
登壇者:三谷幸喜監督、田中 圭、松山ケンイチ、小池栄子、宮澤エマ、梶原 善
映画「三谷幸喜『おい、太宰』劇場版」公開記念舞台挨拶が都内で行われ、本作の脚本と監督を務める三谷幸喜監督と出演者の田中 圭、松山ケンイチ、小池栄子、宮澤エマ、梶原 善が出席して作品の舞台裏や劇場版の楽しみ方など、作品についてクロストークを行った。WOWOWで放送されたドラマの映画版となる。

本作は、「ドラマW 三谷幸喜『おい、太宰』」の劇場版。三谷幸喜が「short cut」(2011)、「大空港2013」(2013)に続いて、脚本と監督を務めるワンシーン・ワンカットで撮り上げた12年ぶりとなるコメデイ・ドラマ第3弾。作家・太宰 治(松山)を敬愛する平凡な男・小室健作(田中)が、偶然太宰が心中未遂を起こした海辺に迷い込み、過去にタイムスリップし、太宰の恋人(小池)にひとめ目惚れ。彼らの運命を変えようと奮闘する姿が描かれる。100分間一度もカメラが止まらないという極限の緊張感の中で撮影された三谷琉エンターテインメント作品。昨秋に撮影された。
三谷は「まさか映画になるとは思っていなかったので、この舞台(挨拶)に立っているのが不思議です。劇場だと観る側の集中力が上がりますし、同じ場所で、みんなで笑いを共有できるという意味でも、映画館で観ていただけて嬉しい」と大きな笑顔で伝えた。

太宰 治を敬愛する小室健作役を演じた田中は、主演として膨大なセリフ量で、動きを伴いながら1日1回の撮影を全編ワンシーン・ワンカット、6日間行った。「僕は、ずーっと動いているので、比較的集中力は途切れなかったです。汗が気になりましたが、自分が主演なのでなるべくフラットでいようと心がけていました。楽しい6日間でした」と撮影を振り返る。

また、田中は「汗が噴き出てるのが気になりましたが、ちゃんと僕の汗を拾ってくださった」と共演の小池らに感謝を伝えると、小池は「触れないわけにはいかないぐらいの汗の量でした」と明かしていた。

今作の撮影は静岡・下田の浜辺で行われた。田中は「現場に行ってみたら予想以上にお芝居するエリアが広かった。日によって潮位も違うので、お芝居する場所が変わるし、天気の問題もありました。僕らと天気が一致しないとOKが出るのかなという不安がありましたね」と苦労を吐露した。

三谷は「(撮影中)僕は映り込んでしまったら大変なことになるので、浜辺の奥にある、森の中の小屋にスタンバイしていました」と自分のいた場所を明かした。すると、梶原が「シリーズ第1作の撮影時に映り込んじゃったこともありましたよね?」と突っ込み、三谷は「始まって40分くらいのところで映っちゃって、中井貴一さんにすごく怒られました」と苦笑いする場面も。

太宰役を演じた松山は太宰と同じ青森の出身。「僕は東京暮らしが長く、シティーボーイになってしまったので(笑)、青森放送の方にお願いして方言の特訓を受けました。僕は津軽弁ではなく下北弁なんですが、青森弁の中にも違いがあって、今回は津軽弁と下北弁がかなりミックスされています」と詳しく説明した。

三谷は「台本は方言ではなかったんですが、松山さんが方言でいきたいと――。未だかつて青森弁で話す太宰はいなかったんじゃないかと思うので、画期的だったのでは……」と話した。

自分が演じた以外の役を演じるとしたら度の役がいい?と聞かれるコーナーがあり、田中は「全役嫌ですね」ときっぱり。「(梶原 )善さんみたいに山を行ったり来たりしながら映っちゃいけないタイミングを図るのは大変です!」と梶原の苦労を気づかった。
太宰の恋人・矢部トミ子役を演じた小池は「チャレンジするなら(宮澤)エマが演じた役(美代子)かな。圭さんとエマの夫婦関係が冒頭と後半で違うんです。もともと彼女(宮澤)のお芝居のファンでしたが、私にはできないなと思うくらい素晴らしい演技でした」と宮澤をたたえ、2人でハグをする一幕もあった。

健作の妻・美代子役を演じた宮澤は「毎日終わったあとに、撮ったものをみんなで一緒に観ました。自分の芝居を客観的に見ることで、細かく演技の修正が出来て良かったです」と述懐する。

1人3役(健作と出会う漁師の打雷次郎、その双子の兄・四郎、そして父親の四郎次郎)を演じた梶原は、ワンシーン・ワンカット撮影のため早着替えが大変だったそう。「出来上がったものを見てみたら、その苦労のかけらも見えていない。それはそれで素晴らしいですね」と明るく話したが、時間がないため、足場の悪いところを草履で走り回りながら着替えたという苦労も吐露していた。
最後に三谷は「劇場版は、本編が終わったあとに特別企画としてもう1つのエンディングが用意されています。実はこれは、当初のエンディングだったんです。編集しているうちに新しく考え、そっちが実際のエンディングとなりました。これから100分間、自分たちも浜辺にいるかのような臨場感を味わってください!」と観客に呼び掛けた。

(取材・文・写真:福住佐知子)
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配給:WOWOW
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(オフィシャル素材提供)