イベント・舞台挨拶

『遠い山なみの光』公開記念舞台挨拶

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 登壇者:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田 羊、鈴木碧桜、石川 慶監督

 映画『遠い山なみの光』公開記念舞台挨拶が9月6日(土)、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、主演の広瀬すず、共演の二階堂ふみ、吉田 羊、鈴木碧桜、メガホンをとった石川 慶監督が登壇した。

 ノーベル賞受賞作家カズオ・イシグロの長編小説デビュー作品「遠い山なみの光」を、日本アカデミー賞受賞監督の石川 慶が実写映画化した本作。1950年代の長崎と、1980年代のイギリスを生きる3人の女たちの知られざる真実に涙溢れる、感動のヒューマン・ミステリーとなっており、1950年代の悦子を広瀬、悦子が出会った謎多き女性・佐知子を二階堂、佐知子の娘・万里子を鈴木、1980年代の悦子を吉田がそれぞれ演じる。

 本作は、5月の第78回カンヌ国際映画祭、6月の第27回上海国際映画祭、9月の第50回トロント国際映画祭、10月の第69回ロンドン映画祭と、各国の主要国際映画祭への出品で、世界から注目を集めていることについて広瀬は「カンヌから始まり、海外の方に観ていただく機会が多かったので、日本で公開して、日本の物語をたくさんの方に知っていただくことに、“やっとだ!”みたいな気持ちもありつつ、世界で日本のことを知っていただくきっかけになる作品になったらうれしいなと思います。すごく光栄に思います」と声を弾ませた。広瀬のもとには反響も届いているそうで「人によってそれぞれ答えが違ったり、解釈が違ったりして、観終わったあとにどんなふうに伝わるのかなと思っていたんですけど、『スクリーンを観たからこそ聞こえなかった声が聞こえてくるような感覚になった』という言葉を頂いたときは、すごくズシッときたというか、なるほどと思ってうれしかったですね」と吐露した。

 改めて、本作が公開された心境を聞かれた二階堂は「今年もすごく暑いんですけど、撮影のときもとても暑くて、スタッフの方々もキャストもみんな大変でした。でも、丁寧に妥協なく一つひとつのシーンを作っていく現場でしたので、完成したものを観たときはすべてスクリーンの中に映っているなと感じて、それを今日皆さんに観ていただけてうれしいです」とにっこり。

 広瀬と初共演した感想や印象について二階堂は「とても頼もしくて、現場で常にずっしりといてくださったので、スタッフの各部署の方々も我々も安心して現場に臨むことができて、本当に頼りになる座長でした」と称賛し、これに照れ笑いを浮かべた広瀬は、二階堂との共演について「この物語を自分で咀嚼していく中で、自分の中にある違和感みたいなものが佐知子さんといると解けるような、ヒモが解けていく感覚があって、この役は二階堂さんしかできないだろうなって思う説得力と、圧倒的存在感を目の前で見させていただいて、すごく刺激的な時間でした」と目を輝かせた。

 そんな2人の共演について、石川監督は「初共演だと思えないくらい、押すところ引くところあうんの呼吸で2人の息がピタッと合って、見ていても心地よかったですし、編集していても音楽を聴いているみたいな心地良いセッションだったと思います」と舌を巻いた。

 一方、先日本作の舞台挨拶で長崎にも行ったと、イギリス・パートの悦子を演じた吉田は「すずちゃんと監督と一緒に平和祈念像にも献花させていただいて、舞台挨拶でも長崎の皆様が私たちの言葉にじっと耳を傾けていらっしゃって、全国に先駆けて長崎で本作を公開できたということは、すごく意味のあることだったなと思います」としみじみと語り、「長崎の街って本当に美しくて、異国情緒あふれ、貿易で栄えた街ならではの活気もあって、かと思えば、ちょっと街を歩けば焦げついた建物が残っていたりして、歴史と記憶が混在した街なんだなと、行ってみて改めて感じました。映画を通して長崎について、そして原爆について、日本だけではなく世界の人がもう一度考えるきっかけになったらいいなと思います」と期待を寄せた。

