イベント・舞台挨拶

『旅と日々』大ヒット御礼トークイベント

©2025『旅と日々』製作委員会

 登壇者:大川景子(編集)、三宅 唱監督

 三宅 唱監督最新作『旅と日々』(原作:つげ義春 『海辺の叙景』『ほんやら洞のべんさん』)が11月7日(金)より全国で公開中。

本作の大ヒットを記念して三宅唱監督と大川景子(編集)がスペシャルトーク‼

 三宅 唱監督作品『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』そして本作『旅と日々』と3作品で編集を手掛けた大川景子と、三宅監督。自分たちの作った映画について壇上で話すのは初となったこの日は、編集作業のときに行われたやりとりや考えていたことが包み隠さず明かされ、三宅監督作品ファン必聴のトークが繰り広げられた。

 11月25日(火)には、石川県・金沢の映画館シネモンドでのトークにも登壇した大川。自身の地元である金沢で『旅と日々』をあらためて一観客として堪能したそう。「編集中、あんなに何回も繰り返し観たのに、渚と夏男の海のシーンで本当に怖いと思ったんです。そしたら、大学の講義室での上映シーンになって、『あ……これ映画だった』と思って」という感想を受けて、三宅監督は「『これは映画だ』と思って観始めるけど、途中から忘れていく。忘れたころに、『あ、今観ているのは映画だったんだ』となってほしい。僕らは狙いどころとして、それをどう作るかを考えていましたよね。狙い通りに映画観たんですね(笑)」と振り返った。

■さまざまなバリエーションを試し、それを言語化する編集作業

 この日は監督からのリクエストを受けて、急遽Q&A形式で進行することに。3年前にテアトル新宿で『ケイコ 目を澄ませて』を公開初日に観て、特別な作品になったという観客が挙手。「『旅と日々』の“間合い”がかっこよかった。お二人はどうやって間合いを発見しているのか」と質問が投げられた。大川は「やりとりするワードはものすごく具体的。三宅さんと一緒にいろいろ試しました。視線で繋ぐのか、アクションで繋ぐのか、編集点はたくさんあると思うんですけど、ひとまず試して、それぞれのパターンでどう見えたかを、三宅さんと私で言語化していって」と答えると、「夏編はあえて、編集で試すために素材を多めに撮りました。フレームインからフレームアウトまで長めに撮って」と三宅監督も回答。さらに「編集は、その都度その都度、面白いものを見つけていく、“映画の勉強”の時間。『映画って面白いねえ!』って言いながらやっている」(三宅)、「些細なことでシーンの見え方が変わるのを目の当たりにした。最終的にだんだん作品の形が見えてきたら、どのつなぎ方が作品にとって正解なのかが見えてくる」(大川)と、大川と三宅ならではの編集作業風景が立ち現れてみえた。

■シム・ウンギョンさんの魅力「なかなかこんな人はいない」(三宅監督)

 『新聞記者』をきっかけにシム・ウンギョンさんのファンになったという方からは、シムさんがどんな人であるかについての質問が寄せられた。
 三宅監督は「会った瞬間、『なかなかこんな人はいない』と興味を惹かれた。人間をものに例えるのは失礼かもしれませんが、美術館にある珍しいもののよう。有り難い感じがして、もっと知りたいと思いました」と初対面の印象を振り返る。続いて「俳優としてプロフェッショナル。すごく真剣な方。インタビューで『ウンギョンさんにとってのコミュニケーションとは何か?』と聞かれて、『お互いの真心を、たしかめあえること』と回答されていたんです(「ほぼ日」インタビュー参照:https://www.1101.com/n/s/shim_eun-kyung/2025-11-09.html、外部サイト)。そんなことが言える人はなかなかいない。それを読んだときに、『この人と仕事ができて良かった』と思いました。一方で、めちゃめちゃひょうきん。基本的に人を笑わせようと思って生きているタイプの人だと思います」と回答。シムさんは編集室にも何度か足を運んだそうで、大川の印象は「お友達になりたい!と思いました」とのこと。「編集途中のものを観て、作品を楽しんでくれましたね。笑いながら観たうえで、客観的な感想をくれたのが印象的でした」と語った。

■「あのふたりは海のほうが生きやすい」がキーワード

 つげ義春さんの原作ファンからは、「原作(『海辺の叙景』)では、夏男が渚に泳ぎを見せるというニュアンスが強かったが、海の怖さを強調する演出になったのはどういう意図か」との質問。三宅監督は「ドンッと見開いたときの驚きにたどり着きたいと考えていました。マンガであれば、コマのサイズやページをめくるという運動で驚きを作り出せるのかなと素人ながら思うんですけれど、映画ではどうしようかと悩みました。海、雨、荒れている……こりゃ撮影大変だと思いながらも、それをやることがマンガの絶妙な不穏さにたどり着けるのではないかと思った」と明かす。それを受けて大川は「海のところ、編集も大変でした。二人の距離は縮まっていくのに、環境は大荒れ、と真逆のことが起こっているのが面白いよね、と話しましたね。何が正解か分からなくなったときに、三宅さんから『あの二人は海のほうが生きやすい』という言葉をもらって、ああなるほど、と思いました」とキーワードとなった三宅の言葉を明かした。三宅監督は「単純に、海に入っているときって、『うわー、俺、生きてる!』って実感する。あのふたりは静かな海に入れずに、やっと入れたんだし」と言い、大川も「確実にテンションが上がりますよね。波やうねりに反応しながら編集もやっていました」と振り返った。

■フルフルで面白いものを作る、それが世の中に作品を出すということ。

 最後に挙がったのは「夏編もすごく面白かったのに、その劇中映画の感想を問われた主人公に『私には才能がないな、と思いました』と言われて、はしごを外されたような気分になった。なぜそう言わせたのですか」という質問。三宅監督は「映画の中でも生徒たちが人によって全然ちがう感想を抱いているように、皆さんの感想がばらばらになることが映画の面白さ」と反応しつつ、「主人公のセリフは、あくまでも脚本家としての発言です。彼女は、作品の出来に関して言っているわけではない。『“私には”才能がないな、と思いました』ということは、作品がつまらないと言っているわけでは全くないと僕は書いたつもり。だから彼女があの場で緊張せずにしゃべるセリフにするならば、『作品は素晴らしくて、監督はすごいけれども、脚本については才能がないと思った』というセリフになってもいいんです。ただ、三宅 唱の撮った夏編について、その登場人物が『監督がすばらしい』と言うなんて、そんな恥ずかしいことは書けないです(笑)」と解説。さらに「ひとの感想についてなにか言うのは野暮かもしれませんが」と前置きしつつ、「『夏編をわざと面白くなく作ったんじゃないか』説というのを(インターネット上で)見まして。『そんなわけないだろう!』と(笑)。世の中にものを出す上で、あえてつまらなくすることはないです! メインの料理を引き立てるために前菜をわざと美味しくなく作るとか、ありえないでしょう(笑)。基本的にはフルフルで面白いものを作る。もちろん、ある緊張を強いるとか、退屈さを感じさせることを狙う、ならあります。登場人物たちにとって、島でもうすることがない、という心理状態が序盤にあるので、退屈さを感じさせる狙いはありますが、それ自体はつまらないものではない。なので、夏編を退屈と感じる人は、映画の中ですごく旅を体感しているのかもしれない」と熱のこもった語りでトークは幕を閉じた。

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 全国公開中

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