イベント・舞台挨拶

『ケヴィン・オークイン・ストーリー』トークイベント

©2017 Mr. Valentine LLC

 1990年代、細眉、リップライナー、光と影を駆使して立体感を出す「コントゥアリング」などその革新的なモードメイクによって世界を席巻したケヴィン・オークインの生涯を追ったドキュメンタリー『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』の公開を記念して、リップだけで100本以上も持っているというゆうたろう(俳優/モデル)がトークイベントに登壇し、本作や自身について語った!

 “ジェンダーレス男子”とも呼ばれるゆうたろうはメイクとの出合いについて、「15歳位のとき、まだ自分の中でもメイクは女性がするものという認識でした。姉が二人いて、(メイクする)二人を見ているのが楽しな、面白いなというのが最初の出合いです。地元・広島のファッションショーに初めて出させてもらった時に、お姉ちゃんにメイクしてもらって、『自分がこんなに良く見えるんだ』と衝撃で、そこから姉のコスメを借りたり、薬局にコスメを買いに行ったりしました。『自分はどういうメイクが似合うんだろう』と考える時間が楽しかったです。服に合わせてポイントメイクを足したり、毎日いろいろな自分に変身できるのが服とメイクで、10代の時はそれが楽しかったです」と話した。
 ゆうたろうは、マスクをつけないと家に出られない位ご自分の顔が嫌いだったとのこと。「メイクはマイナスをプラスにするものではなくて、マイナスをゼロ、フラットにするものだと思っているんです。まだまだ自信があるとは言えないです。メイクは、もともとあった自分の変身願望を叶えてくれるものです。ヘアスタイルもそうですけれど、メンズライクのときもあればスカートやワンピースを着たりレディースっぽく着る時もあるので、毎日新鮮な自分を楽しめるという感覚に近いです」と語った。

 本作の劇中、ケヴィン・オークインは妹をメイクの実験台にしていたことが紹介されている。ゆうたろうは、「最初はメイクをしてもらっていた側なんですけれど、好きなのに似合わない色を発見してちょっとした絶望を味わって、姉なら似合うのかもしれない、とメイクのし合いっこを休日にしています。『女の子だったら、つけたかったリップだな』だとか、自分自身が男だというのを認識した瞬間でもありました」とのこと。


 ゆうたろうは、「俳優としてのお仕事の時は、ゆうたろうではなく役のメイクなのでメイクさんに任せするんですけれど、“ゆうたろう”としての仕事は、基本的に自分でメイクをします。一度雑誌のメイクの特集があって、アイラインやマスカラなど普段自分ではしないメイクをがっつりやってもらった時は、初めての自分に出会えました。メイクを始めて6~7年だったけれど、『こんな自分がまだいたんだ!』という位、新しい自分に出会えました。それは、他人にメイクしてもらったからこそ味わえる自分との出会いで、衝撃的でした」とエピソードを語った。


 注目しているメイクアップ・アーティストとして、小田切ヒロを挙げた。「ご自身のことを“アンドロジナス”とおっしゃっていて、男性的な主観もあれば、女性的な主観もあって、人に合わせていらっしゃる。一つひとつの言葉に納得させられます」とオススメした。
 ゆうたろうは、本作でケヴィン・オークインのことを知ったという。ケヴィンが流行らせたメイクについては、「当時のヴォーグなどのファッション誌とかのメイクを見て、もうすぐハロウィーンもあるし、普段したいけれどできないような激しいメイクも、今だったらできるかもしれない、参考にしたいと思った」と話した。
 本作を観て、メイクアップ・アーティスト以外の部分のケヴィンについては、「やりたいことをずっとやってきて、それを周りが必死でサポートしてきたというのが分かりました。弱音を吐く映像を見た時に、当たり前だけど天才と言われた人もこんなに自分を追い詰めている、こんな映像も撮っているんだとびっくりしました。天才だからこそ悩むこともあるだろうし、いろいろな人に迷惑をかけてると本人も言っていたし、天才だからこその苦労を見れたことは興味深かったです」と語った。
 ケヴィンは生きていたら今年60歳になる年なので、子ども時代、学校の先生にまでいじめに遭った話も出てくる。ゆうたろうは「今ではメンズがメイクすることは少しずつ理解されていますし、ブランドの中でもメンズの人がスカートを履くこともありますけど、僕が広島に住んでいた10年前ぐらいはそれすらなかったです。スカートを試着したら店員さんに『え?』って顔をされたりしました。プラスに変えて会話してくれる人もいました。メディアに出始めた時は、いい意味でも悪い意味でも“新人類”という見られ方をしていました。『自分は普通じゃないんだ』とか、『自分が好きなことを突き詰めてたら気分を害する人もいるんだ』と気づいて受け止めつつも、自分のスタイルは変えずにやっていったら、“ジェンダーレス”や“ノー・ジェンダー”とか“ボーダーレス”という言葉が溢れる世の中になってくれたので、少しずつ受け止めてくれる人が増えたのかなと思います。諦めなくてよかったと思います。普通という言葉に翻弄されずによかったなと今となっては思います」と嬉しそうに話した。
 コスメを買うのに抵抗はなかったかという質問には、「デパートに買いに行くのは最初は緊張したけれど、店員さんが当たり前のように優しく接してくれたから、『僕もここにいていいんだ』という気持ちになれた」と感謝の意を示した。


 “ジェンダーレス男子”と一言で定義されることについては、「日本は“●●系”だとか、ジャンルにすることが多いと思います。分かりやすくていいなとは思いますけれど、その中でも一人ひとりメイクにこだわりがあって、スカートを履く人がいれば、履かない人もいるし、髪の毛を伸ばす人もいれば伸ばさない人もいるし、絶対的にそれぞれのスタイルがあるので、一括りにされるのは悔しい部分もあります」と本音を語った。
 劇中、ケヴィンがブルック・シールズらに男装させる性差をも超えるメイクで、美の固定観念に挑戦していた姿も紹介されている。ゆうたろうは、「女性を男性的なメイクにしたりだとか、同じ人とは思えないほどガラッと変えていた。それを当時からやってるケヴィンをすごいなと思いました。もし生きていればいつかメイクして欲しかった」と残念そうに話した。


 他に劇中で注目してほしい部分に関しては、「周りの人や友人やマネージャーにインタビューしているので、ファッション・スタイルなど当時の映像とのギャップを感じてもらえればと思いますし、本人の口からは語られなかったコメントを、今周りの方が口にされる瞬間はグッときました」と話した。
 最後に、「僕も作品を通じていろいろなメッセージをもらい、言葉や技術は刺激になりました。ケヴィンの生き様に背中を押してもらえるような映画になっています。知らなかったからこそこの作品を観てケヴィンのファンになりました。ぜひ色んな見方をしてほしいです」とメッセージを送った。

登壇者:ゆうたろう

配給:アップリンク
渋谷ホワイトシネクイントにて公開中

(オフィシャル素材提供)

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