
「コンビニ人間」で世界的人気を博した芥川賞作家・村田沙耶香がまた快挙を達成した。11月5日に発表された野間文芸賞を、新作長編「世界99」が受賞し、大きな話題となっている。その村田のベストセラー小説「消滅世界」は、今春に英語版が刊行され、アメリカのニューヨーカー誌でも映画化が報じられるなど、再び世界的注目を浴びている。その「消滅世界」を、気鋭の映像ディレクターである川村 誠が監督・脚本を手掛け、著者初となる実写映画化。また、11月10日に発表された第50回報知映画賞の作品賞に本作がノミネートされた。
映画『消滅世界』は、全国公開中。
映画、音楽、Alive Painting ―― 3者の才能が揃って誕生した圧巻の映像体験!
D.A.N.が書き下ろした主題歌「PERFECT BLUE」スペシャルムービー解禁!
映画『消滅世界』は、結婚生活への性愛の持ち込みが禁じられ、夫婦間の性行為がタブーとなり、人工授精で子どもを授かることが定着した世界を舞台に、心から愛し合った夫婦の自然妊娠で生まれた少女・雨音(蒔田彩珠)が、自分の周囲にある“普通”と、自らの内面から湧き上がる欲情に向き合っていく物語。
大人へ成長した雨音は、性愛のない清潔な結婚生活を望み、夫・朔(栁俊太郎)以外の男性や二次元キャラクターと恋愛を重ねていく。だが、恋人を持ちながらも思うように恋愛関係を築けない雨音。それは朔も同じだった。二人は、千葉に建設された実験都市・エデンへの移住を決意する。エデンでは、選ばれた住民たちが一斉に人工授精を行い、生まれた子どもたちは住民全員の子として愛され育つ。子どもたちにとっては、大人たちは全員「お母さん」なのだ。二人にとって理想郷にも思えたエデンでの“正常”な日々は、二人のある思惑を契機に“夫婦関係”を大きく狂わせていく――。
この世界観を音で彩るのは、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上 輝(Dr)の3人によるバンド D.A.N.によるミニマルミュージック。国内のみならず海外へ活動の幅を広げ、高い評価を得る彼らが、映画劇伴と合わせて主題歌を初めて手がけたことでも話題を集めている。
もともとD.A.N.の大ファンだった川村 誠監督は、本作の脚本執筆中にアルバム「NO MOON」(2021年)を聴き、そのディストピア的な世界観の中に漂う美しさに魅了され、本作と高い親和性を持つと確信し、劇伴制作のオファーを決意。また、出演者の栁俊太郎がD.A.N.の「SSWB」のミュージックビデオに出演していたことにも縁を感じたという。
D.A.N.は2022年からライブ活動を休止していたため、制作依頼のハードルは高かったが、本作の世界観に興味を持った彼らは快諾。「クランクイン前の映像もない状況にも関わらず、彼らがインスピレーションだけで作った最初のデモを聴かせてもらった時の衝撃は今でも忘れません。想像していた、漂白され、消えそうな中で微かに光る希望を感じさせるようなエンディングのイメージがそこにありました」と川村監督が語る通り、D.A.N.が創造した劇伴はまさに『消滅世界』そのものだった。さらに劇伴のみならず、撮影前にはすでに主題歌のラフまで出来上がっていた。撮影映像に合わせて劇伴を作り、主題歌を書き下ろすのが一般的な制作進行の中で、D.A.N.の制作意欲は並外れていた。
川村監督は撮影中、キャストやスタッフとの打ち合わせの時にもD.A.N.の劇伴を聴かせ、この絶好の機会を最大限に活かした。主演の蒔田彩珠や、栁俊太郎も「イメージ作りにすごく役立った」と語り、演じる上での助けになったと好評だった。「(蒔田演じる)雨音たちキャラクターに寄り添い、メロウで白昼夢を見ているような感情にさせてくれる。まさにこの映画を形作る楽曲を作っていただきました」と、川村監督のD.A.N.への感謝は尽きない。
その主題歌「PERFECT BLUE」のスペシャルムービーが完成した。
Floating Pointsと宇多田ヒカルが合流し話題となったSONICMANIA 2025でのVJパフォーマンスや、LiSA、RADWIMPSらともMVでコラボレーションしている画家・中山晃子による、液体と色彩が絶えず変化し続ける「生きている絵画=Alive Painting(アライブ・ペインティング)」と、川村監督の映像のコラボレーションが生み出した、圧巻の映像美のシークエンスだ。
