
登壇者:長澤まさみ、永瀬正敏、大森立嗣監督
映画『おーい、応為』の公開記念舞台挨拶が10月23日(木)、TOHOシネマズ新宿で開催され、主演で葛飾応為役の長澤まさみ、葛飾北斎役の永瀬正敏、監督・脚本を務めた大森立嗣が登壇した、公開から約1週間が経ち、観客からの反響や撮影の裏話を交えながら、作品に込めた思いを語り合った。
公開後の反響について聞かれた長澤は「感想をたくさんいただきました。『応為という人にすごく興味を惹かれた』という声が多くて。私と同じように応為の魅力に気づいてもっと知りたいと思ってくださった方や、親子の物語に感動したという言葉もいただきました。とても嬉しいです」とにこやかな表情。大森監督も「映画人の友人から傑作じゃんって連絡が来たりして(笑)、一人で小躍りしていました。永瀬さん、長澤さん、そして髙橋海人くんがすごい、という感想をもらえるのが一番嬉しいですね」と笑顔を見せた。
永瀬は、先日のイベントで「改めて大森監督である意義を感じた」と語った理由について、「初日の舞台挨拶で立っている時に思ったんです。大森監督のご家庭には天才芸術家・麿赤兒さんがいらっしゃる。だからこそ、この作品の思いや親子の描き方がすごく的確なんじゃないかなと」と語った。

これに対して大森監督は「父とちゃんとコミュニケーションが取れるようになったのはここ10年くらい。お互い作品は見ますけど感想を言わない。不器用な親子なんですよね」と苦笑いしつつ、「そういう意味では、応為の不器用さや父との距離感には、自分にも重なる部分があるのかもしれません」と明かした。

史実では謎多き人物とされる応為の“北斎死後の人生”について、長澤は「史実として残っているものは少ないですが、噂話のようなものはあって、あの辺りにいたらしいよという話も聞きました。きっと、幸せに暮らしていたと思うし、やりたいことをやりながら生きていたと思います。誰かに見てもらうことだけが幸せではなく、自分が描き続けることに満足を見出していた人なんじゃないかなと思います」と応為への想いを語った。

永瀬も「小布施の北斎館で応為の直筆の書簡を見たんですが、お礼状や絵の具の作り方について書かれていて、すごく丁寧で温かい人柄を感じました。きっと幸せに絵を描きながら暮らしていたんじゃないかな」と語り、大森監督は「人にどう思われるかより、自分の思うままに描いていたと思います。彼女の美人画には、当時の女性たちへの思いもにじんでいて、90歳まで生きた父・北斎を見て育った応為も、きっと天寿を全うしたのではないかと感じます」と続けた。
公式SNSには「北斎と応為の関係を見て、亡き父を思い出した」「小屋のシーンで親子の相互理解に涙した」といった声が多数寄せられている。長澤は「親から学ぶことって本当に多いですよね。親子って、教えようと思って教える関係じゃなくて、姿を見て学ぶ関係なんだと思います。そんな普遍的な親子の形をこの作品で感じてもらえたのが嬉しいです」と話し、永瀬も「取材で『私も娘なんですけど、父とどう接すればいいんでしょうか』と聞かれたことがあって。きっとこの映画の親子関係は、今を生きる人たちにも通じる部分があるんだと思います」と語った。大森監督は「この映画の親子の関係を見ていると、大事なことって言葉ではなく、関係性の中で見つけていくものなんじゃないかと感じます。言葉で説明しなくても伝わる豊かさがあると思う」としみじみ語った。
「生きるために自分にとって必要なことは?」という質問に、長澤は「大森監督と以前ご一緒した映画『MOTHER マザー』の時も思いましたが、家族という小さな世界の中で生きることが、自分を形成する基盤になると思います。日々の中にある小さな幸せに気づくことが大切だと感じました」と話す。永瀬は「中学生の頃から神様のように憧れていた方々にお会いして感じたのは、皆さんすごく優しくて、ちゃんと自分を持っているということ。人に優しくできるのは、自分がしっかりしているからこそ。僕もそうありたいです」と語り、大森監督は「時間があれば脚本を書いているんですが、それがなくなったら何をしていいか分からない。それくらい創作することが自分にとって必要なことなんです。人にどう思われるかより、自分の中から湧き上がるものを大切にしたい」と自身の生きる糧を語った。
終盤では、本作が自分にとってどんな存在になったかを問われ、長澤は「応為は北斎のことを本当に尊敬していたし、一緒にいられることを幸せに感じていたと思います。私自身も家族のことを思い出せるような作品でした。日常の中にある小さな幸せに気づかせてもらえる映画です」としみじみと語る。永瀬は「自分の出た作品をあまり見返すことはないんですが、この映画は監督がおっしゃっていたように自分にとってのお守りのような作品になりました。何度も見返したくなる作品です」と話し、大森監督は「これまでの作品の中で、こんなに優しい映画は初めてかもしれません。舞台挨拶で最近ご一緒する機会の多い永瀬さんの優しさに触れて、優しいって本当にいいことなんだなと改めて感じました。時々腹が立つことがあっても、この親子を思い出そうと思います」と笑みをこぼした。
最後にこれから映画を観るファンに向けて、3人からメッセージが贈られた。大森監督は「本日はありがとうございます。こうして長澤さん、永瀬さんと一緒に何度か舞台挨拶をさせてもらうのは本当に光栄です。今日は(髙橋)海人がいないのがちょっと寂しいですね。“おーい、海人!”って感じなんですけども、皆さん楽しんでいってください」と作品名にかけて笑顔でコメント。その言葉に永瀬も「そう、“おーい、海人!”って感じですよね(笑)」と乗っかり、「大天才絵師2人の物語ですが、とても丁寧に2人の日常が描かれています。監督がコロナ禍にこの作品を作ろうと思われたということで、日常の大切さを改めて感じました。そういう意味でも、この2人の日常をぜひ楽しんでください」と語った。長澤は「映画館でしか味わうことができない時間というものがあると思います。皆さんの日常も大切な時間ですが、この親子の物語の日常を、皆さんの毎日の中にも取り入れてもらえたら嬉しいです」と語ったあと、「映画『おーい、海人』、あっ、違う! すみません、『おーい、応為』ですね(笑)」と照れ笑いを浮かべ、会場は笑いに包まれた。3人のノリの良さと温かな絆、そして髙橋への愛情がにじむような雰囲気の中で、イベントは和やかに締めくくられた。
公開表記
配給:東京テアトル、ヨアケ
全国公開中!
(オフィシャル素材提供)






