
登壇者:吉岡里帆、森川 葵、髙嶋政宏、菊地姫奈、オダギリジョー監督
2021年にNHKで放送されたオダギリジョーが脚本・演出・編集を務めたオリジナルのテレビドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」。鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)だけには、なぜか相棒の警察犬・オリバーが、酒と煙草と女好きの欲望にまみれた犬の着ぐるみのおじさんに見えてしまう(一平以外の人間には犬に見えている)、しかもその着ぐるみのおじさんオリバーをオダギリジョー自身が演じるという奇抜な設定に、ドラマ化発表時から話題を呼んだ伝説のドラマ。オダギリジョー脚本・監督・編集・出演『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』(配給:エイベックス・フィルムレーベルズ)が絶賛公開中!
10月13日(月・祝)、公開を記念して公開記念舞台挨拶を開催、吉岡里帆、森川葵、髙嶋政宏、菊地姫奈、オダギリジョー監督が登壇した。
映画上映後、大勢の観客が集まった会場にオダギリ監督が自ら製作した「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」の特製フラッグを華麗に振り回す吉岡里帆を筆頭に豪華キャスト陣が登場すると、会場は冒頭から大盛り上がり。まず吉岡が「テンちゃんという名前は、実は麻生(久美子)さんが名付けの親でして。とても気に入っています。今日はよろしくお願いします」と挨拶。「今日は話したいことが山のようにありすぎて。昨日の夜、寝る前にそれをうまく抜粋しなきゃないけないけど、どうしたらいいんだろうと。考えて考えて、結局答えは出てこなくて。何も答えを持たずにここ来たら、まさか旗振らされるとは。オダギリさんが毎回旗を振ってらっしゃるみたいなんですけど、今日は代わりに振らせていただきました」と笑ってみせた。

さらに劇中で“小さなおじさん”を演じた髙嶋は「どうでしたか? 今期最高傑作の映画です!」と興奮気味に語ると、「僕は試写で観た時に心の底からそう思いました。台本をいただいた時は僕の役が“小さいおじさん”と書いてあって、一瞬『うっ』となったんですけど、それよりも、この世の中で最も嫌いな食べ物がキュウリで、最も好きな食べ物がたこ焼き。この映画ではその二つがたくさん出てくるので。それを衣装合わせの時に監督にぶつけたら、監督はビックリして『全くの偶然だ』と。こんなぴったりな役はありません!」とキャラクターとの見事なシンクロを誇らしげに語る。髙嶋演じる小さいおじさんは、公開前は「不思議なおじさん」とされており、虫のように小さいおじさんであることは伏せられていた。

公開3週目を迎えた本作だが、映画公開後も全国各地で精力的にお客様からのQ&A中心の舞台挨拶を行ってきたオダギリジョー監督。その反応について「観ていただいた方々からの熱というか、この世界にハマっていただいた気持ちよさみたいなものは、十分こう伝えられるタイミングは多かったと思います。とにかく刺さる人には確実に刺さっているなという印象は受けています」と明かすと、髙嶋も隣で深くうなずいており、「このように少し変わった方に刺さっているようです」と会場を沸かせた。

現場を振り返った吉岡は「わたしは実はオリバーの宣伝をずっと追いかけてまして。なんだか面白いニュースが多いんですよ。この間はワンちゃんに向けた試写会があったり、すごいホッコリして。現場も、本当にオダギリさんの人柄が出ていて、終始すごく和やかで笑いが多かったですね」と述懐。
森川 葵は公開後映画館にも足を運んだことを明かし、「とにかく映画を観ていい意味で『ヤバいなぁ』と思いました。正直、台本を読んだ時には理解が難しくて。映画を観に行った時に『これは映画館じゃなきゃ無理だ』と思ったんです。途中でトイレに行ったら、もうそこから回収はできない。没頭しないと観ることができない映画だなと思いました」と語ると、菊地姫奈も「本当に終始不思議で、独特の世界観だなと思っていて。まさに“オダギリワールド”全開だなという感じですごく楽しい現場でした。わたしはクランクインした時はすごく緊張してたんですけど、だんだんと肩の荷が下りていくような現場づくりをしていただいて、最後は楽しく現場に入って演じることができました」と振り返った。


