
登壇者:西島秀俊、グイ・ルンメイ、真利子哲也監督
ニューヨークで暮らすとあるアジア人夫婦。ある日、息⼦の誘拐事件をきっかけに夫婦が抱える秘密が浮き彫りとなり、崩壊していく家族を描いたヒューマン・サスペンス『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』(英題:『Dear Stranger』)が9月12日(金)より全国公開中。
本日9月12日に公開初日を迎えた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』。まず西島は「お足元の悪い中ありがとうございます。今日はルンメイさんも来ているので、たくさんお話したいと思います」と笑顔で挨拶。8月の完成報告会見に引き続き来日したルンメイは「新しい作品を携えて皆さんにお会いできてとてもうれしいです。皆さんの感想をお聞きするのがとても楽しみ」と声を弾ませ、真利子監督も「大変な挑戦だったので、今日上映できることが本当に嬉しい。仲間を一人ずつ見つけながら、ようやくこの日を迎えられた」と感慨深げに言葉を重ねた。
初日を迎えた心境について、西島は「本当に嬉しいです。しかもこの劇場(TOHOシネマズシャンテ)でいうのがとても嬉しい。先月もここに映画を観に来たんですが、ちょうど『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の予告編も流れていて」と話し、ルンメイは「まるで学生が宿題をようやく提出したような気持ちです。もし気に入っていただけたら、ぜひ周りの方々にお薦めしてほしいと思います」と呼びかけた。日本・台湾・アメリカの合作で、オリジナル脚本かつ日本人監督がニューヨークで全編ロケを行ったというチャレンジングな制作で公開を迎えたことについて真利子監督は、「どうなるか分からないスタートではあったので、西島さん、ルンメイさんをはじめキャストが集まってくれて、ようやくこうやって上映ができることになって本当に嬉しく思っています」と振り返った。
本作は「言語の壁」が物語のテーマの一つとなっている。その理由を問われると、真利子監督は「自分が見てきた映画や生活などいろんなことが糧となり、この映画に至ったと思います。1年ほどアメリカに滞在していて、帰国した直後にコロナによる非常事態宣言が出て、日常が一変してしまいました。でもアメリカにいた友人とコミュニケーションを取り合って作っていきました。本作で大事にしていたのは賢治とジェーンの関係性。肉体的な暴力や激しい出来事ではなく、日常の中で積み重なる小さなズレを描きたかった」と語り、西島も「日常にある小さな感情の波、相手への思いやりと苛立ちが混ざり合う瞬間、誰もが経験するような感覚が脚本に詰まっている」と共感を込めて話した。
ルンメイも「脚本の中の哲学性というものをすごく感じました。お互いに愛し合っているという前提のもとで、言語が通じない、コミュニケーションが取れない中で、どうやってこの関係を維持していくかということが大きなテーマになっていると思います」と振り返る。
また約9割が英語のセリフという本作について、西島は「監督は決して英語を綺麗に発音することを求めていたわけではなく、感情があふれて、うまく言えないところを喜んでくれたのが印象的でした。またルンメイさんが目の前でリアルな感情を表現してくださるので、自然と自分の内面的なものが引き出されました」と語る。

それに対してルンメイは「西島さんは私にすごく大きなエネルギーを与えてくれて、そのおかげで演技というものに対する考え方が大きく変わったと思っています。私にとって西島さんは大きな木のような存在でした。私はその下で転ぶのも恐れずに楽しく遊んでいる子どものような感覚でした」とユーモアを交えて語ると、西島は少し照れた様子で会場に笑いが起きた。

続いて本作のタイトル“Dear Stranger”=直訳すると“親愛なる他人”に込められた想いをどう解釈するかという質問について、西島は「1番愛情を持っている人だからこそ、自分自身の愛情も見失ってしまう瞬間というのはあると思うんです。つまり最も身近な人だからこそ、全くの他人のような分からない存在という意味なのかなと思いました」と語り、ルンルイは「たとえ親子や夫婦、親しい友人同士でも、心の奥に隠した秘密や言えない言葉は存在し、完全に分かり合うことはできない。しかし愛の力によって関係をつなぎ、新しい愛を育む環境を作ることは可能で、“Dear Stranger”という言葉には、親しみと他者性の両面が含まれているのだと思っています」と話した。
さらに本作は釜山国際映画祭と台北金馬映画祭への出品のほか、台湾とフランスでの上映も決定している。西島は「日本だけでなく海外の観客にも観てもらえるのはとても嬉しいです。観客の皆さんが鑑賞することで完成する映画だと思っているので、どんなふうに感じてもらえるか楽しみです」と期待を寄せた。またルンメイも「いろんな国や文化を持った観客の皆さんが、どんなものを持って帰ってくれたか、どんな感覚を持ったかが気になりますし、それこそが映画を撮る上で1番素晴らしいところだと思います」と話し、真利子監督は「この作品を通して、いろんな方に触れ合えるのが自分の中でとても楽しみです」と笑顔を見せた。

そしてトーク終盤。劇中で夫婦が抱えてきたある“秘密”が明らかになる展開にちなみ、「今まで秘密にしてきたことは?」という質問に対して、西島は「最近は、けん玉にハマってます」と話すと、「ぜひルンメイさんにもプレゼントしたいので、釜山映画祭に持って行きます」と宣言し、会場からは拍手が。ルンメイも「楽しみにしています」と喜びを露わにした。一方のルンメイは、撮影中の西島の“秘密”を暴露。「西島さんは現場でずっとおやつを食べていて、机の上にいっぱいお菓子が置いてあるんです。しかも劇中の引き出しの中にもお菓子を隠してました」と暴露し、会場は大きな笑いに包まれた。
最後に西島は「深い愛情は必ず試される瞬間があると思います。悩みや苦しみを乗り越えた先にまた新しい試練が訪れる。そんな経験をしている方にこそ、この映画を観てほしいです。ラストに残るわずかな光や希望を感じてもらえたら嬉しいです」と観客に呼びかけ、ルンメイは「この映画は私の人生の中でも、素晴らしい思い出と経験を残してくれました。皆さんも本作を観ていろんな考えを持って、生活の中で素晴らしい反応を起こしてくれることを期待しています」と語った。真利子監督は「ようやくこの場所に辿り着けたという心境です。本作はやるべきことを丁寧にやった映画。ラスト・シーンでは皆さん思うところがそれぞれあると思いますが、答えは1つではなく、何かが間違っているわけでもない。映画を観た後に誰かとしゃべって楽しめる経験にしていただけたらいいなと思います」と深々と頭を下げ、大盛況の中初日舞台挨拶は終了した。

公開表記
配給:東映
絶賛上映中
(オフィシャル素材提供)
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