝ドラ(「青春家族」[1989])は、舞台が(静岡県の)土肥温泉だったんですけれど、土肥温泉でも旅館なりホテルって、温泉が出ないとランクが下がるというか、全然違うというのは当時話を聞いていました。人吉旅館さんは水害で全滅してしまったらしいです。すごく心配したそうで、それを立て直し、実際に温泉が出た時の喜びは誰にも分からない。それはしっかり表現をしたいと思いました」と話した。

 篠崎が演じる樹里は、地方活性化プロジェクトの一員として熊本に戻ってきた役で、観客は樹里と一緒に船頭やお茶のことを知れる役。”霧の味”の新茶の味を聞かれた篠崎は、「美味しかったです」と即答。「甘くて、東京では飲んだことがないお茶の味がして、香りもすごく深かったです」と絶賛した。

 渡辺裕太演じるかつての同級生役だった文則との関係性について聞かれた篠崎は、「台本上では二人の関係性は描かれていなかったので、渡辺さんと二人で、『学生の時はこの道をよく二人で帰ってたのかな』とか『学生の時もこういうふうに不器用だったんだろうね』と二人で想像しながら、役を作っていけた」と裏話を披露した。

 エグゼクティブプロデューサーの青木辰司は、日本のグリーンツーリズム運動のリーダー的存在。「司馬遼太郎は、人吉を、『日本一豊かな隠れ里』と言いました。そういう、観光地にはないような農村の豊かさがある人吉に私は魅せられまして、20年間足繁く通い、グリーンツーリズムを立ち上げました。皆さん方の心が優しく、豊かな世界だったんです。それが、5年前の水害でめちゃくちゃにやられ、彼らは絶望の淵に追いやられていました。そこを、なんとか外部から支援できないか考えているうちに、監督と出会い、この映画になりました。この映画は、人吉の方々と、外から人吉を想い、支援する方々とのコラボレーションというテーマが横たわっていて、私のグリーンツーリズム運動にぴったりのテーマです。ぜひいろんな想いでこの映画を観ていただければと思います」とメッセージを送った。

公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中

(オフィシャル素材提供)

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