インタビュー

『single mom 優しい家族。 a sweet family』松本和巳監督 オフィシャル・インタビュー

© single mom優しい家族。製作委員会

 内山理名、木村祐一、石野真子出演で、「一般社団法人 日本シングルマザー支援協会」後援の映画『single mom 優しい家族。 a sweet family』が、大正時代から「相互扶助」の精神が根付いている北海道ニセコ町の協力の元撮影され、10月6日(土)にヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開される。この度、本作で映画監督デビューをした松本和巳監督のインタビューが到着した。

 シングルマザーの取材、シングルマザーの空 愛実(そら・まなみ)役を演じた内山理名の演技、自身が3歳の時にお母さんがシングルマザーになったという、娘役の長谷川葉音(はのん)とのエピソード、石野真子演じる同じくシングルマザーの町役場の職員のモデルとなった方の話など、詳しく語ってくれた。

松本和巳監督

 映画監督・演出家・脚本家・劇団マツモトカズミ主宰・ラジオパーソナリティドラッグストア「マツモトキヨシ」創業者の松本清氏を祖父にもつ。
 ラジオパーソナリティやフォトアーティストとして表現活動を行い、衆議院議員としても活動してきたが、48才の節目に政治活動を休止し、次世代のエンターテイナーを育てるべくプロデュース型劇団「劇団マツモトカズミ」を旗揚げ、新国立劇場公演も成功に収めた。
 現在は劇団公演の他、映画制作にも取り掛かり、また役者育成にも力を入れ育成指導も行っている。
 またVR・AR・MRなどのバーチャルエンターテイメントへの取り組みを始め、新形態のコンテンツ作りにも積極的に取り組んでいる。

本作の成り立ちをお教えください。

 僕は劇団マツモトカズミという劇団を主宰しているのですが、劇団公演の時に、知り合って間もない日本シングルマザー支援協会の代表の江成さんに、「協会のシングルマザーの皆さんってあまり時間がなく、生のエンタメを見る機会ってあまりないでしょ?」と問いかけたら、「私なんか一回も観たことないです……」と。だったら気分転換に皆さんにも観てもらおうよ!ということから20組くらいの親子をご招待し、非常に喜んでいただけたのです。その時にある方から「そういうのは偽善だ!」と言われ、ただ喜んでいただきたいという思いでやったことなのにその言葉が悔しくて、純粋に善意でやろうとしても、人にはそう見えてしまうのかと感じ、それならそれを払拭するまで突き詰めなくてはいけないとスイッチが入りました。ちょうど映画監督デビューの話が入ってきたので、直ぐにこのテーマでやりたい、マザーたちの知られていない心の部分を伝えたいとプッシュしたのが始まりです。

どのような取材をされましたか?

 江成さんにお願いし、実際に協会に相談に来られているマザーの方々に生の取材をさせてもらいました。DVで逃げてきた方や、自殺まで考えた方やさまざまな方のお話を聞きました。またフードバンクも取材したいと思い、江成さんにNPO法人子育てパレットの三浦さんをご紹介いただきました。マザー一人ひとりの状況は日々変わり、インタビューは難しいとのことで、取材ではなく一スタッフとしてお手伝いさせていただくことで実状を見させていただきました。今では本当のスタッフになってしまいました。
 ネットである程度の情報は拾えるのは間違いないのですが、それだけでは自分の主観が強くなってしまい、本当に伝えなくてはならない本質にはたどり着かないのではと思っています。

「シングルマザー」についての映画を制作する上で心がけたことは?

 辛い話を辛くシリアスなテイストで作り上げるのはやめようと。それは「かわいそう」の助長でしかなく、「かわいそう」の上塗りをしても、一時的に「何とかしてあげたいね」という声は出ても、時間と共に忘れ去られてしまうのではないかと思っています。シングルマザーの皆さんの置かれている立場って、「人が追い詰められていく心情」を知ることから始めないと共有できないのではとも思っています。

ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』のフードバンクのシーンは壮絶で印象に残っていますが、監督がスタッフで働いた実際のフードバンクの様子は違ったそうですね?

 壮絶って、たぶん自分の想像を超えた時に感じることだと思うのです。その意味では僕がお手伝いをしている所ももしかしたら壮絶なのかもしれません。フードバンクに関してはちゃんと自分の目で見て感じることを飛ばしてしまっていたら、間違った発信をしてしまったかも、恐ろしいことになっていたかもと今でも思います。受け取る方々のメンタルをネガティブだろうな、と勝手に思っていたのですが、実はそこに見えたものは満面の笑みだったのです。それは普段の生活の苦しさは変わらないにせよ、食べ物を思う存分子どもに食べさせられる安堵や嬉しさからの表情で、それに素直に反応する子も笑顔という表情になったのだろうと。苦しい中の光をその親子に感じ、ここは自分の主観を入れてデフォルメしてはいけないと思い、ありのままをシーンにしました。

シングルマザーの空 愛実(そら・まなみ)役を演じた内山理名さんの演技はいかがでしたか?

 内山さんの初日の最初のカットでゾクッときました。撮影監督の岩倉くんと顔を見合わせて「よし!」という合図を送り合ったくらいです。彼女の作りを信頼していましたので、現場中もシーン全体の説明時に心情を含め確認を取り合うだけで、あとはお任せという形で進めました。それほどに内山理名ではなく愛実になることに徹していただけたのかな、と思っています。

娘役で本作が映画デビューとなる長谷川葉音(はのん)さんは、ご自身が3歳の時にお母さんがシングルマザーになったとお聞きしました。実際にシングルマザーの娘さんである長谷川さんを起用したことで、良かった面はありますか? また現場で気を遣った部分はありますか?