今回のコラボレーションは、川村監督がSONICMANIA 2025で、中山とFloating Pointsとの競演を目の当たりにした時、その生命を生み出すようなパフォーマンスに圧倒されたことがきっかけ。川村監督は「人物の内面に潜っていくような、新たな映画の側面を感じてもらえるような作品を目指しました」と、中山とのコラボレーションの到達点について説く。また、この「PERFECT BLUE」は、ライブを経て、かなりアレンジされた状態でリリースされる予定で、「映画だけで聴けるこの状態の楽曲を、なんとかスペシャルムービーという形で皆さんに届けられないだろうか」と川村監督が思案したことも、このスペシャルムービーが誕生する経緯のひとつとなった。
完成したスペシャルムービーについて中山は、「原作から始まり、映画や音楽をじっくり味わいながら制作に入ることができ、とても贅沢な機会でした。映像化するにあたっての、監督と私の共通する解釈、異なる感覚を持つところ、自分が読みこぼしていた箇所などに気がついたり、制作を通して原作の解釈を深められたことが面白かったです。個人的にも心酔しているD.A.N.の楽曲とご一緒できたことが嬉しく、D.A.N.、川村監督、私、と異なるアーティストが『消滅世界』の世界をそれぞれ読み込んで取り組むことができ、貴重なコラボレーションとなりました。映像が楽曲と溶け合ってゆくところを、ぜひたくさんの方にご覧いただければ幸いです」と語り、川村監督も「性・生殖といった人間の本質に関わる本作のテーマ性は、流動する生命体の姿を映し出しているような中山さんのアート・世界観に肉薄し、このスペシャルムービー自体が映画と楽曲の神秘性を増幅するような作品になったと確信しています。村田沙耶香さんの『消滅世界』という巨大な仮想空間で、様々なアーティストが競演し、映画の枠を超えて派生し拡散していく――その集大成のようなプロジェクトになったのではないかと考えています」と、完成したスペシャルムービーに自信を見せる。D.A.N.の櫻木大悟も、今回のコラボレーションが「新たな感覚の発見に近づくチャンス」となったそうで、「小説や映画、絵画や音楽を鑑賞した後に感じる余韻というものは言語化する事が出来ない領域が広く存在すると思います。今回はその四つの異なる表現方法のマリアージュによって新たな共鳴共振が生じていると思います」とコメントを寄せた。
川村監督の映画、D.A.N.の音楽、中山のAlive Painting。3者の才能が揃って誕生した究極の映像体験。その世界観にも繋がる映画『消滅世界』は、全国公開中。

中山晃子 コメント全文
・スペシャルムービー制作にあたりどのように取り組んだか
原作『消滅世界』の中で、色彩をメタファーとして、みずみずしい本能や、色に紐づいたあらゆる情動、その色彩が示唆する意味などが鮮烈に描かれており、漂白されてゆく世界との対比の鮮やかさが印象に残っています。
インクを使う中で、本を読み解くように、どの色彩・現象にもそういったメタファーが宿っているように色を放とう、と、意識しながら描きました。
・制作過程や川村監督とのコボレーションの感想
オファーをいただいた時には映画が完成していましたので、原作から始まり、映画や音楽をじっくり味わいながら制作に入ることができ、とても贅沢な機会でした。
小説では読者の頭の中でそれぞれさまざまなイメージをもって育まれる世界ですが、映像化するにあたっての、監督と私の共通する解釈、異なる感覚を持つところ、自分が読みこぼしていた箇所などに気がついたり、制作を通して原作の解釈を深められたことが面白かったです。
そして、制作に入ってからは、人物の外側の環境は漂白され整えられてゆくことが、人物の中身に色があることを際立たせること。隠すことのできない蠢くものの質感が感じられるような、そういった絵を目指しました。
・完成したスペシャルムービーについて
個人的にも心酔しているD.A.N.の楽曲とご一緒できたことが嬉しく、D.A.N.、川村監督、私、と異なるアーティストが『消滅世界』の世界をそれぞれ読み込んで取り組むことができ、貴重なコラボレーションとなりました。
『PERFECT BLUE』を何度もループしながら今回の絵を描いていましたが、滑らかで透き通る音とその美しさが切なく感じる日、心地よさに溶けてしまおうと思うような時、冷たさの中にもほんのりとあたたかみがあり、希望の見えるようなメロディーなど、聴くたびに自分の変化と呼応するような楽曲だと思っています。
映像が楽曲と溶け合ってゆくところを、ぜひたくさんの方にご覧いただければ幸いです。
櫻木大悟 (D.A.N.) コメント全文
小説や映画、絵画や音楽を鑑賞した後に感じる余韻というものは言語化することができない領域が広く存在すると思います。
今回はその四つの異なる表現方法のマリアージュによって新たな共鳴共振が生じていると思います。
また新たな感覚の発見に近づくチャンスとこの度の貴重なコラボレーションに参加させていただきありがとうございました。
櫻木大悟 (D.A.N.)
