イベント・舞台挨拶

『別れる決心』ティーチイン

©2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

 本年度のアカデミー賞®国際長編映画賞部門の韓国代表に選出、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞、先日発表されたゴールデン・グローブ賞作品賞-非英語作品(旧・外国語映画賞)にもノミネートされたパク・チャヌク監督最新作『別れる決心』。本作のティーチインイベントが12月27日(火)に都内にて行われ、本作PRのために来日中のパク・チャヌク監督が登壇。昨日開催されたジャパンプレミアでは日本初お披露目となる上映前に舞台挨拶を行ったが、本日のイベントでは、本作を鑑賞したばかりで興奮さめやらぬ様子の観客の皆さんからの質問にたっぷりと答え本作の制作秘話を語った。

 映画『お嬢さん』(16)以来、5年10ヵ月ぶりの来日となるパク監督。監督が登壇すると会場からは割れんばかりの拍手が。
 パク監督は本日のティーチインイベントに集まったファンの皆さんへ向け、「前作の『お嬢さん』以来約6年ぶりに本当に久しぶりに劇場公開される長編映画を撮りました。コロナ禍を経て、『この先皆さんにこの映画を観てもらえる日が来るのだろうか』ととても心配していたので、まるで初めて映画を作ってそれを皆さんに観ていただくようなワクワク、ウキウキした気分です」と挨拶をし、イベントがスタート。

 まずMCより、「前作『お嬢さん』とは全く異なる設定だが、愛の物語をミステリーというジャンルで描くという点では共通していると思う」とした上で、「ミステリーとロマンスを融合させるスタイルに惹かれる理由は?」と問われると、「“愛”というのは“とても大きなミステリー”で、この2つはとてもよく似合う要素だと思います。『どうして私はあの人に惹かれるのだろうか』というのは口では言い表せないほどの大きな謎だと思います。ミステリーにロマンスを融合させるというのは、理にかなっていると思います」と答えた。

 そして、会場からの質問を募集すると、「韓国語と中国語のやりとりがもどかしくてとてもセクシーでした! 言葉が通じないけれど何かで通じ合っているという様子が素敵だったのですが、どのように考えて作られたのでしょうか?」と興奮さめやらぬ様子での質問が。パク監督は「言葉が通じない人同士の愛というものは、物語の効果的な装置になると思います」と答え、「愛を成就するために、厳しい条件や壁があればあるほどよりドラマチックになると思いませんか? 私は言葉の壁というものを活用せずにはいられませんでした。映画を作る上で、通訳が必要になるシーンは、どうしても描写に時間がかかってしまい、観客ももどかしい気持ちになってしまうためできるだけ避けようとするのですが、私は逆にそれを効果的に利用しようと思いました。主人公へジュンと観客の皆さん両方をもどかしくさせようと思ったわけです。ヒロインのソレが何かを熱弁しているけれど一体なんと言っているのだろうととても気になったと思います」と本作の設定に込めた思いを語り、「今も私が韓国語で話していると、一体なんと言っているのか気になるでしょう? ですから、できるだけ短く話して通訳さんに任せたいと思います」と続け、会場を笑わせた。

 そして、「これまでの作品と異なりロマンティックなラブ・ストーリーを描きたいと思った理由を教えてください」との質問をされると「私の作ってきたこれまでの映画もロマン主義的なラブ・ストーリーだと思っています。今までの作品は暴力的なシーンや、エロティックなシーンの印象が強く、愛の話が見えづらかったのかもしれません。今回の映画で私が『今回もまた愛の物語で戻ってきました』と挨拶すると皆さん笑うんです。自分の中ではより直接的に愛のストーリーだということを見せたくてこの映画を作りました。だから私は、これまでとは新たにして愛のストーリーを映画にしたわけではなく、今まで入れてきた要素を入れなかったのです」と今までのイメージを覆す本作に込めた思いを述べた。
 さらに「本作ではスマートフォンやスマートウォッチなどのハイテク・デバイスが効果的に使われていますが、これは最初から思いついていたのですか? それとも脚本を組み立てる上で物語に盛り込んでいくのでしょうか?」との質問には、「最初に書いた脚本を読み返してみた時に、『これは大変なことになった』と思いました。劇中でスマートフォンからメッセージを送るシーンがとても多かったのでどうしたら避けることができるだろうかと考えたのですが、すぐに諦めました」と明かし、「現代を暮らす人々の生活を描くからには避けては通れないと思ったからです。個人的には、できればフィルム・カメラや旧式のテープ・レコーダー、紙の資料などを劇中で使いたいと思うこともあるのですが、もしそういう映画を作ったら、観客の皆さんは『なんだこれは、変だな』とむしろ不自然さを感じると思います。私はこの映画を作るにあたって、決して旧式な映画にしたくはなく、現代の皆さんが共感できる映画を作りたいと思いました。現実の世界でこれらのデバイスを使っているのは事実なのでそれをそのまま使おうと考えました」と語った。さらに、「デジタルは冷たいと感じるかもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。私たちはスマートフォンをまるで手の一部であるかのようにいつも握って何かをしています。そして、自分が送ったメッセージを相手が今読んでいる、ということまで分かります。機械的な冷たさというものではなく、相手もきっと手の一部になっているような、相手の手を握っているような感覚にもなりうるというように思いました。物理的に2人が離れていても、メッセージを通してあたかもすぐそばにいるかのように、まるで相手と向き合っているような感覚になるような効果が得られると思いました」とも語り、「こういったデバイスを使うことが避けられないのなら、どうせならたくさん使ってより上手く効果的に使用しようと思ったのです。通訳アプリは、脚本の最後の段階で入れ込みました」と回答した。

 最後にパク監督は、「この映画を観たたくさんの方々が『この映画は2回以上観るとより面白い』とおっしゃってくれています。1回目は主人公へジュンの観点から、2回目はヒロインのソレの観点から見てみるとまた別の楽しみ方があると言ってくれています。皆さんもそのように感じていただけるかは分かりませんが、そういうふうな口コミが広がっているということをお伝えさせていただきたいと思います(笑)」とユーモアも交えて日本の観客に呼び掛けた。

登壇者:パク・チャヌク監督

(オフィシャル素材提供)

公開表記

 配給:ハピネットファントム・スタジオ
 2023年2月17日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました