
登壇者:窪塚洋介、千原ジュニア、芋生 悠、板尾創路、祷キララ、飯田団紅、豊田利晃監督
窪塚洋介×松田龍平W主演、豊田利晃監督最新作『次元を超える』の公開を記念して、窪塚洋介、千原ジュニア、芋生 悠、板尾創路、祷キララ、飯田団紅、豊田利晃監督が登壇する、公開記念舞台挨拶が実施された。
満席の観客のもとに団吉を演じた切腹ピストルズの隊長・飯田団紅がMCとして登場。2018年から豊田組に参加した経緯を話し、“次元を超えた”観客を盛り上げると、飯田の呼び込みで監督・キャストが登壇。

孤高の修行者・山中狼介を演じた窪塚は「とうとう、この日が来ました。昨日からなんですけれども、豊田版『火の鳥』、『狼蘇山』シリーズの完結編を見ていただいた直後なので、まだこっち側に戻ってきていない方がたくさんいらっしゃるようにお見受けしますけれども、この舞台挨拶の間に皆さんの意識が戻ってくるといいなと思っております。今日はありがとうございます。よろしくお願いします」とコメント。
本作を鑑賞してから「次元を超えていた」と感想を言い合ったことについては「脚本を読んで、言うは易し、書くは易しで。銃口から宇宙に飛んでいくとか、惑星ケルマンとか、どうやって撮るの?どんな仕上がりになるの?っていう、台本では分からないことがたくさんあったので。そういうのを試写会で目の当たりにしたときに、演者みんなで終わった後に喫煙所で、誰も喋らないんですよ。皆さんのような状態になっていて。『いやあ、次元を超えてましたね』って俺が一言言ったら、『ね! 超えてたよね!』『超えてた! 超えてた!』みたいな感じで話が収束するというか、盛り上がるというような。演者みんなも置いていかれるくらいのロケットに乗る体験をしたなという感じでしたね」と笑顔で振り返った。

危険な宗教家・阿闍梨を演じた千原は、本作を豊田監督の作品で1位と絶賛していたことについて「台本を読んだときに『あ、これは大すべりするな』と思ったんですけど、映像で観たら『こんなことになってたんか!音楽が付くとこんなに素晴らしいのか!』みたいな。僕は最初に皆さんが観られた試写会には行けなかったので、一人遅れて後で観たんですけど、なんか素晴らしいものに仕上がっているんですよ。これが脳内でちゃんと映像として浮かび上がって撮ってたら、そりゃ豊田監督面白かったやろなあと思いました」と豊田監督の手腕を称賛。
そして「21歳~22歳ぐらいの時に、居酒屋で大げんかした日があって。僕が『俺は100人いたらお客さん100人全員笑かすと思ってコントを作ってるけど、お前は100人いたら100人が面白いと思えるような映画を撮ってるつもりあるのか』って言ったら、『100人が観て100人が面白いって思えるような映画が面白いわけないやろ。俺は100人観たら10人痺れる映画を撮んねや!』って監督は言って、『それはエンターテイナーとしてどうなんだ』みたいな喧嘩を、若い時にしたなっていうのを思い出して。『俺、100人観たら10人痺れてる内の一人に入ってる』と思って。非常に感慨深いものを感じましたね」と明かした。最先端の研究者・高嶋博士を演じた板尾が「どついたん?」と確認すると、千原は「どついてないです(笑)。2人とも非常に文科系なので。手は出さない。お口ばっかりです」と笑顔を見せて「時間だけはあったので、毎日のように遊んでいたので、その日のことを思い出して。『ああ、あの頃からもうここを志していたんだな、豊田利晃監督は』っていうのを、2~30年ぶりに思い出した感じがあって。素晴らしいなと思いましたね」とも語っていた。

狼介の彼女・野々花を演じた芋生は、先日のDolby Atmos®完成披露試写会で本作の立体音響を体感したことについて「音がすごいんですよね。音響がすごくて。音の迫力が凄まじいのと、久々に観たら、途中で宇宙に飛ばされるところ、宇宙の映像がバーッて出るところを見ているうちに、段々吸い込まれるような感覚になって。危ない体験をしました(笑)。あと、ストーリーとしては見ていて難しいみたいな、一見するとそう思いがちなんですけど、私的にはすごくシンプルな話だなって思ってて。すごくシンプルな、愛の話なのかなって、自分的には思いました。でも、それぞれの感想があると思うので、皆さんの思うままに感じてほしいなって思っています」と話していた。

