作品紹介

『stay』

©東京藝術大学大学院映像研究科

イントロダクション

 「誰でも来ていいから、みんなここに集まるんだよね」。生き方が多様化していく現代、人と人との数々のつながりが絶たれた2020年。改めて、「人と共に生きる」とはどういうことなのか。その根源的な意味を静かに問う作品が誕生した。舞台は、いつの時代の、どことも知れない山奥に佇む一軒の古民家。そこに素性も知れない人々が住んでいる。誰でも出入りができて、誰の場所でもない「自由」な家。だからこそ住人たちはお互いに干渉せず、深い事情には立ち入らない。それでも匂い立つ、それまでの人生で培われた、一人ひとりの肉体から沸き立つ生活の匂い。そこから生じるわずかなズレが、気遣いとなり、役割となり、ストレスとなり、やがて「不自由」へと繋がっていく――他者と接することにおいて、否応なしに向き合わざるを得ない物事を、多面的な角度から、重層的な寓意を込めて描いた本作はまさに「現代の寓話」と言えるだろう。

 監督は本作が初劇場公開作となる藤田直哉。画面から伝わる確かな演出力、的確な人物配置、静かながらいつの間にか引き込まれる巧みなストーリー・テリング、それらを支える世界を見つめる老練なまなざしは、新人離れしており、岩井俊二のMOVIEラボにて映像作品を2度選出されたという実力も頷ける。

 脚本は、演劇ユニット「コンプソンズ」を率いる金子鈴幸。近年、演劇のみならず、山本政志監督作「脳天パラダイス」(20)やTVアニメ「キングダム」(20)などの脚本を手掛け、そのジャンルレスな活動が注目されている。

 またキャストも実力派から期待の新人まで幅広く、俳優部の演技のアンサンブルも見どころの一つである。家の人々に立ち退きを迫りながら、いつの間にかその家に引き込まれて行く主人公・矢島を演じるのは、主演した東京国際映画祭正式出品作『あの日々の話』(19)での細やかな演技が印象深い山科圭太。躊躇なく意見を言うマキには、上田慎一郎らが監督し話題を集めた『イソップの思うツボ』や東京国際映画祭正式出品作『猿楽町で会いましょう』主演で注目の石川瑠華。家の中心的役割を担う鈴山役は、白石和彌組の常連で、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(09)で演じた知的障害者役で評価を集めた菟田高城が軽やかに好演。滞在者の分の家事も行っているサエコは、奥田庸介監督の『ろくでなし』や春本雄二郎監督の『かぞくへ』でヒロインを務めた遠藤祐美が、包みこむような柔らかさの中に芯もある絶妙な存在感で演じている。

 本作は、芳泉文化財団の映像研究助成を受けて制作され、第20回TAMA NEW WAVEで初上映され、2020年のSKIPシティDシネマ国際映画祭の短編部門では審査員の満場一致でグランプリを受賞。満を持しての劇場公開となる。

©東京藝術大学大学院映像研究科

ストーリー

 とある村の持ち主のいない古い空き家。ここは誰もが寝泊まりし、出ていくことが可能な場所。

 ちょうど吉田(山岸健太)が去ろうとしているところに、村の役所から派遣された矢島(山科圭太)が、不法に滞在する5人に退去勧告を言い渡しにやってくる。

 長期滞在しているマキ(石川瑠華)が「前にも何人も来たけど、結局追い出せてないから」と予言したように、矢島は、リーダー格の男・鈴山(菟田高城)のペースに巻き込まれ、立ち退きを説得できないどころか、サエコ(遠藤祐美)の提案でその家で一晩を明かす羽目になり……。

  (2019年、日本、上映時間:39分)

キャスト&スタッフ

 監督:藤田直哉
 プロデューサー:井前裕士郎
 脚本:金子鈴幸
 撮影:井前隆一朗
 音楽:関口 諭
 出演:山科圭太、石川瑠華、菟田高城、遠藤祐美、山岸健太、長野こうへい、金子鈴幸

ギャラリー

予告編

オフィシャル・サイト(外部サイト)

https://stay-film.com/

 公式Twitter:https://twitter.com/stay_film2021(外部サイト)
 公式Facebook:https://www.facebook.com/stayfilm2021(外部サイト)
 公式Instagram:https://www.instagram.com/stay_film2021(外部サイト)

公開表記

 配給:アルミード
 4月23日(金)よりアップリンク渋谷ほかにて公開

(オフィシャル素材提供)

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