
登壇者:妻夫木聡、大友啓史(監督)、真藤順丈(原作者)
アメリカ統治下の沖縄の史実を背景に、激動の時代を生き抜いた若者たちの葛藤と友情を描く『宝島』。主演の妻夫木聡、大友啓史監督が6月から3ヵ月以上に及ぶ全国キャラバンを実施し、各地で本作へのたぎる想いを伝え続けてきた本作は、全国の劇場で現在公開中。鑑賞者から寄せられる熱い反響が日々勢いを増すなか、ついに30都市到達(10月2日時点/初日舞台挨拶は含まず)を迎えた本日、新宿で<東京キャラバン>が開催され、妻夫木、大友監督、原作者の真藤順丈ら登壇による舞台挨拶が行われた。
新宿バルト9で最大の収容人数を誇るシアター9で開催された東京キャラバン。上映後、400名を超える観客が本作に込められた圧倒的な熱量に打ちひしがれる会場に、主演の妻夫木、大友監督、真藤らが笑顔で登壇すると場内から万雷の拍手が送られた。
集まった報道陣からの眩いフラッシュとともに、観客らの確かな熱を受け取った妻夫木は早くも感無量の様子で「こうして映画が公開しても、なお皆さんの前に立てることが幸せ。公開を迎えてようやく始まった気もするし、『宝島』と手と手を取り合ってどこまでも歩いていきたい気持ちです」と熱を込めて挨拶。大友監督、真藤とともに感謝を述べた。

映画公開から2週間が経ち、全国各地で鑑賞者からの熱い感想やメッセージ、戦後の沖縄を正面から描く“挑戦”に対するさまざまな議論がSNSを中心に巻き起こるなか、物語の舞台・沖縄の地では連日満員、通常の約10倍の動員を記録する劇場もあり、ほとんどの劇場で2週連続土日動員ランキング1位を達成するなど異例の大反響となっている本作。この嬉しい報告に妻夫木も「僕は沖縄出身ではないから、とてもプレッシャーはありました。ただ誰よりも沖縄の方々の、先人の方々の想いを背負ってきた覚悟はあったので……」と安堵の表情を見せ、主演作『涙そうそう』(2006年公開)から続く沖縄への強い想い入れと深い愛を熱弁。

「今まで見たことのない沖縄を映像にしてくれて感謝の気持ちです。今もあちこちで戦争は起きていますが、この映画が伝えたいのは“生きる力”なのではと思いました。子どもたちにも伝えていきたいし、“平和に向かっていく心を育てる映画”だと思いました」、「『なんくるないさ』の重み、どうしようもないことを、下を向いて歩いてるだけじゃなくて、上を向いてなんくるないさ、なんとかしなくちゃという気持ちのこもった言葉であることを、映画が伝えてくれているように思いました」など現地から寄せられた感想コメントが紹介されると、場内は温かい拍手に包まれ、妻夫木も「こうして、沖縄の人たちに届いているのが本当に嬉しい」と喜びを語った。一方、大友監督は公開後に再び沖縄を訪れたことを明かし、「この映画が何を届けようとして僕らは始めたのか、どういう覚悟をもってこの作品を作ってきたかという気持ちを再確認してきました」と述懐。改めて、「沖縄という土地には沖縄ならではの時間が流れていて、その中で歴史を見るとそうした時間が突然遮断されるような出来事がたくさんあった。僕らはそうしたことを伝えたいと思ってこの映画を作ったんです」と、映画『宝島』に込めたメッセージを伝えた。

その後、トークは映画公開後に数多く寄せられた感想や疑問について、妻夫木ら一同が答えていく展開に。
まず初めに触れられたのは、191分という【上映時間】について。第160回直木賞ほか数々の受賞に輝いた原作小説を手掛けた真藤は、「どんな小説でもそうですが、『宝島』でも賛否両論はあった。物語に込めた熱量に没入して称賛していただける声もあったし、非難する声もあった。けれど、それが健全な在り方として嬉しかったし、作り手としては、“黙殺”されてしまうことが一番悲しいので。映画になってもいろいろな議論が行われていることは良いことだと思っています」と発売当時の反響に触れつつ、映画の反響にも喜びの心境を吐露。そんな真藤が向き合い続けたエネルギーに深く共鳴したという大友監督。「沖縄で感じた豊かな時間や歴史の厚み、そこで生きていた方々の想いの厚みを表現するには、表面的なものは作れない」という監督だが、映画の編集段階では尺の長さやテロップの有無についてなど、何度も議論を重ねたと明かす。「それでも、何か一部を切り抜いてしまうだけで、展開だけで作っているような、作り手の作為が見えてしまうような、そういう思いに駆られたんです。何度も何度も手を尽くして、検証を繰り返して、原作の持つスピリットをどうしても皆さんに伝えたかった」と力説する姿に、妻夫木も、「演じているときはグスクとして毎日を精一杯生きることしか考えられなかったけれど、初めて映画を観たときは時間を忘れてしまったし、観終わった後には立ちあがることができなかった」と、振り返った。
『宝島』が描く、【アメリカ統治下の沖縄】という題材について話が及んだ一同。小説執筆にあたり、徹底的な取材や時代考証に多くの時間を費やしたという真藤は、「当初グスクという人物は、東京から沖縄に渡ってきたキャラクターにしようかという構想もあった」と裏話を交えつつ、「でも書けなかったんです。その視点ではとてもこの話は書けないからグスクは現地に生きる人物にしました。沖縄出身ではない自分が沖縄の人になりきれるのか、沖縄の歴史を生きた人々にどれだけ近づけるかというのはすごく大変だった」と当時の苦労について述懐。そんな中、大友監督と出会い感銘を受けたという真藤は、「大友監督が、“映画”でやりたいって言ってくれたことがすごくチャレンジングだと感じたし、監督が目指した“追体験”というのは僕が執筆時に大切していたことにも通じているところがあったので、ぜひお任せしたいと思った」と、互いに共鳴しあい生まれた、映画『宝島』の誕生秘話について言及。

