
【登壇者】みどり市長:須藤昭男、監督:金子雅和、主演:藤原季節
映画『赤土に眠る』制作発表会⾒が9月16日(火)、群⾺・みどり市の岩宿博物館で行われ、主演の藤原季節、メガホンをとる金子雅和監督、みどり市の須藤昭男市長が出席した。
本作は、市制施⾏20周年記念事業としてみどり市が制作する映画で、現在のみどり市である新⽥郡笠懸村岩宿の関東ローム層から、⼈によって作られたと思われる⽯器を1946年に発⾒し、⼈類の歴史は⽇本では縄⽂時代から始まったという定説を覆し、⽇本列島に旧⽯器時代が存在したことを証明した⼈物・相澤忠洋さんの若き⽇の奮闘を描く。
同発表会見ではまず、主演を藤原が務めることと、タイトルが『赤土に眠る』に決定したことが発表された。そして、報道陣や関係者の前に登場した藤原は「このような大きなプロジェクトかつ、責任の伴うプロジェクトだと思うんですけど、そんな大役を自分という未熟な俳優に任せていただけて、すごく責任感を感じています」と吐露し、主演に抜擢された心境については「なんで自分なのかと(笑)。北海道札幌市出身で、群馬県にも縁やゆかりがあるわけでもなく、これまで黒曜石だったり、遺跡というものに深い興味を示したわけでもない自分が、相澤忠洋さんという役を演じることに違和感というか、もっと適した人間が日本のどこかにいるんじゃないかという気持ちがありましたが、このようなご縁をいただけたということで、この縁を自分なりに育てていかないといけないって思いました」と力強く語った。

相澤忠洋さんという実在した人物を演じるにあたって、どのような役作りをしているか聞かれた藤原は「まずはこの街に来てみて、相澤さんの姿を想像してみるというところからスタートして、実際に遺跡が発見された岩宿の切り通しに自分が立ってみて、この何の変哲のない切り通しの赤土の壁の前に1人の青年が立って土を掘っていたんだって思ったんです。周囲の人間からしたら“何をやっているんだ、あいつ”と。土壁の前に立って石を掘って、きっと戦後で食べるものなくてみんな困っていた時代に石を集めて、まあ“変わり者”と呼ばれたんだろうなと。でもその青年の姿が僕には見えるような気がして、そのときに“この人を演じたい”と思えて、そこからは自分にとって思い入れと呼べるものを増やしていく作業として、相澤さんが住んでいた場所に行ってみたりして、一つひとつの縁だったり思い入れを自分の中に取り込んで作業をやっている最中です」と明かした。
そんな藤原を主役としてオファーした理由を問われた金子監督は「近年ご活躍なさっていて、7〜8年くらい前から藤原さんの出演作を見て、素晴らしい俳優さんだなと思い、自分の周りでも評価が高くて、いつかガッツリとご一緒したいなと思っていました」と目を輝かせ、「相澤さんは自分の欲得だったり、名誉のためではなくて、自分の心の赴くままにというか、正直にひたむきに発掘をひたすら続けた人物で、そういった人物を演じていただくのは難しいものだとは思うんですけど、藤原さんご自身が今までの作品でも、規模の大小関わらず一つひとつ丁寧に、真摯に、相澤さんのようにひたむきに取り組んでいく印象を持っていて、周りの映画関係の人たちからもそういう俳優さんだと聞いていたので、ぜひお願いしたいなと思いました。相澤さんという人物を描くにおいて、藤原さんの俳優としての姿勢が、必ずこの作品を成功に導いてくれるものだと思っていますし、藤原さんとともにやれば、この作品は素晴らしいものになると信じています」と期待に胸を躍らせた。

また、『赤土に眠る』というタイトルの印象を尋ねられた藤原は「当時は赤土の中に旧石器は存在しないというのが日本中の定説で、1人の考古学が好きな、考古学者ではない青年が赤土の中から遺跡を発見してしまったということで、最初はどこに行っても『そんなはずはない』と言われる中、何年もかけて相澤さんが歴史を覆してしまったということで、その何年もの間は、相澤さんは赤土の中にきっと石器が眠っている、人類の痕跡があるんだと信じ続けたんだと思うんですけど、相澤さんという人間を語る上で赤土というものは絶対に外せないものなんだろうなと思っていたらこのタイトルになったので、自分の中では一発で腑に落ちました」と語った。
撮影は、2025年10月〜11月にかけてみどり市を中⼼に群⾺県と周辺で行われるそうで、撮影に向けての意気込みを聞かれると、金子監督は「今日1つ驚いたことがあって、ここに車で昼くらいに来たんですけど、プロデューサーの方が入口のところで自転車に乗っている若い方と話していて、あれと思ったら自転車に乗っていたのは藤原季節さんで、驚いたことに今日、藤原さんは東京から自転車でやってきたということで、相澤さんの役をやるということに対して、それだけの思いを持って今日、挑んでくださっていると知って、驚きと感動しました」と目を輝かせ、自身の意気込みに関しては、約1年前から撮影の準備をする中で、何度も同所を訪れたり、相澤さんが書いた本を読むなどして、台本をブラッシュアップし、ロケハンで160ヵ所ほど巡り、ロケ地も絞り込んでいるそうで「相澤さんがこの土地で何を見て、何を感じて、何を考えて生きてきたのかと、自分も立体的に伝えたいなと思い、史実に忠実な映画ではなくフィクションの部分もありますけど、相澤さんが何を大切にしていたのか、何を糧にして生きていたのかということをしっかり描く映画にしたいと考えております」とコメント。

