イベント・舞台挨拶

新政権発足当日に井筒和幸監督が吠えた!『火の華』公開直前試写会イベント

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 登壇者:小島央大監督、成 宏基(アニモプロデュース)
 特別ゲスト:井筒和幸監督

 10月31日(金)よりユーロスペースほか全国順次公開を迎える映画『火の華』。この度、10月22日(水)に渋谷ユーロライブで公開直前試写会イベントが開催され、上映後に小島央大監督、エグゼクティブプロデューサーの成 宏基(ソン カンギ、アニモプロデュース)、そして特別ゲストに井筒和幸監督が登壇した。

 小島央大監督の前作『JOINT』からその才能に着目していたという井筒監督は、開口一番「ようやった!」と絶賛。特に、主人公の島田がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する打ち上げ花火のリアリティを取り上げ、「あれ、本物の花火でしょ? CGではなく、実写でやるからこその迫力があった。花火の打ち上がるタイミングと人物の動きを合わせるのもさぞかし難しかっただろうに。とにかく素晴らしかったですよ」と興奮気味に話す。小島監督によると、このシーンがクランクインだったようで、「新潟・小千谷の花火大会で撮影したんですが、打ち上げ音が大きすぎて役者の声が届かず、全員叫びながら撮影していました」と撮影秘話を吐露。

 井筒監督は、本作が監督オリジナルの企画であり、独立プロによる製作であることにも触れ、「製作委員会のような企業の集合体がつくる、みんな責任逃れな映画が多い中で、『火の華』は思いの分かる連中だけでつくった、腹を括った映画ですよ」とその心意気にも心酔した様子。続けて「劇中には国に恨みを持つ隊長や、中国マフィアも出てきて……だいぶ“病んどる”映画ですよ、まるで『タクシードライバー』(※)やぞ、と。久しぶりに画面に食いついて観てました」と、とにかく井筒節が止まらない。

 PTSDを抱えた主人公を癒し、救いとなるのが“花火”の存在。小島監督は「いろいろ取材をしていく中で、一概には言えませんが、PTSDの症状の一つとして、“外に吐き出したい”という衝動があります。この映画では、間違った吐き方―――例えば最悪のケースとしてテロリストになる道ではなく、花火という救いによって苦しみを浄化させられるという希望を描きたかった」と説明。

 過去にフィルムで花火を撮ったことがあるという井筒監督は「デジタルだとペタッと見えてしまうところを、フィルムだと奥行きが出て、ちゃんと“球”に見える。花火って生き物なんですよね」と振り返る。それに対し、「僕も花火をいかに“生きたもの”にするかを追求したかった。デジタルでもちゃんと奥行きを出せるようにこだわりました」と語る小島監督は、カラリストと共に2ヵ月間スタジオに缶詰となり、花火の持つ本来の美しさや立体感を表現するために特殊なアプローチした日々を述懐。「35mmフィルムで撮影された花火の写真を参考にし、光の境い目や境界が“生き物みたいにじわじわと動いている”感覚を表現しました。そして、デジタル撮影やスマートフォンで撮った花火の映像では失われがちな、光の細かい振動感をどうやってスクリーンに出せるかも研究しました」。

 続けて「花火は美しいもの。でも美しいと思うだけでなく、“なぜ美しいのか?”に踏み込みたかった」と明かす小島監督。「そもそも花火の起源は、江戸時代、大砲を横に向けて撃ち、殺人のために火薬を使うのではなく、戰がなくなったことで火薬の使い所として上に打ち上げて遊んでいたところから始まったといいます。人々がそうやって遊んでいた背景には、戦がなく“平和があったから”こそですよね。この映画でも、 “戦争がないから花火があげられるのだ”ということを平和の象徴として強調したいと思っていました」と本作に込めた思いを語った。さらに「現代は価値観が多様化しすぎていて、和解し得ない時代に突入していると思う。でも花火は、人種やイデオロギー、左翼や右翼にかかわらず、誰もがみんな、空を見上げて感動できるもの。そこで僕たちは“もともと平和について話をしていたはずだよね”という原点に立ち返れる。議論の場や対話のきっかけを作りたいという願いを込めました」と語気を強めた。

 奇しくも新政権が発足したこの日。井筒監督は「日本の歴史を振り返っても、80年間、誰も反省していないんだよ、この国は」と警鐘を鳴らす。自衛隊のPKO活動やそれに伴うPTSDの問題、平和への願いや憲法改正への問題提起などが込められた本作について「国家権力にここまで切り込んだ映画はない。国そのものに訴えかける映画だと思いますよ」と締めくくり、最後に「今の国会議員たちにも本作を観せて、自衛隊についてどう考えてんだ?と聞きたいね」という鋭い問いを突きつけた。
 映画『火の華』は、10月31日(金)ユーロスペースほか全国順次公開。

 (※) マーティン・スコセッシ監督が、ロバート・デ・ニーロを主演に迎え、ベトナム戦争から帰還した孤独なタクシードライバーの姿を通して大都会ニューヨークの闇をあぶり出したサスペンス。

公開表記

 製作・配給:アニモプロデュース
 10月31日(金) ユーロスペースほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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