
登壇者:柴咲コウ、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、中野量太監督
11月28日(金)に公開される映画『兄を持ち運べるサイズに』の完成披露上映会が、8月7日(木)にTOHOシネマズ日比谷にて行われ、主演の柴咲コウ、共演の満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、そして中野量太監督が登壇した。公開を4ヵ月後に控えた完成披露上映会となり、作品への期待が高まる観客からの温かい拍手に包まれながら登場した5人。原作は、作家・村井理子の実体験を綴ったノンフィクションエッセイ『兄の終い』。
主人公・理子を演じた柴咲は、「昨年の秋に撮影だったんですけども、公開が11月ということでまだ日があるのですがこれからご覧になる皆さんの反応がどうなのか、監督はドキドキだと思いますが、気に入っていただけると嬉しいなと思います」と、コメント。
理子の兄の元嫁・加奈子を演じた満島は、「私はおととい映画を観たばかりで、観終わった後感想を柴咲さんにメールしました。とってもいい映画でした! 理子ちゃんとお兄ちゃんのシーンは初めて見る場面だらけだったんですが、すっごい綺麗な兄妹。今日はいいものが観られると思うので、ぜひ楽しんでください」と話した。
加奈子の娘・満里奈役の青山は、「今回初めての映画で、初めての場所で緊張しています。この映画は、やって良かったという嬉しさと感謝がたくさん込められている映画です! とってもドキドキしています!」と、フレッシュさあふれる挨拶。
そして、その弟・良一を演じた味元も、「本日はよろしくお願いします! 人がすごく多くて緊張しています」と緊張の面持ち。
さらに、本作が約5年振りの新作となる中野監督は、「5年間映画を撮っていなくて、この映画を去年撮ることができました。脚本も書いていて、そこから撮影、編集とずっとやっていたのですが、今までで一番しっくりきたなと思います。自分がやりたい表現とかやりたいものが、結実してきたな、と思います。自分なりに一生懸命生きた5年があって、その間になんか勝手に成長していたのかなと思いました。現場でも素晴らしいキャストと、やりあうこともありながら、いい演技を全員がしてくれたなと思っています。大いに笑って、いろいろなものを持ち帰ってくれたら嬉しいです」と、今の思いを語った。
「初号でこの作品を観させていただいて、いつもだったら客観的に観られないのですが今回はそういうのが全然なくて。ある意味自分と切り離せて観られて、“ひとりの人間ができてる”、と不思議な感覚でした。自分の家族のことを思い浮かべながら観られちゃいました。皆さんにもそれぞれに家族がおありだと思いますし、いろいろな形があると思うんですけれども、そういったところに思いを馳せながら、ご覧いただけるんじゃないかなと思います」と、新たな発見があったことを明かす柴咲。
そんな作品をつくりあげた中野監督は「元々はオリジナルでやりたいタイプなのですが、原作本を読んでまあ面白くて。僕は、家族に残された人は、どう生きるかみたいなことを、ずっと描いてきて、この作品もそうなんですけど。なんか、悲しい話なんだけど、笑ってしまうんです。それって僕が一番目指してるところだ、と一致して。あ、これはやりたいな、と。そして、あの原作者の村井理子さんに、会いに行って話を聞くと、本に書いてない面白いエピソードがいっぱい出てくるんですね。そこで、村井さんが違うと思うものはつくりたくないし、芯のところは絶対に変えないっていうのを心をがけたと思います」と制作秘話を明かす。
そんな脚本を読んだ柴咲は「その役をまとって、自分が動いている姿が想像できるかってところで、お引き受けするかというポイントにもなるんですが、今回は自然とできちゃったんですよね。すごく素敵な脚本だったなっていうのは覚えてます」と絶賛。さらに演じてみて自身の中での価値観も大きく影響されたと明かし、「家族にも観てもらって、観てもらってから家族会議したいなと思います」と話す。

満島も、「脚本を開いて、馬鹿みたいに泣いちゃって、感動して。柴咲さんもオダギリさんも、しっかり共演したことがなくて、自分が映画館に行って観ていた映画に出ていた2人なんですよね。なので、おふたりと共演できたっていうのは、結構私の中で大きくて。(完成した作品を観ても)、これまで観てた柴咲さんとも違うし、オダギリさんも私の映画史上に残る、かなりいい表情がありました。あとは、青山姫乃がすごいんですよ! 初めての映画なのに肝が据わっていて、彼女を助けるつもりでやったお芝居を私ができなかったんですが、“いいよいいよ、自分がいいと思うまでやりな”って言ってもらえて(笑)。味元くんも本人がとっても大人っぽいんですが、映像に映っている姿がまだまだなんか赤ちゃんなんだなって思って、やっぱ中野さん、キャスティング上手だなと思いながら観ていました(笑)」と脚本、そして共演者を絶賛。