当日の会場となったシネマート新宿では、10月頭から「豊田利晃レトロスペクティブ 2025」と称して、豊田監督の過去作を上映し、『』青い春』はほぼ満席の大盛況となった。改めて本作への道のりについて聞かれた豊田監督は「振り返らないので、あっという間でした」と語り、「シネマートはこんなに良い劇場で、でかいスクリーンで、でかい音で、キャパも300くらいで、でかいので、ちょうど見やすい劇場ですよね。毎日、社員のように舞台挨拶をしていたんですけど、楽しかったです」と自身の特集上映を楽しんだ様子だった。

この日が本作の舞台挨拶に初参加となった板尾は「今回は、豊田組のオールキャストみたいな感じで。やばい役者ばっかりで。(豊田監督を指しながら)これが一番やばいですけどね。こんなやんちゃな監督いませんから」と発言。
豊田監督は「制作発表があった時に、板尾さんからメールが来て。『次、俺出るで』って来たんですよ。そのまま、ずっと進んでて、ジュニアの衣装合わせをしている時に、吉本の偉い人が来てて。『板尾さん、出るって言ってましたけど』って言ったら大慌てして。『ちょっと確認します!』って。ちゃんと言ってください。会社に(笑)」と出演の経緯を明かした。
また板尾は「豊田組に関しては、昔から出る言うたら出れるので大丈夫ですよ(笑)。でもね、今日のお客さんがやばいなと思って。こんな作品を観に来た。かなりやばいですからね。今日来たお客さん。自覚してください(笑)」と観客をいじり「キャストもやばいですけど。ジュニアと、窪塚洋介なんて一回死にかけてますから(笑)。おかしな奴ですからね。監督もやんちゃですけど! まあ、マメ(山田)さんもやばいですけどね。やばい奴だらけで、僕が一番普通かなって」と語って会場を沸かせ、千原は「どこがなんですか(笑)」とつっこみを入れていた。

さらに板尾は「ジュニアなんて、宗教家というか。兄貴のほうがえげつないからね。あれの弟ですよ。ぴったりやんと思いながら観てました」といじりつつ「昔、リバイバルの映画館で『七人の侍』を観たときに感じたような感覚を思い出したなあって。もっと続き見たいなあっていう思いが、すごくあります」と感慨深げ。
「キー(渋川清彦)と話してたんですけど、『七人の侍』も黒澤 明さんがお金を使い果たして散々撮って、予算なくなって。映画会社が『お前なんぼ金使うねん。どんな映画撮ってんねん。見してみい』って言うて。前編見せて『この続きどうなんねん』って役員が唸って、そこからまた製作が続いたっていう話も聞いたことがあるんですけど、それに匹敵するくらい本当にやばい映画で。久しぶりに、スクリーンをはみ出す映画を観たかなっていう気がするという、良い言葉で終わります(笑)」と本作の魅力を力説していた。
高嶋博士の助手・渡邊助手を演じた祷は「豊田組は、オファーをもらったときはすごく痺れましたね。正直恥ずかしいですけど、現場ではすごく気張ってたなって、今思うと感じます(笑)」と照れ笑いを見せて「板尾さん(高嶋博士)と研究できるキャラクターとして、静かだけど胆力があるキャラクターにしたいなと思ったのと、あとはこのパワフルな物語とかキャラクターがいっぱい出てくる映画の中で、何か1つインパクトが欲しいなと思って、前髪をV字に切って現場に行きました(笑)」と役作りを回想。
そして「撮影前日に現場を見て、窪塚さんとか監督と会ったりして、まだV字が足りない気がすると思って、また切って(笑)。最終的に、撮影当日もちょっと時間があったので、V字を足していって、あの髪型になって。豊田さんにその状態で、現場で会ったときに、豊田さんが『攻めてるね』とか『おお』とか何も言わずに、『うん』って頷いて『じゃあやろう』って現場が始まったのが、私はすごく嬉しかったです」と明かした。

