
登壇者:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、大友啓史監督
映画『宝島』の完成報告会見が都内で行なわれ、出演者の妻武木聡、広瀬すず、窪田正孝とメガホンを取った大友啓史監督が舞台挨拶に出席してクロストークを行った。

本作は、史実に記されない真実を描いた真藤順丈の同名小説が原作。戦後のアメリカ統治下の沖縄を舞台に、戦争に翻弄され運命に絡め取られた人々の姿が壮大なスケールで描かれる。2019年の原作権取得から6年、コロナ禍などで2度の撮影延期を経て、スタッフ・キャスト一が一丸となって、情熱を注いだ作品がやっと完成した。
主人公・グスク役を演じた妻夫木は「この映画は(撮影が)2回流れて、ようやく完成することができました。今日を迎えることが出来て本当に感慨深いです」としみじみ。

大友監督も「この映画は紆余曲折あって、諦めようかなと思ったこともありました。俳優たちがこの企画をちゃんと待っていてくれて、すばらしい演技をしてくれました。こうして今日、お披露目できることを本当に心強く、そして嬉しく思います」とコメント。
完成した作品について、妻夫木は「まだ客観的に見られていませんが、この作品が持つ圧倒的な生命力を感じました。観終わった後に、“あっ、生きていかなきゃいけないな”と心の底から思いました。死があるからこそ生がある。受け継がれていく何かというのは、僕たちも持っている。それに支えられて僕たちは生きているのではないか。だからこそ、精一杯生きていかなければいけない。そういう思いがはすごく湧き上がりました」と話す。妻夫木にとっては、2006年に出演した映画『涙そうそう』が今作と同じコザで撮影されたこともあり、同所を舞台とした本作に運命的なものを感じたという。

幼馴染のヤマコ役を演じた広瀬は、少し間を置いてから「大友監督にはいろんなものをくらいすぎて疲れました……とお話したのですが、血が騒ぐようなシーンがとても多くて、(完成品を観て)自分が知らなかったシーンもたくさんあったので、これは大変だっただろうなって。撮影の日々が濃厚だったなって思い返すことも、たくさんありました。楽しく、苦しんで、もがきながら演じたことがとても嬉しい体験でした」と大変だったという撮影を振り返った。

オン(永山瑛太)の弟・レイ役を演じた窪田も作品を観て「死というものが(劇中の)彼らにとってはいつも隣り合わせにあるから、死という概念が今とは全然違う感覚。全力で今を生きている青年たちの思いを客観的に見たときに、生きている魂を感じました」と熱くコメント。

大友監督は「原作を読んで、(人間の)生きるエネルギーを痛切に感じました。映画を通して、彼らが生きた人生を皆さんに追体験してほしい。それを役者たちも感じながら演じてくれてたんだと思い、心強く感じました」と伝えた。

この日、出席できなかった永山瑛太からビデオレターが届いた。1952年、アメリカ統治下の沖縄では、米軍基地から物資を奪い、困窮する住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。永山は、レイの兄で皆の英雄的存在だが突然失踪するリーダーの“オン”を演じている。混沌とした時代を全力で駆け抜ける時代、“オン”の姿が圧倒的に魅力的だ。キャスト陣は口々に「“オン”は瑛太さんじゃなければ……」と称賛の声があがった。
永山は「撮影が始まる前から“オン”を演じることの重圧にどう向かっていけばいいのかという葛藤がありました。大友監督と共演者に全部委ねていいかな……。というつもりで身を投げるような気持ちで役に挑みました。僕は、涙腺が弱くて、完成した作品を観て何度も泣きました」と話した。

妻夫木は「何度も共演していて、彼(永山)がいるだけで心強いし、彼が魅力的な“オン”ちゃんを演じてくれたおかげで、グスクという役を演じられました」と永山に感謝を伝えた。
窪田も「誰よりも大きな背中で、誰よりも自由に、風のように駆け抜けていた姿が印象に残っています」と永山の演技を絶賛した。
質疑応答で、撮影中の印象的だったことについて聞かれると、妻夫木は、沖縄に住む親友の家に広瀬さんや窪田さんと訪れ、美味しい鍋を食べたというエピソードを楽しそうに披露した。
窪田は「初めましてなのに、初めましてじゃない感覚で、ウェルカム!って感じでした」と話し、広瀬は「クランクインの前日にお邪魔して、みんなで一緒にカチャーシー(沖縄の伝統的な踊り)を踊らせていただいたのですが、温かくてフレンドリーでとても楽しかったです」とにっこり。
9月の公開まで妻夫木が“「宝島」宣伝アンバサダー“と名乗り、全国を回ることが発表された。ブルーの名刺も取材陣に配られた。妻夫木は「この映画は、皆さんに生で会いに行って宣伝したいなと思っていて。僕にとってこの作品は、映画を超えている存在になっているんです。『目の当たりにしてもらいたい、体験してもらいたい、感じてもらいたい』って思っています」と力強く伝えた。 今後、妻夫木と大友を中心に、沖縄、静岡、富山、長野、北海道など全国を回る予定。場所によって広瀬や窪田も参加する予定。

史実として語り継がれているコザ暴動のシーンでは延べ2000人を超えるエキストラが投入された。大友監督は、群衆一人ひとりにまで演出を加えて当時の息遣いまでも再現した。感情が爆発するシーンなど、注目のシーンが満載。大友監督は「どこに行くか分からない感情のうねりとか、どう現場を混乱させるかということは演出するものがコントロールするのではなく、そこに役者を放り込む。僕は黙ってそれを撮りたかったということ」と話した。

最後に大友監督は「持てるものすべてをかけて臨みました。渾身の作品です!」ときっぱり。妻夫木は「人生のバトンの話だなと思います。過去の人たちの思いを背負って、僕たちは今を精いっぱい生きていかないといけない。1人でも多くの方に観てもらいたいです!」と熱くメッセージを送った。

(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2025年9月19日(金)より全国公開
(オフィシャル素材提供)