撮影でのエピソードを尋ねられると「私はお隣の山形出身なんですが、多賀城にいきたいと昔から家族で話していたのですが、まさかの撮影で行けるとは思っていなかったので嬉しかったのと、撮影の合間にママ(満島)と並んでカフェラテを飲めたのが楽しかったです」と話すと続けて、「私とは違う遠くの人だったのが、ママになるってびっくりしたんですが、現場にいないと不安になるくらい安心する存在になりました」と、満島愛を語る青山。

「僕は柴咲さんと満島さんと青山さんと4人で食事をするシーンがあって、そこのご飯がすごく美味しくて、次の日お休みだったので、またその場所に行ったのですが、ピザがなかったので、パスタを食べました」と味元もほほえましいエピソードを明かし、会場もあたたかい雰囲気に。

その流れから、ご飯や食べることが大事だった現場のようで、柴咲も「打ち合わせの時からお茶菓子が用意されていて、そういうのがあるのとないのでは心の打ち解け方が違うし、食事のシーンはみんなで食べたそのシーンはすごく思い出に残っています」と、満島も「柴咲さんも私もお弁当を持ってくるタイプで、つくっているものを見るのが楽しかったです」とエピソードを明かす。
また、映画にちなんで、「伝えられなかった大切なこと」を聞かれると、柴咲は「昨年この映画に関わらせていただいてから、自分の不器用なところ、口下手なところが目につくようになったんです。自分がちゃんと家族や近くにいる人に愛を伝えられていないということがずしんときていて。どうしていこうかなという気づきをこの作品に与えてもらいました」とこの作品で気づかされた自身の一面を明かす。満島も、「撮影しているときに、スタッフの皆がぽろっとこぼす家族の話が胸に残っています。私も柴咲さんと同じで、どうやってまだ肉体が存在する間に伝えられることがあるかなと、いる間に、いる人に何ができるのかなというのは考えました」と満島もこの作品での気づきを話すと、「ウルウルきちゃうね」と柴咲。
「お姉ちゃんに伝えたくて、今年一緒に上京してきたのですが、忙しい慣れない生活の中で、美味しいご飯を作ってくれるんですけど、素直にあるがとうって言えなくて、この映画の機会で、ありがとうって素直に伝えたいです」と青山が、「お母さんに、この映画の撮影のために、お仕事もお休みしてくれて、一緒に付き添ってくれて、ありがとうって言いたかったんですが、新幹線乗らなきゃ行けないとか、疲れているとかで、言うタイミングがすごく難しくて、すぐに伝えられなかったです」と味元が家族とのエピソードを明かす。そして中野監督は、「自分で映画を撮って観終わった後に、このキャスト以外にないなと思った時が一番幸せで、今回もそう思いました。そのことを4人に伝えていなかったのかなと思うので……」と話をふると、整列し、監督に熱い視線を投げかけるキャスト。「ありがとうございます!」と言い合う姿に会場からは拍手が起こった。

舞台挨拶の終盤には、“持ち運べるサイズ”にされたオダギリジョー演じる兄の巨大パネルも登場し、フォトセッションも実施。
最後に柴咲から「改めて、なんで自分のことを評価しないでこの映画が観られたんだろうと思っていたのですが、プライベートな、人には見せない姿や内省していているときの姿を映し出してくれたのかなと思って。なのでそう言った意味で自分の新しい一面を切り取ってもらえたんだなと思います。それは嘘ではなくて、お芝居の域も超えている気がするんですよね。監督は、“今までにない姿を撮りたいです!”って言ってくれていたので、まさにそこを落とし込んでくれたんだなと思います。皆様それぞれに家族がいて、ぶつかり合いがある中で、外には出さないで生きていると思うんですが、自分の置かれた環境だったり、家族のことを考えるきっかけになる素敵な映画になっていると思いますので、観終わった後にどんな感想をもつかはそれぞれだと思うのですが、なにかの気づきになっていたら嬉しいです」と、中野監督から「完成披露上映が公開の4ヵ月前に行われると言うのは異例で、それは、4ヵ月前に観てもらって、この作品を育ててもらおうという気持ちでやっています。いろいろ伝えあったりして、育ててもらえたら嬉しいです。これは実話なんです。HPにいま村井さんがお兄さんに宛てた手紙のようなメッセージが載っています。この映画を観たあとにこのメッセージを読むとグッとくるので、観終わった後に見ていただけたら嬉しいです。このメンバーでこの場に立てて改めて幸せに感じています!」と、観客へのメッセージが送られ、11月の公開への期待を高めるイベントとなった。
公開表記
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
11月28日(金) TOHOシネマズ日比谷他、全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)