藤原は「監督がおっしゃったことと一緒の気持ちで、相澤さんが何を考えて、どんな景色を見てあのとき生きていたのか、相澤さんが赤土の中から発見した石を東京の学者たちに認めてもらうために、自転車で東京と群馬を往復して、200kmの距離を通っていらした方で、僕も片道10時間くらいかかったんですけど、今より舗装されていない道路の上を重たい自転車で相澤さんも何時間もかけて移動して、相澤さんがどんな景色を見て、何を考えて生きてきたのかということを、少しでも正しく伝えられたらと思っています」と意欲を見せ、「夢中になるということや、ひたむきさをこの作品を通して伝えられたらと思っていて、夢を追うということはお金儲けのためでもなく、広い家に住みたい、かっこいい車に乗りたいということよりも前に、本当の意味で自分の夢を追うということがどういうことなのかというのを、きっと相澤さんは僕たちに教えてくれるはずなので、それを少しでも自分の肉体を通して相澤さんの精神を表現して、後世に伝えていけたらなと思っているので頑張ります」と力強く語った。
イベント後の質疑応答で、相澤さんゆかりの地の中でどんなところを巡ったのか、そして相澤さんの気持ちを知るためにしていることを尋ねられた藤原は「ここの(岩宿)博物館にも来させていただいて、岩宿ドームにも行かせていただいたりしました。お墓参りをさせていただいて、相澤さんに『自分が相澤忠洋さんの役を演じさせていただくことになりました』と挨拶させていただきました。今は閉館しているんですけど相澤忠洋さんの記念館にも行かせていただいたんですけど、相澤さんが生活していた痕跡のようなものをそこで感じるようなことができた気がします」と明かし、「天という場所があるか分からないんですけど、相澤さんには天からこの映画の制作を面白がって見てほしいなと思って、自分が自転車を漕いている間も、ひょっとしたら天国にいる相澤さんが自分の姿を見て面白がってくれるんじゃないかなという変な気持ちはありましたね」と声を弾ませた。
また、相澤さんの印象を聞かれた藤原は「自分なりに思うことがあって、脚本でも人と対話する喜びみたいなものが描かれているんですよ。相澤さんの過去の資料映像とかを見ても、お話をするのが好きな方だったのかなと思って、どうしてだろうなと思ったんですけど、自転車を10時間も漕いでいると人としゃべりたくなるんですよ(笑)」と自身の体験談を交えてコメントして会場の笑いを誘い、「しゃべりたいと思って、この制作発表も楽しみにしていたんですけど、1人でいる時間とか、1人で発掘している時間が長かったので、人としゃべる時間が楽しかったんだろうなと推測しました」と語った。
最後に、PRメッセージを求められると、藤原は「金子監督が書いた脚本が素晴らしいと思っていて、相澤さんが旧石器を発見して定説を覆したということに加え、フィクションを入れたということで、人間の魂の話だったり、金子監督自身が自然というものに対してどう考えているかというものが、この物語の中に含まれていて、僕は覚悟としてはこの映画が自分の最後の作品になっても悔いはないと思えるような気持ちで、この作品に臨みたいと思えるくらい、素晴らしい脚本になっていると思います。ぜひ楽しみにしていてください」とアピール。
金子監督は「本気で取っ組み合いをして作り上げて、お客様がとにかくいい映画を観たと思えるようなものを完成させたいと思います。そしてお客様が感動を感じていただければ、そこからより相澤さんのことを知りたいであったり、岩宿に来てみたと自発的に思っていただけるのではないかと、それがベストな形ではないかと思います」と目を輝かせ、「これから制作に向けてより準備が本格化し、撮影がスタートしていきますが、そういった中でみどり市の皆さんのご協力というものが大きなものになってきますので、そちらの方もお願いいたします」とお願いした。
そして、須藤市長は「いよいよ来月からみどり市を中心にロケが始まるわけでありますけど、現時点ではロケが怪我や事故がないように、安全で映画が撮影されることを願っております」と祈念し、「映画はできて終わりじゃないです。いかに多くの人に観ていただくかということが1番大事だと思っていますので、ロードショー公開をして、国内いろんな方に相澤さんの生き様を見ていただく、そして旧石器時代を日本列島で初めて発見した相澤忠洋さんという人を全世界にアピールできればという思いで、世界の映画祭に出品できるような、そんな映画になって、映画を観た方々が国内はもとより、海外からもロケ地巡りをしていただいて、さらに交流人口が増え、みどり市が全国にアピールできるような、そんな地域ができるといいなと思っていますので、ぜひ監督、そして藤原さん、よろしくお願いいたします」と期待を寄せた。

映画『赤土に眠る』は2027年春公開予定。
キャスト&スタッフ
監督・脚本:金子雅和
主演:藤原季節
(2027年、日本)
公開表記
配給:東京テアトル
2027年春 全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)