 長谷川さんのご家庭の事情をお聞きし、僕自身は「へえ、そうなんだ」という感じだったので、特にひとり親だからどうのこうのはありませんでした。ただ自身の経験に辛いこともあったようで、本読みをしている時に思い出してしまい、涙している姿を見て、この役を演じられるのはやはりこの子しかいないと思いました。この年齢だと、経験のないことの表現はなかなか出しづらいのです。でも彼女は本を読んだ時点で気持ちが動いて反応したので、気持ちを作るというより、「自分のままでいいよ」の一言で大丈夫かと思いました。現場ではそのことだけで気を遣うということは全くなく、至って普通に撮影していましたが、それよりも演技自体が初めてということのほうがプレッシャーになっている感じでした。

本作はほぼ全て実話とお聞きしました。いろいろなシングルマザーの話を、内山さん演じる1人の主人公・愛実に盛り込んだかと思いますが、どのエピソードを映画で使うか、どう決めて行ったのですか?

 愛実に降りかかるさまざまなエピソードは確かにいろいろな方々が経験されたことの落とし込みですが、凄まじい事柄って結構一気に来ることもあるのです。僕も実際にここまでやるの?と弱音を吐くほど次から次へと災難が降り掛かってきた時もありました。なので、取材で得た事柄を整理し、人が追い込まれていくであろう度合いを見ながら流れを作っていきました。自分の置かれている現実を自分で改めて認識し惨めになり、更に人から追い打ちをかけられることによって自分の否定へと繋がっていく。それが積もってやがて爆発してしまう。その心情の変化にエピソードを当て込んでいったのです。見えている結果ではなく、そこに至るまでの過程を理解することが非常に大事なことかと思っていますので、そこは自分でしっくりくるまで何度も流れは検証したのですが、その作業だけで3ヵ月はかかっていたかもしれません。そこがすっきりしないと筆が進まなかったのです。

石野真子さん演じる同じくシングルマザーの町役場の職員・犬塚には、モデルはいるんですか?

 はい、初めてニセコを訪問した時に片山町長から一番最初に紹介された職員の方がモデルです。石野さんの言っているセリフも、実は実話なのです。町役場の方が、シングルマザーで転々としてきた彼女を、困っているなら職員として働きなさいよ、と迎え入れたと聞いています。それを聞いて、ニセコは町全体が相互扶助で成り立っている町だということがスッと腑に落ちたのです。この映画のなかでは、彼女の存在が愛実の救いになるので、やはり外せない非常に大事なポジションなのです。救いの存在は、事実であることが観ている方(特にシングルマザーの方々)に対して説得力が増すと思っていますので、デフォルメすることなく設定しました。それを見事に石野さんの柔らかさで表現してもらえて、自分も癒やされました(笑)。

木村祐一さん演じる、人との関わりを拒んで生きてきた孤独なミニカー職人・大西には、モデルはいるんですか? その部分はフィクションですか?

 この役だけは僕の願望の人です。昔の人っぽく聞こえてしまうのですが、自分が子供の頃って近所のおばさんによく怒られたものです。そこで「うるせーよ、ばばあ!」とかの悪態をつくわけですが、地域が何となく家族っぽくなっていて、悪態にも恨みとかのネガティブなものはないので、言い方は変ですがポジティブな悪態でした。ですから笑って許される緩さがあったのです。
 でも今は、核家族化とマンション化で一家庭から先に広がりがない個々になってしまい、ご近所も関わることすら難しくなってしまっています。あの時のおばさんがいたら、もしかしたら救われる母や子どもたちがいるはずだ!と思うニュースが多く、それを見ながらため息をつくことも結構あるのです。なので、いて欲しい人、ということで作り上げました。
 ただ、それをおばさんではなく、孤独なおじさんに設定したのは、我々の世代でも孤独感を感じている人たちは結構いて、そこにも光を当てたかったのです。でも木村さんの役は見方によっては危険な方向にとらわれてしまう可能性があるのですが、自分なりの解釈を積み重ねてあのポジションに落とし込みました。どうしても今の時代にいて欲しい人として外せませんでした。また父への思いとラップしながら、それをどういう風に処理していくのかも見てみたかったのです。なので二人の間に起こるケミストリーが強ければ強いほど、狙い通りになると思っていましたので、芝居は二人に任せました(笑)。
 この映画は結構、「いて欲しい人」「いなくてはならない人」の思いで登場人物が構成されているかもしれません。

これから映画を観られる方々にメッセージをお願いいたします。

 映画を観て、「外れた……」と思うことってあると思うのです。その時につぶやいてしまうのは「損した」という言葉だと思います。でもこの映画は「外れた」と思った方がいたとしても、観ていただいたチケット代の一部がひとり親のお子さんの制服支援として寄付される仕組みになっていますので、観ることで自動的に貢献活動にご参加いただけるのです。マザーや子どもたちが置かれている状況を少しでも知ることができ、支える一人としてご参加いただけることになりますので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。

公開表記

 配給・宣伝:渋谷プロダクション
 2018年10月6日、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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