 本作をどのような思いで紡ぎあげていったのか聞かれた石川監督は「カズオ・イシグロさんが遠い長崎を思いながら書いたものを、我々がバトンを受け取って映画化していったんですけど、長崎の街を歩きながら不思議とカズオ・イシグロさんの頭の中に飛び込んでいくような錯覚に陥りました」と明かし、「皆さんぜひ長崎を訪れる機会があったら、街を歩いていただけると悦子・佐知子がいるような街並みを歩けるんじゃないかなと思います」とおすすめした。

 また、印象的なシーンを聞かれると、広瀬は悦子が子どもを叱るシーンを挙げ「最近、取材をしていただいたり、監督の答えを聞いている中で『想像以上に強かった』って言われて、(演じ方を)“間違えた?”と思って不安になっていて……(笑)」と吐露し、「現場でも言語化するのが難しくて、監督ともニュアンスで1回お芝居をやって『そっちのニュアンスがいいと思います』みたいなやり取りをしていたんですけど、時間が経って冷静に作品を観て、やっぱ違ったのかなっていまだに不安で……。でも公開しちゃったなって(笑)」とちゃめっ気たっぷりに笑った。

 同シーンについて、石川監督は「“なんかすごく強く叱ったな”と思ったんですけど(笑)、それを佐知子さんが後ろで見ている図を見て“そういうことか”って逆にこっちが思って、この物語の大きなターニング・ポイントなので、広瀬すずはそこまで見えているんだと思いながら見ていました」と感嘆し、同シーンで共演した二階堂も「あの強さに引っ張ってもらったというか、監督のおっしゃっている通り、展望台で2人で言葉を通わせるところは心も通うシーンでもあったので、すずちゃんが演じた悦子さんの強さみたいなものがすごく大事な鍵になっていたと思います」とコメントし、広瀬は胸をなで下ろした。

 一方、1950年代の映画が好きだという二階堂は、佐知子を演じる上で意識した作品や役者はいるかと尋ねられると「名だたる名優の方々が作られてきた映画を参考にしたものはあったんですけれども、どちらかというとドキュメンタリーとか、当時の方々がどういう暮らしをしていたのかとか、どういう社会の中で生きていたのかということを大切にしたいなと思っていたので、資料とかを拝見することが多かったです」と告白。そんな二階堂の演技について石川監督は「二階堂さんは本読みのときから“これが佐知子だ”って説得力のあるものを準備されてきていて、この2人を見ていて全然違う音色の楽器がきたなという気がしたんですけど、展望台では不思議なハーモニーというか、2人が近づいていく様子を見ているだけでも自分もドキュメンタリーを撮っているような気分になりながら、役者さんに恵まれたなと思いながら撮っていました」と語った。

 そして撮影前に1ヵ月間、イギリスでホームステイをしたという吉田は「向こうって水が硬水なので、毎日シャワーを浴びて髪がバサバサになり、パン食なので肌も乾燥しますし、日本のスタッフさんとは違う現地のスタッフさんで、ヘアメイクさんもそうだったので、『この状態を全部活かしてヘアメイクをしてください』とリクエストしました」とエピソードを明かし、「お料理のレシピをイラスト付きで手書きで書かせていただいて、それを台所の棚に貼ってます。もちろん監督に許可を取って(笑)」と裏話も披露した。

 さらに、本作の内容にちなみ、“忘れられない記憶”について聞かれると、広瀬は「4・5歳に頃に家族でお寿司屋さんにお昼ご飯を買いに行ったときに、先に車に戻って乗っていたんですけど、みんなが来ないからお店に戻ったんですね。そうしたら反対側から家族が車に戻ってきていたみたいで、そのまま車が発車してお店に置いていかれて、私は泣きながらそれを追いかけて、『おしん』みたいな感じになったのをいまだに覚えています(笑)」と回顧し、「車が全然止まってくれなくて、夢にも出てくるくらい(笑)、フラッシュバックするくらい記憶に残っています」と告白。その後、父親がバックミラーに写る広瀬に気づいてくれて事なきを得たという。

