
登壇者:原田龍二、高島礼子、三浦浩一、金城大和、石田 隼、マイケル富岡、丈監督
太平洋戦争末期の東京郊外にある精神病院を舞台に、病院内との対比で外界の狂気を問うテーマを、シリアスなだけでなく、ユーモアとサスペンスとファンタジー要素も織り交ぜで描いた創作舞台の映画化『ハオト』。戦後80周年を迎えるこの度、公開記念舞台挨拶が開催された。
丈監督と20年前に本多劇場で上演された舞台版で主演を務めた本作「閣下」役の三浦浩一には、本作に対する想い、元エリート海軍兵・水越役の原田龍二と特攻隊として出撃前の弟・正和役の石田隼(ミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズン 大石秀一郎役)と貝瀬婦長役の高島礼子には、本作随一の感動シーンの撮影の裏話、米国が送り込む日系ハワイ人・田中役の金城大和(「獣電戦隊キョウリュウジャー」キョウリュウブルー/有働ノブハル役)と日系のソ連大使・ロモフ役のマイケル富岡には、それぞれ沖縄出身者、アメリカと日本のハーフとしての想いを聞いた。
丈監督は冒頭、劇場いっぱいの観客を見て、「胸がいっぱいです。僕にしか描けない戦争作品を目指しました」と挨拶。
原田は、「撮影に入る1年前に個人的に監督からご連絡をいただいて。『この作品で勝負をかけたい』という最後の一文を見た時に『ぜひ台本を読ませてください』と言って、読んで快諾した次第です。本気だということが伝わってきたので、一蓮托生で頑張らせていただきますとお受けしました」と話した。
高島は「映画をテーマにした映画の魅力は、学校で習わなかったようなことを作品として皆さんに提供できることだと思います」と話し、三浦は「ときどき、戦争があり、多くの人が命を失うという事実に触れる時間を持たないとと思います。俳優の僕たちには、こういう映画に出て、人様の心に伝えることしかできないんですけれど、この映画が少しでも多くの方に観ていただけることを願います」と話した。
金城は、沖縄出身ということで、戦争に対する思いは人一倍。「30 年前僕が小学生の頃、当時生きていた祖父から、急に足の傷を見せられて、戦時中逃げた時に砲弾で受けた傷だと聞きました。祖母は元ひめゆり部隊だけれど、体が弱かったので、疎開して、戦地に行くことはなかったけれど、お友達はひめゆり部隊の生き残りと聞きました。うちの祖母は今98歳なんです。戦後80年ということは、生の声が聞けなくなってくるという意味では、『戦後80周年祈念』という言葉がつくだけでも意義があると思います」と考えを述べた。
原田は特攻隊として出撃前の弟・正和との感動シーンで涙を流していたが、実は弟役の石田とはその日初めて会ったそう。当日初めて会って涙を流すというところまで感情を持っていくのは難しかったか聞かれた原田は、「自分で高めたというよりも、軍服を着た石田くんを見て、このシーンはうまくいくなと直感的に思いました。あれはお芝居っていうよりも、原田龍二がそこにいて、石田くんの感情を僕が受けとったというような場面だったと思います。撮影が終わった後、当時日本の至る所でああいう今生の別れを経験された方がいたのだと悲しい気持ちになりました」と回想した。

弟役の石田は「この時代の背景や魂の重みを自分が担いたいという使命を感じて、プレッシャーよりも大きな使命があって、緊張があったんですけれど、原田龍二さんにご挨拶をさせていただいた時に、役者の石田 隼としてご挨拶させていただいたんですけれど、それを超えて、弟として挨拶をしたような感覚に陥って。原田さんに気を遣っていただいてそういう雰囲気を醸し出していただいたので、身も心も全て預けて全力でぶつかっていけば、お兄ちゃんがなんとかしてくれるという思いで撮影に臨みました」とお互いを褒めあった。
石田は、本作の舞台となっている精神病院の外の世界の特攻隊員の役で、外で起っていることを代表する重要な役。「靖国神社に行って資料を漁ったり、自分が調べられるものは全部調べて、いろんな方々の想いを乗せて、魂を知るという想いで臨みました」と撮影前の準備について語った。

高島は、その兄弟の今生の別れのシーンで、貝瀬婦長としての見せ場もあった。「そのシーンは、脚本を読んだだけでも泣けたんです。二人の集中力がすごくて、緊張感が伝わってきて、一言もしゃべれなかったです」とその日の撮影を回想した。
高島は、笑えるようなシーンにも出演。「真剣に見ている私たちは笑いを堪えるので必死だったんですけれど、出演している皆さんのこの作品に対する思いが伝わってきました」と木之元亮らを労った。

三浦は、「この映画のテーマというのが(全編に)散りばめられていたと思います。正義の名の下に戦争で人を殺してしまうのが平気になってしまうという狂気。人間はそういう世界をダメだと思わなくてはいけないと思います」と語気を強めて話した。また、「閣下役で、かなりテンション高く振りきったような芝居とその反動の縮こまったような両極端な芝居をやらせていただいたし、『ハオト』は僕の代表作だと言えると思います。」と自ら宣言した。

金城が演じた田中はいわゆる悪役。「丈監督からは悪そうに見えるような表情の演出はあったんですけど、田中には田中の使命・正義があると思うので、思いを演じる、の一点でした」と話した。

マイケル富岡は、「父が米軍の兵士でした。自分も基地の中で育ちまして、子どもの頃、生まれた時から遊んでいるところに戦車があったり、友達がお父さんのパイロットのヘルメットを被って学校に来たり」という環境で育ったそう。「戦争の話は父のほうからも聞いていますし、母や母の両親からも日本サイドの話を聞いています。二つのストーリー・見解があるんですけれど、それは避けて通れない。演じたロモフ役のように、スーパー仲介人が地球を救っていくのかなと思ったりもします。両方のことをよく分かっていて、どこでうまく落とし所を見つけられるか。スーパー仲介人がたくさん出てきてくれればなと思います」と願いを話した。
富岡は片岡鶴太郎との共演シーンもあった。「鶴太郎さんの圧倒的なオーラ。後光が差していますよ。スモークを焚いているんじゃないかと思うくらいオーラがすごいです」と例えた。

最後に丈監督が「平和だからこそ映画も作れるし映画も観れる。ぜひお友達にもお薦めいただけたら幸いです」とメッセージを送った。

公開表記
配給:渋谷プロダクション
池袋シネマ・ロサほかにて公開中
(オフィシャル素材提供)