イベント・舞台挨拶

第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門正式出品『アニタ 反逆の女神』公開初日トークイベント

©2023 Brown Bag Productions, LLC

 登壇者:立川直樹(プロデューサー、ディレクター)、浅野順子(画家、モデル)

 「ロ-リング・ストーンズの女」アニタ・パレンバーグ。
 始まりはブライアン・ジョーンズとの恋、ブライアン没後はキース・リチャーズと運命的な絆を結び3人の子をもうける。
 映画で共演したミック・ジャガーをも虜にしてしまう魔性の女。
 しかし彼女は単なる彼らの「女」ではない。
 創造の源となり、ファッションを一変させ、音楽そのものにかかわり、誰の影にもならず自分を生きた。
 スカーレット・ヨハンソンの声で蘇る、反逆の女神。

 第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門で上映されたローリング・ストーンズのミューズとして知られるアニタ・パレンバーグのドキュメンタリー映画『アニタ 反逆の女神』が、本日10月25日(土)より新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺他にて公開初日を迎え、新宿K’s cinemaでは、12時20分の回上映終了後に、プロデューサー、ディレクターの立川直樹と、画家、モデルの浅野順子によるトークイベントが行われた。

 立川と浅野は1歳違いの同世代。立川が「あれを(映画の中のようなことを)やっていたら、写真週刊誌がすぐ撮ったり、今なかなか不自由な時代になっているので(笑)。そう考えたら、その時代をここまで見事に切り取った映画ってすごいなと思う。たぶん女性監督2人が撮っているからか、質問の答えとか、男性の監督だったらこうは撮れないなと思うところがあった。それは見どころです。そして編集が針仕事をするように細かいと思う。どうでしたか?」と浅野に聞くと、「私もそうなんですが、彼女は自由に人生を、何も後悔せずに生きた。その彼女の生き様がよかったです」と語る。立川はまた「ロックンロールをやる、ファッション、映画、アートをやるというと、それは僕らの世代では反社会的というか、一般社会でもう生きていく気がないんだねということだったよね」と当時の状況を語った。

 アニタをいつ知ったのか?という立川の問いかけに浅野は「実はあまりよく知らなかったんです。この作品で状況も含めてよく分かったかな、という感じです。それまでも女性の存在というのは、いろいろ聞いていたけれど、アニタの存在をあからさまに知ったのは、今回初めてです」と話す。立川が「アニタ・パレンバーグ、マリアンヌ・フェイスフル、ニコが、僕はエキセントリック・ビューティーの極みだと思っている」と話すと「男の生き方とは違いますね。女の人というのは途中で妊娠したり、いろいろな覚悟を持って生きなければならないことがどんどん増えてくる。彼女の生き方は、子どものこと、相手のことも考えているのだと思うが、自分の生き方に熱心で、自由に生きられたのではないかと思う。でも結果後悔がなく、あのように生きられたというのは、人生にとってとても素晴らしい生き方をされたなと思います。なかなかできないですからね」と浅野は答える。「存在が女優とかモデルであるのを超えてしまって、いわゆるアイコンという言い方が、これほど似合う人はいないですね」という立川の問いかけに、「そうですね。最後のファッション・ショーに出てきた顔なんか、自信に満ち溢れていて、素晴らしいなと思います。最後が良ければ、いいんじゃないかなと思いました、自分の人生を自分で恥じることはないと思います」と浅野らしい返答が。アニタは美容整形が嫌いだということに立川が触れると、浅野も「私もダメです。まあ痛いのが嫌いだということもありますが(笑)」と共感していた。「MTVが81年に出て来てから後のロックの人たちって、ミック・ジャガーやキース・リチャーズがメイクしたのと、いわゆるビジュアル系の人たちがメイクしたのと、全然違うんですよね」という立川に、「そう思います」と浅野が答える。「この映画を観ていて、何しろ覚悟っていうのがね」というと浅野も受けて「そうですね、覚悟があれば、最後には笑えると思う」と話す。

 映画の作り方に関して立川は「描かれる時代は古い、60年代とか70年代なんだけど、作り方は全然今の時代とコミットする作り方をしているところがあって、すごくうまいと思う。勇気を貰えると思う」と語り、浅野は「若い方にもどんどん観てほしいですね。ただ勘違いさえしなければ、ですが」と笑う。

 また「同世代の女性に聞きたいんだけど、ブライアン・ジョーンズに会って、(アニタが)ひとめぼれするじゃないですか。ひとめぼれする瞬間って、どういうことが一番大きな要素なんですか?」との立川の問いかけに、「なんなんだろう、やっぱり色気かしら。その人が持っている……私もブライアン・ジョーンズが一番好きだったのですが。自分の子どもにもみんな“ブライアン・ジョーンズ・カット”にしていたぐらいなので。彼がもし今でもいたら、音楽性も全然変わっていたのではないかと思う。そういう芸術的な部分で、アニタは見抜いたんだと思います。他のメンバーとは違う存在だった」と浅野は語る。

 「アンドリュー・ルーク・オールダムがミック・ジャガーをメインにしてやって行こうと決めた時に、少し芸能系のノリが入ってきて、ミックもその辺は心得ていたんだと思う。ブライアン・ジョーンズの、少し世の中に背を向けた感じは、ピンク・フロイドのシド・バレットと少し似ている感じがする。そのブライアンのあと、アニタはキースに行くじゃないですか。周囲に何を言われてもさらっとそうする」と話す立川に、「自分の生き方に正直なんだと思いますね。そう思われようが、そういうことは彼女には関係ないんじゃない? すごいですね」と浅野は笑う。

 あと、アニタのすごい点として「女優になった時、演技のセンスが従来の女優のセンスじゃないところがあります。表に出た時に自分をどう見せるかっていうのを、浅野さんも考えると思うんですが、どうですか?」とういう立川の質問には浅野は「あまり考えない。もうこのままです。いいか悪いか分からないけれど、このまんま」と爽やかに答えた。
 続いて立川からの「映画は何が好きなんですか?」という問いに「息子(浅野忠信)の映画かな?」と浅野は答え、最近作の映画『レイブンズ』が面白いという話題になる。「今、日本の俳優さんのほうがロックなんだよね」という立川に、浅野は「そうですね。リアルな感じがしますよね」と返答。日本のロックバンドの話、昔の女優の話、アニタと関係の深かったマリアンヌ・フェイスフルの話等、尽きぬ話題で盛り上がり、楽しいトークの時間は終了した。

 『アニタ 反逆の女神』は、本日より新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺他で上映中。

アニタ・パレンバーグ

 1942年生まれのイタリア系ドイツ人のモデル、俳優、ファッション・アイコンであり、1960-70年代のロック文化における象徴的存在。多言語を操り、反体制的で自由奔放。彼女は、自身のペルソナとクリエイティビティで時代を体現した先駆者。彼女がいなければ、ローリング・ストーンズのイメージも、ロックとファッションの結びつきも大きく違っていたかもしれない。周囲からは「ミューズ」「It Girl」「ロック界のワルキューレ」と称された。2017年没。

公開表記

 配給:オンリー・ハーツ
 新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺他にて公開中

(オフィシャル素材提供)

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