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『ケイコ 目を澄ませて』第35回東京国際映画祭公式上映・Q&Aイベント

©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

 第72回ベルリン国際映画祭をはじめ各国の映画祭に出品が決定し注目を集める映画『ケイコ 目を澄ませて』(12月16日全国公開)のジャパンプレミアが10月30日(日)、第35回東京国際映画祭で行われ、三宅唱監督が上映後のQ&Aに参加した。

 聴覚障害と向き合いながら、実際にプロ・ボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんの生き方に着想を得てつくられた新たな物語。三宅監督は本作誕生の経緯について「簡単に言えば、小笠原恵子さんのカッコ良さに惹かれました。彼女をモデルに映画として新しいものを作りたかった」と明かし「ボクシングは撮影の3ヵ月前から岸井さんも僕も練習を始めて、撮影期間は約20日間というタイトな中で行いました。僕としてはもっと撮っていたかったけれど、岸井さんは『それくらいが丁度いい! それ以上は無理!』と(笑)。それだけ身体的負荷が高い中で岸井さんは誠心誠意この映画に向き合ってくれました」と主演女優に感謝。

 そんな岸井の印象については「岸井さんを表現する言葉を自分は持っていなくて、なかなか言葉にしづらい。それに言葉にした瞬間に終わりそうで、まだ終わりたくないという気持ちもある。緊張していたので初めて会った際の第一印象は覚えていませんが、岸井さんは僕を見てメッチャ怖かったそうです」と笑わせつつ、「皆さんにはこの映画で見た岸井さんとケイコという存在をたくさん言葉にしてほしいです」と期待。さらに「岸井さんは今日来ることができず本当に残念がっていました。そして“本当にありがとうございます!”と言付かっています」と岸井のメッセージを伝えると観客から拍手が巻き起こった。

 『ケイコ 目を澄ませて』というタイトルから岸井の目に注目しがちだが、三宅監督は環境音など音の演出にもこだわった。その理由について「ろう者とのコミュニケーションを通して音の聴こえ方が自分とは違うということを改めて意識して、その経験に基づいて音を設計するのが非当事者である自分が取れる最大の方法だと思った」と明かし「“目を澄ませて”というタイトルですが、音にも注目してほしいです」と呼び掛けた。

 また16mmフィルムで撮影した狙いについては「フィルムが好きというのもあるし、フィルムで撮ることによって、アクション・シーンを何度も撮るということを避けたかった。また16mmフィルムで撮ることで、見慣れているものを普段とは違った見え方で見たいという思いもあった」などと解説。時代背景にコロナ禍という社会の現実を反映させているが「現代を舞台にする以上、今ある現実の世界から逃げることはできないと思ったし、コロナ禍の世界情勢を舞台にすることでこの作品で描きたかった題材をゆがめることなく強く表すこともできるとも思いました」と明かした。

 健聴者がろう者を演じることについては「これまで当事者の方々の表現の機会が少ないという歴史的背景があって、そこに自分がどのように関わっていくべきなのかということはいろいろと考えた」と悩んだそうだが、物語のテーマは当事者(ろう者)と非当事者(健聴者)のコミュニケーション。三宅監督は「この映画はケイコだけの物語ではなく、当事者ではない他者がどのようにケイコとコミュニケーションをとって一緒にボクシングに向き合っていくのかということも描いています。僕らも非当事者という当事者として映画を観ます。そこで何か生まれるものがあるのではないかと……」と期待して、「映画とは、非当事者として別の世界のものを見る芸術。非当事者でしかない自分たちとしてどう世界と関わるのか?ということが映画には必要です。そのために俳優がいて映画という芸術があるのだと思います」と映画という表現媒体についても言及していた。

登壇者:三宅 唱監督

(オフィシャル素材提供)

公開表記

配給:ハピネットファントム・スタジオ
2022年12月16日(金) テアトル新宿ほか全国公開

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