
登壇者:蒔田彩珠、栁俊太郎、恒松祐里、結木滉星、川村 誠監督
芥川賞作家・村田沙耶香氏によるベストセラー小説を原作にした映画『消滅世界』(11月28日公開)がついに完成! 10月20日には新宿武蔵野館にて完成披露上映会が実施され、主演の蒔田彩珠、共演の栁俊太郎、恒松祐里、結木滉星、そして川村 誠監督が登壇した。
人工授精で子どもを産むことが定着した世界で、両親が愛し合った末に生まれた主人公・雨音を演じた蒔田は「脚本を頂いた時も撮影中も、この物語がどう映像化されて観客の皆さんに何を伝えられるのか不安でしたが、こうして初めて観客の皆さんに観ていただけるのは緊張もありますが、どのように受け取っていただけるのか楽しみでもあります」と念願の初上映に声を弾ませた。
長編映画監督デビューの川村監督は「素敵な俳優陣と一緒に本作を届けられるのはこの上ない喜び」と笑顔。村田氏による原作については「読んだ時に足下が揺らぐくらいの衝撃を受けました。性を題材にしているけれど、そこがテーマではないところが深い。普通とは何か、正しさとは何か? そんなところをえぐって来る」と絶賛し「村田さんによる文書に宿る美しさをどのように映像に落とし込めるだろうか? それが僕にとっての挑戦でした」と意気込みを表した。
家庭に性愛を持ち込むことに嫌悪感を抱く雨音の夫・朔を演じた栁は「5年前に初めて脚本を読んだ時は、都市伝説的怖さのある作品で面白いと思ったけれど、年々その世界が現実に近づいてきていて。都市伝説だと笑って話せなくなってきていると痛感しています。それを今のタイミングで皆さんに観ていただいて、どう伝わるのか。すごく楽しみ」と期待した。
そんな栁に初共演の蒔田は「年齢が10歳違うので、大人だなと。落ち着いて安心できる雰囲気があって、緊張せずにお芝居が出来た」と感謝し「栁さんのスタイルが……カッコいい!」と惚れ惚れ。これに栁は「え? 身長? 恐縮です」とはにかんでいた。
雨音の良き理解者として学生時代から雨音と親交を深める樹里役の恒松。主演の蒔田とは朝ドラ『おかえりモネ』で既に共演済だが「この映画の初顔合わせの本読みの時にマキマキ(蒔田)が持って来た鞄が私の持っている鞄と色違いで……。それを見た時に親友役出来るな!と思った。マインドが合っているから」と全幅の信頼を寄せていた。雨音と同じ高校の同級生・水内役の結木は初共演の蒔田について「その場に立っているだけで魅力的で、その場にいる雰囲気が雨音だったので、身をゆだねるというか、考え過ぎずにお芝居が出来ました」と蒔田の存在感を絶賛していた。
D.A.N.による劇伴&主題歌は川村監督の直談判で実現。栁が「衣装合わせの段階で監督からエンディングの曲を聴かせてもらって、それでイメージを伝えてもらえた。アプローチとして面白かったし、演じる上で助けられた」と言えば、蒔田も「その時私も一緒に聴きました。文字でしかイメージ出来なかったものが、音楽によって助けられたところもありました」と回想した。
本作は、世界から性が消えることで「恋愛」「結婚」「家族」などの在り方に翻弄される若者たちの姿を描く。それにちなんで「この世界から“消滅”してほしくないもの」をそれぞれ発表。川村監督は「社会不適合者で居場所がないと思い込んでいた20代の頃、世界の広さや多様性を教えていただいて救っていただいた恩がある」ことから「ミニシアター」を挙げた。結木は「人が笑っている顔が好きで、それを見て自分もつられて笑ってしまうから」という理由から「笑顔」と回答。一方、恒松が「猫!」と言うと、蒔田は「ちょっと待って! 私も猫って言おうとしていた~!」と悲鳴が。ここでも気の合う親友ぶりを見せていた。
さらに栁が「犬……」と言うと、蒔田は「えー! それも言おうとしていた」と困惑。そんな蒔田に対して大人の柳は「それなら僕は香りかな? 匂いがなくなったら寂しいかも」と蒔田のために回答を変更。そして当の蒔田は悩んだ末に「愛、ですかね~!? たくさんの人の愛があってここに立てています!」と答えると、親友・恒松は「うん、それだ! それが正解だ!」と共感していた。
最後に川村監督は「映画化に際して思ったのは、原作の答えを出すような作品にはしたくないということ。小説自体も考察が多く、実験性・前衛性のある物語です。それを思考実験的映像として皆さんに受け取ってもらって、性や家族、恋人、結婚、子ども、自分自身に向けて、普通とは?という問いになれば、この映画の成功だと思っています」と願った。主演の蒔田も「観ていくうちに自分事に思えてくる作品で、今の世界や愛について幸せについてなど普段考えないようなことに思いを巡らせることになるかもしれません。本編鑑賞後の不思議な感覚を楽しんでいただきたいです」と満員御礼の会場に呼び掛けていた。
公開表記
配給:NAKACHIKA PICTURES
11月28日(金) 新宿シネマカリテ他全国公開
(オフィシャル素材提供)