一方の妻夫木は、撮影を通して沖縄をはじめ世界の歴史への理解を深めたことに触れ、「この映画をきっかけに、初めて知る事実も多かった」と告白。戦時中に生きた方々への思いを巡らせ、「過去にあったことを過去で終わらせてはいけないなと本当に思いました。僕たちは過去を知ることで痛みを知ることができる。痛みを知ることでこの先『同じ過ちを繰り返してはいけない』と未来に繋げることができる。教科書を見てなんとなく分かってる気になったらダメなんだと思う」と強調し、そのうえで、「また僕たちは武器を持ってしまうかもしれない。でも武器を持っちゃったらまた戦争が始まってしまうかもしれない。その中で失った命は取り戻せないわけで、そういう時代は二度と来てほしくないと思った」と続けた妻夫木だったが、「自分も子どもがいますし……」と想いがあふれると、壇上で大粒の涙を流し感情を爆発。声を震わせながらも「そんな未来は作りたくない、絶対に」と力強く訴えかける妻夫木の姿に、自然と拍手が巻き起こった。

さらに、イベントの後半には、妻夫木がグスクを演じるにあたり“原点”となった佐喜眞美術館の館長・佐喜眞道夫氏から手紙が届くサプライズも。
「沖縄戦で地上のすべてを吹き飛ばされた沖縄には80年たった今なお巨大な米軍基地が居すわってます。その圧倒的な不条理に果敢に飛び込んでいった沖縄のニーニー(兄貴)たち、戦果アギヤーは、少年だった私にとって英雄でした。コザ暴動のシーンは圧巻でした。私も中に入って車をひっくり返したい思いになりました。妻夫木さんが役作りのために何回もご来館され、丸木位里・丸木俊の『沖縄戦の図』の前に立たれていたと伺い、しみじみとありがたさを感じています。そんな妻夫木さんが演じられた、リアルに描かれた映像を通してみると、その壮絶さに少しうろたえました。しかし、そんな中で真っ直ぐに生きようとする青年たちの姿に感動しました。困難を乗りこえるために突っ込んでいった人々の心の根底に何があったのか。忘れていた共同体と人々への深い愛情を思い出させてくれました。 佐喜眞 道夫 佐喜眞美術館 館長」
代読するMCに真剣に顔を向け、またもあふれる涙をこらえて一つひとつの言葉を噛みしめた妻夫木。すべてを聞き終えた妻夫木は、再び言葉を詰まらせながら「佐喜眞美術館で拝見した『沖縄戦の図』というのは、『宝島』と向き合ううえで、僕にとっての支えだった。もはや、自分が生きるうえでの一生の“核”のような存在になったと思う。今後訪れた時も、『妻夫木、ちゃんと生きているのか』って言われると思うんです。そのたびにきっと、いろんなことを思い出すんじゃないかなと思います」と感慨深げに語った。
最後に、「僕は、映画を通して沖縄に触れて死生観が変わりました」と静かに語りかけた妻夫木。コロナ禍に祖母が亡くなったことを明かし、「何もできなかった自分が本当に悔しかった」と涙が止まらない妻夫木は、「それでも、『宝島』を通して死生観が変わって、『おばあちゃんはおじいちゃんに会いに行ったんだな』、『どうしようもなく会いたかったんだな』と思ったら、『また会おうね』と思えるようになったんです。僕は『宝島』でいっぱい宝が見つかった。だから、皆さんもいっぱい宝を見つけてほしい。これまでにいただいた感想の中で、『今すぐ帰って子どもを抱きしめたい』という言葉がありました。僕自身も同じ気持ちになったし、それが僕にとって映画を作る意味だし、俳優をやっている意味だとも思っています」とメッセージが送られると、場内は割れんばかりの拍手に包まれた。フォトセッションでは、400名を超える観客らとともに、「たぎれ、東京~!」と声を上げ、この日一番の熱気に包まれ舞台挨拶は締めくくられた。


時代の波に翻弄されながら、立ち向かい、熱く生き抜いた若者たちを描く感動超大作。圧巻の191分で描く、映画『宝島』は公開中! キャスト、監督のたぎる想いを乗せて日本中に広がる『宝島』の“感動のバトン”。ぜひ、劇場でご覧いただきたい。
公開表記
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
全国公開中!
(オフィシャル素材提供)