イベント・舞台挨拶

『桃源郷的娘』公開記念舞台挨拶

©太田慶

 映画『桃源郷的娘』は、川端康成の『眠れる美女』をモチーフに、アナーキー老人の爆走する性と妄想力を描いた艶笑コメディ。この度、アップリンク吉祥寺での公開2日目に、キャスト・監督によるトークイベントを開催した。

 冒頭、太田監督は、本作で男性機能を失った男の悲哀・葛藤を描いた理由を聞かれ、「私は欲望というものに関心がありまして。欲望って際限がないもので、劇中で豊臣秀吉の辞世の句を引用したりしましたが、どんなに栄華を極めた人でも、最終的には欲望を全て満たすことはなく、最後は全て失って死んでいくという、ものの哀れみたいなものを感じています。生々しい欲望を描くのに、男性機能を失ったという題材に挑戦してみました」と説明。

 “目の前に理想の女性が裸で横たわっていながら、何もできない”というシチュエーションを演じた小宮は、「老いるということはこういうことなんだなと。こういうことでなくても、私は昔、(M.C.ハマーのパロディーの)MCコミヤとして踊っていたので、時々“やって”って言われるんですけれど、全然できないんですよね。昔できたことができなくなる、その代わり昔考えられなかったことができたりすることもある。哀愁みたいなこと、ものの哀れみたいなものがこの映画の中にあるとしたら、それはほとんど私が負っています(笑)。主人公の老人はなんとか夢を、この場合は性的な夢を持とうとしているんです。そう思うのはいいことだと思いますし、実際思っているとたまには上手くいくこともあるかもしれないので、夢を持っていただければと思います」と熱い想いを語った。

 完成した作品を観て、その葛藤は理解できたか聞かれた現在34歳の永里が「分かります、というか、自分もそうなるであろうし、現に今でもそうなってるなという時も」と話し出すと、会場は笑いに包まれ、小宮が「普通の感じで言うなよ!」とツッコミ! 「お酒が好きなので、飲みすぎちゃうとそういうのもあるのかなと思うので、気をつけます」と話すと、小宮は「お酒を飲んだ場合、(若者は)明日は回復しているじゃない。僕の場合は明日もダメかもしれない。でも明後日大丈夫かもしれない」と話し、永里が、「まさに『夢を持ち続けて』ということで」とうまくまとめた。

 小宮は、裸で寝ている理想の女を自分のものにしようとする主人公の気合いの入ったシーンの衣装について、「この時ばかりは、儀式めいているので、勝負衣装を着ようと。私は落語もやるので、着物も結構持っているので、パシッと」と自前の衣装のこだわりを話した。「寝ている川越ゆいちゃんの自慢は、寝ても横に垂れないおっぱいということで本当に素敵な体なんですけれど、そのシーンはアドリブをしなくちゃいけないシーンだったんで、そのことで一生懸命で、そんなことを感じる間もなく一生懸命アドリブを言いました」と撮影エピソードを語った。

 永里が演じた田村は、『夢なんてどうせ実現しない。夢を追って生きるのはしんどい。そんなものは、とうの昔に捨て去りました』という若者役。監督は、「今格差社会で、夢を実現しづらい世の中になっているので、夢を持って生きるのがしんどい若者は多いでしょうし、中国の寝そべり族のように、学歴社会から落ちこぼれて自主的に競争を諦めた人たちがいると思います。この映画はカナザワ映画祭でも上映されたんですけど、『あの青年は僕を描いていますね』とおっしゃっている監督もいました」と話した。

 小宮は、田村を演じた永里について、「夢にギラギラという感じではないですけれど、この人物とは全然違う人なんですよ。そういう人が公園でぼーっとしているというのが面白かったです。だけど結局田村は無気力と言いながら、無気力のことを熱弁で語っているんですよね。僕は永里さんのファンです」と永里の演技を絶賛した。

 最後に永里は「本作は欲望というものが一つのテーマになっていて、男性の悲哀を描いています。独特の世界観というか唯一無二の映画だなと感じたので、そこを楽しんでいただけたらと思います」、小宮は「一応コメディなので、面白いと思いましたら、声を出して笑っていただけたら幸いです」、太田監督は、「コロナ禍で皆さん欲望をセーブしながら生きていると思うんですけれど、妄想老人役の小宮さんを見て、欲望を解放してすっきりしていただければと思います」と観客にメッセージを送った。

 登壇者:小宮孝泰(コント赤信号)、永里健太朗、太田 慶監督

公開表記

 配給:アルミード
 2022年1月21日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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