さらに祷は「他の現場にないなって思うのは、豊田組って豊田さんの映画をやりたいっていう愛がある人たちが集まっていますよね。それに加えて、豊田さんがキャストとかスタッフとか、どういう人と一緒にやるかをすごく選んで作り上げているチームっていう感じがして。私は初めてで、共演するのもほとんど初めての方ばっかりだったんですが、でも私のことを『豊田さんが選んだキャストなんだ。じゃあ、ウェルカム』みたいに、スタッフの方もキャストの方も、みんな他の現場よりもっとオープンな姿勢で迎え入れてくれるような感覚がありました。言葉にすると伝わりづらいかもしれないんですけど、豊田組の特別感というか、この組でしかない距離の近さだなと思いました」と振り返っていた。満足げに頷いていた豊田監督は、お寿司をおごると約束していたそうで、祷は「頑張ってしゃべりました」と笑顔を見せて、窪塚は「リハ通りなの?」と笑っていた。
最後にキャストを代表してマイクを持った窪塚は「さっきキララちゃんも言ってましたが、本当に豊田さんのことが好きな人間が集まって、スタッフもキャストも、特濃な感じでやっております。この1個前の『全員切腹』っていう短編の映画も、その前の『破壊の日』も、そして『狼煙が呼ぶ』を含めて、『狼蘇山』シリーズ4作の、一応は完結編だけど、さっきの板尾さんの言葉を借りれば、まだまだ先が観たいし、まだまだ先に一緒に行きたいなというふうに思える。ライフワークと呼んでもいいような感じで、豊田さんと仕事をさせてもらってて」とコメント。
「豊田さんがくれる役っていうのは、すごくぶっ飛んだ役なんだけど、パラレルワールドの自分みたいな。現実と虚構の境目がすごく曖昧になるような、そういう役をずっとやらせてもらっています。『あれ? これ豊田さんに話したことあったかな?』とか、『これいつも自分が言ってることだな』とか、そういう言葉を役を通して言ってます。でもそれは、豊田さんの言葉でもあるし、自分の言葉でもあって。豊田さんの言葉を伝えるスタンドみたいな立ち位置で自分がいるんだなと思うと、これからもこの道を邁進していきたいなというふうに、尻を叩かれて、かつ、肩も抱かれるみたいな感じの思いになって一緒にやってます。皆もきっとそんな気持ちがあるんじゃないかなと思います」とさらなる共作に意欲を示した。
そして、千原について窪塚は「インの前に前乗りされてたので、『よかったらお食事しませんか』っていう感じでお誘いしたら、ジュニアさんが快く来ていただいて、結構長いこと飲んだんですよね。そしたらお疲れだったから、途中で寝ちゃって。『じゃあ、そろそろ開きましょう』って感じで帰ったんですけど、『ジュニアさん、台詞大丈夫ですか?』って言ったら、『これから入れるんで』って言うんですよ。べろべろで寝てて、まあまあ長い文量で、ちょっと明日大変かもなって思ってたんですね」と回想。「翌日起きて、豊田さんに『豊田さん、昨日ジュニアさんを結構飲ませてしまって、疲れてらしたから寝ちゃってて。台詞が入ってないって言ってたんですよね』って言ったら、『あ、大丈夫。ジュニアは絶対に入れてくるから大丈夫』って言った通り、本番ノーミスで、あの存在感で芝居されてて、本当にすごいなと思って。でも本当は入れてたんですよね(笑)?」と称賛し、千原は「えらいもんで、ほんまに子どもの時から遊んでるから、あの訳の分からん文章がすっと入ってくる(笑)」と明かして会場を沸かせ、板尾は「仲良しってことやな(笑)」とまとめ、最後まで豊田組の結束ばっちりにイベントは幕を閉じた。
【COMMENT】
人はどこから来て、どこへ行くのか。それは、永遠に解けない謎である。だから人は悩む。答えはきっと心の中にあるだろう。心の中とはどこにあるのだろう。時空を超えた物語の中で、次元を超えた視点に辿り着くために、この映画を作らねばならぬと思った。最後の映画になる気がしている。映画に救われた者だけが、映画を救うと信じている。
監督・脚本・エグゼクティブプロデューサー:豊田利晃
公開表記
配給:スターサンズ
10月17日(金)よりユーロスペース他にて全国順次公開