川村 誠監督 コメント全文
兼ねてより中山晃子さんのAlive Paintingの美しさには魅了されていましたが、SONICMANIA 2025でFloating Pointsとの競演を目の当たりにした時、その生命を生み出すようなパフォーマンスに圧倒され、鮮烈なビジュアルが脳裏に焼き付きました。
主題歌「PERFECT BLUE」はライブを経て、かなりアレンジされた状態でリリースされるとD.A.N.サイドから聞いていましたので、映画だけで聴けるこの状態の楽曲を、なんとかスペシャルムービーという形で皆さんに届けられないだろうかと思案している時、この楽曲とAlive Painting・映画とのコラボレーションを発想し、中山さんにご連絡させていただきました。中山さんはすぐに原作小説を読んでくださり、合わせて楽曲を聴いていただいたことで直感的にAlive Paintingと『消滅世界』の親和性を感じていただけたように思います。映画をご覧いただいた時には「あらゆる暗喩が散りばめられていて、小説では気がつかなかった関連性を見つけたり、未来の宗教画にあるメタファーを読み解いてゆくような面白さがありました。」と大変有り難いお言葉をいただき、そこからどのような道程でスペシャルムービーを構築していくかご相談していきました。
制作はできるだけ中山さんの中にあるイメージを自由に出していただくことに主眼を置きつつ、Alive Painting と映画のシークエンスが融合し溶け合っていくようなビジュアルを思考し、『消滅世界』の登場人物の内面に潜っていくような、新たな映画の側面を感じてもらえるような作品を目指しました。
性・生殖といった人間の本質に関わる本作のテーマ性は、流動する生命体の姿を映し出しているような中山さんのアート・世界観に肉薄し、このスペシャルムービー自体が映画と楽曲の神秘性を増幅するような作品になったと確信しています。
村田沙耶香さんの『消滅世界』という巨大な仮想空間で、様々なアーティストが競演し、映画の枠を超えて派生し拡散していく――その集大成のようなプロジェクトになったのではないかと考えています。
<中山晃子 プロフィール>
https://www.akikopainting.com(外部サイト)
画家。液体から固体までさまざまな材料を相互に反応させて絵を描く「Alive Painting」というパフォーマンスを行う。
この流動する絵画を軸に、インスタレーション、写真等、の作品も精⼒的に発表、
扱うメディアは多岐にわたるが、⼀貫して異なるもの同⼠の関係性を描く。
WORKS:
Floating Points MV/ツアーにライブビジュアルとして参加(SONICMANIA 2025にて宇多⽥ヒカルともコラボレーション)
LiSA『明け星』MV(テレビアニメ「⻤滅の刃」無限列⾞編 オープニングテーマ)
RADWIMPS-Light The Light
⼤河ドラマ「光る君へ」オープニング 他
<D.A.N.プロフィール>
https://d-a-n-music.com(外部サイト)
櫻木大悟(G, Vo, Syn)、市川仁也(B)、川上輝(Dr)から成るスリーピースバンド。2014年に結成し、2016年4月に1stフルアルバム「D.A.N.」を発表。2017年11月には初の海外公演を行い、これまでJames BlakeやThe xxの来日公演でオープニングアクトを担当、FUJI ROCK FESTIVALにも3度主演。2021年10月には3枚目のフルアルバム「NO MOON」をリリース。2022年末よりライブ活動を休止し、各メンバーによるソロ活動やアルバム『NO MOON』リミックスシリーズなどを発表してきた。そして2025年8月3日、満を辞して2年半ぶりとなるバンド活動の復帰と、今年迎えるデビュー10周年を共に記念したライブMicrosound 日比谷野外音楽堂単独公演を開催、ソールドアウトさせた。
公開表記
配給:NAKACHIKA PICTURES
11月28日(金) 新宿シネマカリテ他全国公開
(オフィシャル素材提供)






