
登壇者:板垣李光人、中村倫也、久慈悟郎監督、武田一義(漫画家)
映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』公開初日舞台挨拶が都内で行われ、声優を務めた、板垣李光人、中村倫也、メガホンをとった久慈悟郎監督と原作・共同脚本の武田一義が登壇して作品についてクロストークを行った。
本作は、第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した武田一義の漫画「ペリリュー −楽園のゲルニカ−」(全11巻/外伝全4巻)を劇場アニメ化。物語の舞台は太平洋戦争末期。「ペリリュー島の戦い」で、終戦を知らずに2年間潜伏し続け、最後まで生き残った1万人の兵士のうち、最後まで生き残ったのは僅か34人だった……。3等身で描かれるかわいらしいタッチの人物とは裏腹に、“戦争が日常と化す狂気”が圧倒的なリアリティで描き出される。
上映後の舞台挨拶で、板垣は客席を見渡し、観客たちの反応を見て「感無量です」と笑顔を見せた。田丸を演じた感想を聞かれた板垣は「いまの自分のままで、自分がそのまま感じた部分を田丸に反映させていきました」と説明。劇中、板垣は、亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という仕事を命じられた漫画家志望の主人公・田丸 均を演じている。

田丸の相棒・吉敷佳助を演じた中村は、客席に向かって「たくさんの方に観て、知って、感じて考えていただきたい作品です。こんなにたくさんの方に観ていただけたことが嬉しいです」と伝える。

久慈監督は声優のキャスティングについて「声のお芝居のコンセプトは等身大の若者の声をつけていただきたいと思って、お願いしました」と話す。板垣については普段話している姿を見て、田丸にピッタリだと思いオファーしたという。中村の吉敷役については「最初は、実力のある俳優さんならどなたでもと思っていましたが、物語の中で、吉敷はお父さんがいない農家の生まれ、妹とお母さんと暮らしている長男という設定でした。中村さんの声にはその雰囲気が出ていたのでお願いしました。予想超えて良かったです」と中村の繊細な表現を絶賛した。

また、久慈監督は、「かわいい画で戦争を描くという武田先生のコンセプトをアニメでも守ろうという気持ちでやっていました」と話し、板垣と中村について「声を作っていただくというよりは、お2人の声で演じていただくということを大切にしました」と話す。また、久慈監督は2人の演技について「(それぞれの)最後のセリフは大事なところだと思っていました。スタッフ一同注目して聴いていたのですが、お二人とも一発でOKでした」と大満足の様子。最後のセリフに注目。
原作者の武田は「お二人の第一声が想像を超えていました」と大絶賛。「本番のアフレコに立ち会いました。その前に予告編でお二人の声を聞かせてもらった時、自分のなかの田丸と吉敷がいきなり実現したのです。ぴったりはまっていました」と大絶賛。

主題歌である「奇跡のようなこと」で歌唱を披露している上白石萌音からサプライズでビデオレターも到着した。上白石の歌声について、板垣は「映画を観終わった後の余韻をすごくやさしく撫でてくれるような曲。すてきな曲をありがとうございます」と上白石に感謝を伝えた。中村も「子守唄のような、レクイエムのような、包み込まれるような……。メロディと声が前を向かせてくれるような歌声。すごく美しくてやさしくて、あたたかい曲が主題歌で良かった」と絶賛した。

上白石からは、板垣と中村に「お互いの声を聞いた時の感想を!」とのリクエストがあり、中村は「俳優ならお互いに褒め合うのが難しいことは分かっているのに、悪い子だねえ~」と上白石に恨み節で笑いを誘った。

板垣は「田丸は吉敷と出会えてから、吉敷に心身ともに助けられていきます。中村さんの声にはちゃんとガッツリ体重をのせて寄りかかっても大丈夫だという安心感がありました」と感謝を伝えた。

中村は、板垣について「大きい声を出すと時折割れるのがエモくていい! 読点でちょいちょい区切ってしゃべるのがすごくうまい」と称賛した。

上白石が歌う主題歌について、久慈監督は「映画のラストにふさわしいやさしい声。作品のラストに田丸の『ただいま』という笑顔があっても、作品を観終わって、まだまだ悲しい気持ちでいる皆さんを、やさしい声で帰り道を帰らせてくれるような歌だなと思います」と絶賛した。
キャスト陣の立つ後ろのボードには、試写などで作品をいち早く観た人たちからの感想が書かれており、映像と内容のギャップに触れている感想も多かった。板垣は「絵のタッチは可愛らしいのですが、お話はリアルに戦争の残酷さを伝えています」と話し、ペリリュー島の美しい色彩の中で繰り広げられた凄惨な戦争の有り様を、全世代の人々に伝えることができるように描かれたことに感心し、称賛した。

SNSで感想をチェックしているという久慈監督は「作りとして泣かせたいというよりかは田丸たちが過ごした時間、事実をひとつひとつ追っていって、考えてほしいという思い、それが伝わっていると思える感想もあったので嬉しかったです」と話す。
当日、観客と一緒に映画を観賞していたという武田は「原作から追いかけてくださる方が多いので、原作の『ペリリュー』が映画の尺で短くなることへの期待と不安がありました。でも、出来上がった映画は「ちゃんと『ペリリューだった』」と安どした様子。エピソードを削る作業が大変だったことも明かしていた。
「若い世代にこそ見てほしい心震える映画でした」との感想もあり、武田は「若い人たちに観てほしいというのが絵柄や田丸の性格に出ています。お子さんが観てくれるのは嬉しいです」とよろこびを伝えていた。
板垣は「鑑賞後に、誰かに伝えたい、知ってもらいたいと思ったら広めてください」と願いを伝えた。

(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:東映
絶賛上映中
(オフィシャル素材提供)





