イベント・舞台挨拶

『ある男』ティーチイン イベント

©2022「ある男」製作委員会

 平野啓一郎のベストセラー小説を主演・妻夫木聡で映画化、ヴェネチア国際映画祭・釜山国際映画祭など、世界の映画祭で絶賛されている感動ヒューマンミステリー作『ある男』が、11月18日(金)より全国公開中。すでに映画をご覧になった方からは、「今年No.1の映画!」「深い余韻が素晴らしい」、「邦画界最高のキャスト!」、「鳥肌が立つほど面白い! どこに中心があるのか分からぬまま物語が進んでいくのが最高にスリリング」と、キャスト陣の重厚な演技と感動のラストに絶賛のコメントがSNSに相次ぎ寄せられ、話題となっている。この度、映画の大ヒットを記念し、妻夫木聡と脚本の向井康介登壇のティーチイン付き上映会が実施された。妻夫木、向井には、映画上映後の客席からの質問に、一つひとつ真摯に答え、貴重なエピソードが飛び出すスペシャルなイベントとなった。

 上映後の余韻に浸る大勢の観客の前に登場した妻夫木と向井。はじめに妻夫木が「(映画は)いかがでしたか?」と問いかけると、観客からは溢れんばかりの拍手が送られた。続けて「今日はお集まりいただきありがとうございます。この映画は観終わった後にそれぞれ解釈が違う部分もあると思いますので、向井さんにいろいろ聞けたらと思います」と挨拶。向井も「脚本を務めた向井と申します。今日はよろしくお願いします」と挨拶した。
 ふたりの挨拶の後、スタッフも数時間前に知らされたという、カイロ国際映画祭のコンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞したことがMCより発表された。向井は「ありがとうございます。まだあまり実感がありませんが……」とコメントすると、カイロ国際映画祭に参加中の監督がトロフィーを持つ姿の写真がスクリーンに映し出され、会場はお祝いムードに包まれた。
 11月18日に初日を迎え、好調スタートを切った本作。周辺の人たちからの反響も大きかったようで、妻夫木は「今撮影しているドラマの現場で、堤 幸彦監督から“素晴らしかった!”と感想をいただきました。最近の映画の中で一番良かったとおっしゃってくださって、すごく嬉しかったですね」と喜びのコメントを披露。


 向井は「友人から連絡が来て、良い感想ばかりでした。脚本作りに関しては、原作から読み取れる“分人主義”をどう解体して、映画として再構築するか悩みましたが、良い形になってきたところで、妻夫木さんと石川監督と3人で会って話したことを覚えています」と脚本の執筆秘話を明かし、映画の尺のなかで原作をどれだけ凝縮するか、苦労した話を語った。

 『マイ・バック・ページ』や『愚行録』でも仕事を共にした経験のある二人。妻夫木は「石川監督と向井さんが組む作品の魅力は、映画的にテクニカルな部分で挑戦すること。城戸と柄本さん演じる小見浦が対峙するシーンで、雨が降るところや冒頭のバーのシーンなど、映画の中で“ついてもいい嘘”のバランスがすごく好きです」と魅力を熱弁すると、向井は「『愚行録』の時は、石川監督が演劇的なケレン味をやってみたいと言っていて。自分もそういう気持ちがあったので、監督と合致しました。それを今回発展させて、トンネルを小見浦と面会するシーンでの刑務所の廊下に見立てたり」と話した。

 ここで、観客からの質問に妻夫木と向井が回答していく。

大変すばらしい作品でした。今日で5回目の鑑賞です。向井さんには、原作のアレンジとして付け足したシーンについてお聞きできますでしょうか。妻夫木さんは実際に演じてみていかがでしたか。

向井康介:冒頭の大祐と里枝の出会いや、日常の風景なんかは、木というモチーフを元に描写を作りました。そして、城戸の過去を描く時、妻の家族との会食シーンのやりとりをワン・シーンでどうみせるか、脚本家としての腕の見せどころでした。
妻夫木聡:向井さんは現場の声を大事にする脚本家。今回も良いディスカッションをさせていただきました。初稿の説明しすぎかなと思う(セリフ)部分を最終的に省いたんですけど、向井さんが役者を信結果こういう映画が完成したんだと思っています。
向井康介:(セリフを)削っていいって言う役者はあなただけですよ(笑)。
妻夫木聡:若い頃は前に出ていきたがった自分が、ね(笑)。

柄本さんとの共演シーンではどんなことを考えて演じましたか。

妻夫木聡:演じ切ってから我に返ることが多いんですよね。柄本さんとは『ウォーターボーイズ』で初めてご一緒しましたが、毎回違う顔を見せる。今回は素直に食べられてしまおうと思いました。その中で城戸の素顔が見せられたらいいなと。でも、(安藤)サクラちゃんは、義理のお義父さんと一緒の現場でどういう心境だったんですかね(笑)。

順風満帆な城戸の心の揺れ動きがラストにつながりましたが、繊細な心の動きをどう演じましたか。

妻夫木聡:これは難しいバランスでした。役作りの準備の中で実際の弁護士とお話しもして、人間っていろいろな顔を持っているけど、それで良いと認められた時に一つひとつのバランスを考えなくなりました。脚本を信じて、その時の城戸の気持ちをシーンごとに生きたということでしょうか。

向井康介:僕も城戸に寄り添って脚本を書いていました。“自分の人生これで良かったのか”という立ち止まりは自分にもあって、ちょうどその頃に原作を読んだので、そこは大事にしたいところでしたね。

今日で2回目ですが、同じシーンで泣いてしまって。妻夫木さん(城戸)の後ろ姿がとても印象に残っているのですが、どういうことを意識されましたか。

妻夫木聡:映画と小説の違いは、映画だとパッと映った瞬間にそのキャラクターを表現しないといけないこと。後ろ姿に何かを感じてくれたら、役作りが活きたのだと思います。山田洋次監督にも、存在としてそこに「ある」ということが大事と言われたことがあって。その言葉はこれからもずと大事にしたいと思っています。

 ここで、偶然劇場内で映画を観ていた城戸の息子役・岩川 晴くんを妻夫木さんが発見。すると、妻夫木に呼ばれ晴くんが舞台上に。突然のサプライズに、妻夫木もすぐに撮影中の親子関係に戻ったかのような笑顔をのぞかせた。

 最後に向井は、「いつも、10年、15年と長く生きるような作品づくりを目指しているので、今回もそんな作品になれば嬉しいです。末永くよろしくお願いします」、妻夫木は「この作品のオファーがあってから、絶対に観てくださったお客さんに消化してほしくない、噛みしめてくれるような映画になってくれたらと思っていました。向井さんや石川監督、更に他のスタッフもキャストも全員が力を発揮し、素晴らしい映画に仕上がりました。今日たくさんのお客さんを前に、僕たちの思いが届いたと確信できました。お越しいただき、ありがとうございました」と思いを込め、貴重なトークが満載のスペシャルなイベントは幕を閉じた。

登壇者:妻夫木聡、向井康介(脚本)

(オフィシャル素材提供)

公開表記

企画・配給:松竹
全国公開中

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