
登壇者:太田隆文(監督)、藤井武美、水津亜子、久場寿幸、酒井康行、田中美里
脳梗塞はよく聞く病気だが、詳しく知る人は少ない。それを体験したのが『向日葵の丘 1983年・夏』『朝日のあたる家』等で知られる太田隆文監督。「僕の闘病生活が誰かの役に立てば」と、自身の経験を映画化した。
初日舞台挨拶には、監督と、主人公・大滝隆太郎の妹・さくら役の藤井武美、母・秋子役の田中美里、介護士・マープル役の水津亜子、カメラマン・三村役の久場寿幸、担当医・柳葉役の酒井康行が登壇した。
それぞれに、本作制作の経緯、本作に出演し、完成した映画を観ての感想、太田監督が脳梗塞になってからのSNSの反応などについて聞いた。
冒頭監督が、「今観ていただいたのは、全部本当の話です。僕自身が、2年前に経験したことをそのまま映画にしてみました。“脳梗塞”って日本では1年に15万人が発症し、よく聞く言葉ですが、具体的にどういう病気か知らない人が多い。脳梗塞ってどういうものなのかという映画を作ったら伝わるんじゃないかと思いました。重い病気になると、心も病むんです」と本作制作の経緯を説明した。
窪塚俊介演じる主人公の監督・大滝隆太郎と妹のさくらの母・秋子役の田中美里は、さくら役の藤井武美について、「『向日葵の丘』ではみどりという同じ役で、今回は親子」と嬉しそうに挨拶。田中は、「この映画に感謝していることがあって、実は昨日の朝に、片目が見えなくなったんです。5分頃真っ暗になって、そのあとぼやーっと見えるようになって、『そういえば監督も目が見えなくなったと言っていた』と思い出して調べたら、『放っておくと、脳梗塞につながるかもしれない』と書いてあったんです」と告白すると、劇場の観客はショックで息を呑んだ。監督は、「舞台を降りてすぐ病院に行ったほうがいい!」とアドバイス。田中は、「『ちょっとした症状を見逃さないことが大切』ということが、この映画を観たら伝わってくると思うので、私自身も救われたなと思っています。今日病院に行ってきます」と笑顔で約束した。

介護士・マープル役の水津亜子は、「監督が、映画で描かれていることを、SNSで切々と書いているのをリアルタイムで見ていたので、映画になったというのは、胸に迫るものがあります」と感極まった様子。

循環器内科の担当医・柳葉役の酒井康行も、「映画でも描かれている、監督のSNSに的外れなコメントが来たことのも目の当たりにしていました」と話し、「『もしも脳梗塞になったなら』という映画に出演するとお知らせしたら、自分が脳梗塞になったことがあるとかご家族が脳梗塞になっただとか、いろんな話を聞いて、意外と身近な病気だということが分かりました」と実感したそう。

監督は、「(病人のつらさを忘れないよう、)病気のうちに撮りたかった」とのことで、カメラマン・三村役の久場寿幸は、「闘病されながらも作品を作り続けたというのは、本当にすごい人だと思いました」と改めて話した。

監督は、「SNSにはとんでもないコメントが山ほどきて、毎日落ち込んでいました。僕は心臓が悪いのに、『少しは運動をするように』というコメントなどもありました。『お大事に』と『ゆっくり休んでくださいね』以外は言わないように!」と観客にアドバイスした。

最後の挨拶で藤井は、「監督自身が経験したからこそできた映画だと思います。病気になった方に、どう話せばいいだろう、どう支えればいいんだろうということが分かる映画なので、たくさんの人に観てていただきたいです」と話した。

田中は、「重たい題材かもしれないですけれど、監督が軽やかなタッチで描いているので、気軽に観ていただいて、脳梗塞ってどういうものかを知っていただけるきっかけになればと思っています」とメッセージを送った。
公開表記
配給:渋谷プロダクション
新宿K’s cinemaほかにて公開中