 二階堂は、高校生の修学旅行先が長崎だったことを明かし「自由時間にそれぞれ好きなところに行けるので、長崎の街を歩いたんですけど、そこに住んでいる方々の生活と歴史をすごく感じる街並みで、それが忘れられない思い出ですね」と懐かしみ、「あのとき、私は友だちはいっぱいいたんですけど、1人でお散歩してみようかなと思ってのことだったので、この作品のご縁があそこから始まっていたのかなと思います」と感慨深げに語った。

 吉田は、イギリスでホームステイをしていたときに、アンティーク・ショップですてきなデキャンタを見つけたそうで「割れないようにプチプチでぐるぐる巻きにして、大事に持ってきたんですけど、1ヵ月経って撮影隊が用意してくださったアパートに移ったときに、せっかくだからあれに花を挿して、花を眺めながら過ごそうと思って、中を洗って乾かして置いてんですけど、別室で用事を済ませていたら、後ろで“ゴロゴロゴロ、ガシャン!”って聞こえて、行ってみたら粉々に割れていました」と苦笑し、「まさか割れるなんて思っていないから写真を1枚も撮っていなくて、割れた写真を撮りました(笑)。でも、その頃私は撮影に対する不安が大きかったんですけど、それを見た瞬間にパッと楽になったんです。あの子が私の不安を全部持っていってくれたんだなと思いました。でもとってもすてきだったので悲しいです」と残念そうな表情を浮かべた。

 舞台挨拶の終盤では、二階堂演じる佐知子の娘役を演じた鈴木碧桜(みお)か登場して、4人に花束を贈呈する一幕もあり、広瀬と共演した感想を求められると「本当に演技がお上手で、撮影で一緒に共演したときは、早く広瀬さんみたいに演技が上手くならないかなってずっと思っていました」と胸の内を明かし、広瀬は「また共演できたらうれしいですね」と優しく声をかけた。

 続けて、鈴木との思い出について二階堂は「こういう(緊張している)一面もあるんですけど、現場では頼りになるところがたくさんあって、監督の言葉一つひとつに丁寧に向き合っていて、碧桜ちゃんを見ていると“確かにこのシーンはこうなのかな”ってこっちが気づかされる瞬間がたくさんあって、子どもの姿をして、実は中に大人が入っているんじゃないかなってドキッとさせられる瞬間もあったりしました。でも今日は久しぶりに等身大の碧桜ちゃんに会うことができて、とてもうれしいです」と目を細め、鈴木は「(二階堂に)どうやったら演技が上手くなるか教えてもらったんですけど、『とにかく練習をすることが大事だよ』って言われたので、いろんなオーディションを受けるときは毎回頑張って練習をやっています」と力強く語った。

 最後に、締めのコメントを求められた石川監督は「カズオさんから言われて印象に残っているのは、『この物語は歴史の語り直しの話なんだ。だからあなたの言葉で、あなたの解釈で語り直してください』って言われて、こういう映画を作って、今日皆さんに観てもらって、皆さんの解釈で語り直していただけたら、この物語にとって1番幸せなのかなと思います」と語り、「いろいろな解釈ができる映画ですが、記憶の物語なのでどれが正解とかではなくて、皆さんがどう捉えたのかというのが正解なのかなと思っているので、ぜひ皆さんの言葉で語っていっていただけたらなと思います」とお願いした。

 広瀬は「長崎の歴史や当時を生き抜いた女性たちは、正直、このお仕事をするまでは自分とは近い存在ではなかったんですけど、役を通して、作品を通して、自分ごとのように感じられる作品でした。それが自分だけじゃなくて、この作品を観てくださった多くの方にも知ってもらえるようなきっかけになったらいいなと、誰かの希望になる作品になったらいいなと思っていますので、余白のある作品ですが皆さん心と言葉で埋めてもらえたらうれしく思います」とメッセージを残した。

公開表記

 配給:ギャガ
 大ヒット上映中

(オフィシャル素材提供)

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