本作の劇中では、犬カフェの客たちが突如踊りだすダンス・シーンがあったが、このシーンについて吉岡は「あれこそ『聞いてないよ!』という感じでした」と当時の心境を吐露。出演を快諾した後に、オダギリジョー監督からのリクエストとして、インド映画『RRR』のようなダンスシーンをしてほしいと言われたという。「私も含めてですけど、ダンスをやってきてない人が『RRR』って結構難易度高いんですよ」と吉岡が語る通り、ダンス経験のほとんどないキャストが多かったため、1ヵ月以上にわたって練習を行ったという。
特にベテラン勢の鹿賀丈史や嶋田久作もダンスに苦労していたそうで、あまりのステップの難しさに、キャストから監督へ「難しすぎる」との声が上がったという。だがその際の監督の反応について吉岡が「スタッフさんから監督に伝えてもらったら『これ、そんな難しいか?』って……」と暴露。すかさずオダギリ監督が「いやいや、そんな言い方はしてないですよ。皆さん! この可愛い顔にだまされないでくださいね」と全力で否定し、会場は笑いに包まれた。
オダギリ監督はその言葉の真意として「僕もダンスは全然分からないから、『え、これってそんなに難しいんですか? だったらなんでそんな難しいことをやらせようとしてるんですか?』という意味だったんです」と弁明しつつ、そんなダンス・シーンへの演出意図について「いきなり踊ったりするような、そんなぶっ飛んだ人がまわりにいてくれたら楽しいなという意味も込めて。歌ったり踊ったりが専門ではない犬カフェのお客さんたちが急に踊り出すというのが観たいなと思ったんです」と明かした。その言葉に吉岡たちも「そういうことだったんですね」と返すなど、どうやらオダギリジョー監督に対するわだかまりも解けたようだった。
本作で強烈なインパクトを残すキャラクターのひとりとして、髙嶋演じる「小さいおじさん」が挙げられるが、この役を演じた髙嶋は「虫かごの中のシーンだったので、誰とも会ってないんですよ。だから上から水をかけられたりするんですけど、あれもスタッフが一生懸命ホースで水をかけたりしていたんですよ」と振り返る。
実はこのキャラクターはオダギリジョー監督の実体験から生まれたのだという。かつて駐車場で、虫かごと虫取り網を持った少年に出会ったことがあったというオダギリジョー監督は、「『なにか探してるの?』と声をかけたら、普通に『小さいおじさんを探してます』と。本当にもうあのまま言われちゃって。すごく美しいものを見たような気持ちになったんです。それはピュアな世界だなと思って。いつかその思い出を本にしたいなと思ったんです」と振り返る。
このエピソードに「小さいおじさんを見たことがある人はいますか?」と会場の観客に尋ねるも、ひとりも手があがらず。そこでオダギリジョー監督が「昨日の舞台挨拶ではふたりくらい手があがってました。ちなみに永瀬(正敏)先輩は、ご自宅で小さいおじさんを見たことがあるらしく。小さいおじさんがハーレーに乗ってたそうです」と明かすと、髙嶋が「僕、ハーレーの三輪に乗ってるんですよ!」と即座に反応。再びその奇跡的な偶然の一致に会場はドッと沸いた。
そんな「小さいおじさん」だが、「すごくうれしいのが、『髙嶋さんどこに出てました?』って言われる時ですね」とオダギリジョー監督が語ると、髙嶋も「うれしいですねぇ」と満面の笑み。「編集スタッフも『これ、誰なんだろう?』って言ってて。僕、かぶりものが死ぬほど好きなので、衣装合わせの時うれしかったです」と語ると、吉岡も「確かにわたしも本当に気づかなかったです」と深くうなずいていた。
そんな大盛り上がりのイベントもいよいよ終盤に。最後のコメントを求められたオダギリジョー監督は「とってもわがままな、ちょっと変わった映画を作らせていただける機会をいただいて、本当にうれしく思います」と切り出すと、「世の中にはいろいろな映画があると思うんです。メジャーエンタメ作品の中にこういうちょっと変わった、色の違う作品を同じ映画館の中に並べてもらうだけでも、何かひとつ、一石を投じたものがあるかなと思ってます」とコメント。
さらに「そういうメジャー作品とはまったく違う価値観を持った作品なので、好き嫌いとか、刺さる刺さらないということもいろいろとあると思うんですが、これも日本映画の多様性だと思っていただきたいですし、こういう作品がなくなっていくことこそ、日本映画の危機だと思います。ここに今日集まっていただいたお客さんは、きっとこの映画を観に来ださるようなタイプなので、僕の思いを共有していただける方たちだと思います。ぜひ皆さんに日本映画を育てていっていただきたいなと思います」と会場に呼びかけた。
公開表記
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
絶賛公開中!
(オフィシャル素材提供)
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